世界中に広がった衝撃の顔写真
24日、午後7時過ぎ、何十台もの警察車両に先導され、巨大な塀に囲まれたジョージア州アトランタの拘置所にトランプ氏を乗せた車が入っていった。
トランプ氏が拘置所に入ったのは午後7時35分、20万ドル(約2920万円)の保釈金の支払いに同意し、拘置所を後にするまでの時間はわずか20分ほどだった。
拘置所の記録によると、受刑者に使用されるトランプ氏の収容者番号は、P01135809。
トランプ氏は拘置所にいる間、この番号で呼ばれていたのだろうか。この間、大統領経験者としての特別扱いは行われず、ほかの被告人同様の逮捕手続きが行われた。
マグショットと呼ばれる顔写真の撮影に加え、人種や身長(約192センチ)に体重(約98キロ)、目や髪の毛の色の確認、指紋の採取なども行われた。公開されたマグショットは、やや上目遣いでカメラをにらみつけ、起訴への怒りが全面に伝わってくるかのような姿だった。その衝撃的な写真は、公開されると瞬く間に世界中に広がっていった。
爆発的なマグショット効果
トランプ氏は、マグショットが公開された直後、自らのSNSにその写真を掲載し、来年に行われる大統領選挙への寄付金の呼びかけを始めた。さらに、2021年1月以降、全く更新されなかった「X」(旧ツイッター)を更新するとともに「選挙妨害だ。決して降伏しない!」とコメントした。
この記事の画像(5枚)選挙キャンペーンのホームページでは、マグショットが印刷されたTシャツが1枚34ドル、マグカップを25ドルで販売を開始し、「BUY NOW(買うなら今)」と呼びかけた。マグショットの公開から販売開始までのわずかな時間を考えれば、用意周到だったことは明らかだ。
トランプ氏に近い共和党強行派のマージョリー・テイラー・グリーン議員もマグショットを模して自らの写真を「X」に掲載し、「トランプ氏とともに起訴した検事と対決する」との意を示した。起訴される度に支持基盤を強固にし、影響力の拡大とともに資金集めを加速させる戦略は、マグショットで一層加速していくようにも見える。
現実味帯びる刑務所からの大統領選に焦りも
2020年のアメリカ大統領選挙で、南部ジョージア州での敗北を覆そうとした罪で4度目の起訴となったトランプ氏は、拘置所に向かう24日の朝、新たな弁護士をチームに迎えるなど、対応も迫られていた。
トランプ氏側は反発しているものの、10月にも始まる可能性もある裁判で仮に有罪が確定すれば、来年の大統領選は、刑務所からの選挙戦も余儀なくされることも想定される。さらに、再選されたとしてもジョージア州の事件では、大統領権限での「恩赦」は及ばないことから、トランプ氏にとっては、最も選挙戦に影響が出る事件となる可能性がある。
しかし、トランプ氏にとっては、マグショット同様、これも選挙戦略に織り込み済みなのだろうか。トランプ氏は9月上旬にジョージア州の裁判所に出頭し、罪状認否に臨む予定だ。
(FNNワシントン支局 千田淳一)