2021年7月26日、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島が世界自然遺産に登録された。これにちなんで鹿児島県・奄美大島5つの市町村は、7月26日を「奄美・沖縄世界自然遺産の日」と定めている。

奄美大島の自然を体感

2023年の7月26日に、奄美市で記念のイベントが開かれた。

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会場の「奄美大島世界遺産センター」では、認定ツアーガイドが奄美大島に生息する希少な生き物のはく製や森を再現したジオラマなどについて説明し、四季折々の島の自然を体感していた。

来場者:
いろんな島の生き物を知れて良かった

来場者:
改めて、すてきな場所にいるという気持ちになった。固有種がこれだけあると知ったので、自然を大事にしないといけないという気持ちになった

観光客に人気「ナイトツアー」ルールの効果は

世界自然遺産登録から2年がたち、新型コロナの5類移行で観光面の盛り上がりが期待される一方、奄美大島、徳之島、それぞれの課題も見えてきた。

奄美大島の奄美市住用町では、2人の観光客を乗せたナイトツアーに同行させてもらうと、国の特別天然記念物「アマミノクロウサギ」が次々に出現。

ほかにも「アマミイシカワガエル」や「ルリカケス」など、夜の森で、奄美固有のさまざまな生き物に出会い、観光客はとても感動していた。

埼玉から観光で来島・源安剛さん:
期待以上。「こんなにいたんだ」とうれしかったです

妻・浩子さん:
自然の森の中で何匹も見られて、みんな感動するんじゃないかな

エコツアーガイドの川畑榮さんは「ナイトツアーは全てこのコース。一番生き物を探しやすい」と話す。

奄美大島・徳之島は「生物多様性」が評価され、世界自然遺産に登録された。そのことを実感できるナイトツアーは、観光客に人気だ。
しかし、森に入る車が増えれば野生動物に負荷がかかり、利用者同士のトラブルも心配される。

環境省と自治体が協力してルールを設定
環境省と自治体が協力してルールを設定

そこで環境省と地元自治体などが協力して、2021年10月から、ナイトツアーで人気の奄美市住用町の市道「三太郎線」には、事前予約や、車の通行は30分おきに1台ずつといったルールが設けられた。

環境省奄美群島国立公園管理事務所によると、2023年5月末までの総利用台数は6,064台で、このうち9割近くは事前に予約をしていた。ルールができる前と比べ、最も多い月で車の台数は半数に抑えられている。

環境省奄美群島国立公園管理事務所・阿部愼太郎所長:
今は(道路の)両側から30分に1台、あるいは1組みたいな状況になってきているので、アマミノクロウサギを見る機会も増えたでしょうし、満足度としては向上しているのかなと思う

しかし、三太郎線以外の観察場所には、通行規制のルールは設定されていない。三太郎線に近い峠道でも夜はクロウサギを見ようと多くの車が走っていて、今後こうした場所に観光客が集中することも予想される。

奄美大島エコツアーガイド連絡協議会・喜島浩介会長は「一般の方を含め、ナイトツアーのルールや動物に対する知識そのものも教えていくような仕組みを作っていかないといけない」と話す。

在来のカエルのえさを奪う外来種

「NPO法人徳之島虹の会」による駆除を取材
「NPO法人徳之島虹の会」による駆除を取材

一方、徳之島では、在来の生き物を脅かす、ある生き物が問題となっている。
徳之島の自然保護団体「NPO法人徳之島虹の会」のメンバーによる駆除を取材した。夜間、池の周りを歩きながらその生き物を探す。

探し始めて10分。見つかったのは、東南アジア原産の「シロアゴガエル」だ。

特定外来生物に指定されている「シロアゴガエル」
特定外来生物に指定されている「シロアゴガエル」

特定外来生物に指定されていて、徳之島では2023年5月に初めて確認された。体長は5~7cm。あごのふちの部分が白いのが名前の由来で、資材にまぎれるなどして、徳之島に入ったと考えられている。

当初は、島内の8カ所だけで確認されていたが、その後の調査では33カ所で分布が確認されている。繁殖力が強く、徳之島にも生息する「アマミアオガエル」など在来のカエルのえさが奪われ、生息環境への影響が危惧される。

NPO法人徳之島虹の会の政武文理事長は「生物多様性の価値が認められて世界自然遺産になっていますから、外来種をはびこらせるわけにはいかない」と話す。

奄美大島と徳之島の世界自然遺産登録から2年。世界の「宝」を守るための島民の努力がこれからも続く。

(鹿児島テレビ)

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