中古車販売大手ビッグモーターで自動車保険の不正請求などの問題が明るみに出る中、福井の店舗に勤務する現役社員が、匿名を条件に福井テレビの単独取材に応じた。不正については申し訳ないと陳謝する一方、「それでも僕がこの会社が好き」と複雑な内心を吐露した。「膿(うみ)をきれいに出し切り、一から出直してほしい」と率直な気持ちを語った。

店舗に訪れる客はこれまでの1~2割ほどに激減

国土交通省が福井を含む全国34の事業所に立ち入り検査に入った28日、1人の現役の社員が取材に応じた。

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県内の店舗に勤務するビッグモーターの現役社員:
びっくりですけど、やっぱりという部分もある。すべて上からの圧力、売り上げへの執着からこういうことが起こってしまったのかな

福井でも自動車保険の不正請求が疑われているが、この社員によると担当以外は報道で初めて不正の詳細を知ったという。

県内の店舗に勤務するビッグモーターの現役社員:
分からないですね正直。保険会社が見抜けないことは僕らも分からない。そこには触れられない、分からない部分 

売り上げへの影響は極めて大きい。問題が明るみに出て以降、店舗に訪れる客はこれまでの1~2割ほどに激減している。

県内の店舗に勤務するビッグモーターの現役社員:
誹謗(ひぼう)中傷の電話、「私の車は大丈夫?」など、日に日に増えている。(店内は)色んな電話があって気持ち良くない。いい雰囲気ではない

「いい車屋として戻ってきてほしい」

福井の店舗にも環境整備という名の点検で、兼重宏一前副社長が数カ月に一度、訪れていたという。点検項目は来るたびに変わるため、事前に点検を受けた他店と情報共有し、重点項目については問題が見つからないよう事前に備えた。

県内の店舗に勤務するビッグモーターの現役社員:
副社長が「ここになんで雑草はえているのか?」とか、ほんとにささいなことを質問してきた。副社長が点検途中で帰るとゼロ点。声は荒らげることなく、論理的に淡々と話してくる

前副社長が機嫌を損ねると、すぐに人事異動が発令された。1週間で店長が交代することもあったが、それに対し疑問に感じる社員はほとんどいなかったという。

県内の店舗に勤務するビッグモーターの現役社員:
できないと配置転換、工場長だと降格とか。点検の日の夕方、もしくは翌日、朝一には人事異動が出る。他県への異動もあったが、生活のためには従うしかない。引き継ぎとかは全くない、弁明の余地も全くない

ビッグモーターが変わったのは、創業者の息子が副社長に就いたこの数年間でだという。ノルマはあったが、成果をあげれば、それに比例して給与も上がった。成果を評価する仕組みをつくり、一代で日本有数の中古車販売企業に成長させた兼重宏行前社長の手腕は高く評価している。

「信頼は失墜したが、会社を全否定する気持ちはない。世間の厳しい目は承知しているが、経営陣や企業風土が変わり、もう一度、立ち直ってほしい」という複雑な心境を打ち明けた。

県内の店舗に勤務するビッグモーターの現役社員:
お客様を裏切ってしまったのは大変申し訳ない。ただ僕はこの会社が好きなので…。いい車屋さんとしてまた戻ってくれればと思う

(福井テレビ)

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