2023年7月30日の「土用の丑(うし)の日」を前に、養まん業が盛んな鹿児島・鹿屋市で、とある論争が起きている。養まん業者が「ウナギを食べる食文化を守るべきだ」と主張する一方、畜産業も盛んな鹿屋だけに「『うしの日』なんだから牛肉を食べるべきだ」と畜産農家も譲らない。双方の主張のゆくえは?

きっかけはインパクトの強い新聞広告

ことの発端は、7月3日付の地元紙・南日本新聞に掲載された広告。

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「土用の丑の日」をめぐって、肉用牛の生産者が新聞を丸々一面使い、「うしの日だから、うしを食べる、でいいはずです」と常識を揺さぶる主張をした。

「うしの日だから、うしを食べる、でいいはず」と主張、畜産農家の荒木真貴さん
「うしの日だから、うしを食べる、でいいはず」と主張、畜産農家の荒木真貴さん

主張したのは、鹿屋市で約5,000頭の肉用牛を飼育する「うしの中山」の荒木真貴さん。

うしの中山・荒木真貴専務:
「丑の日」に牛を食べないなんて許せないなということで、僕から意見を述べさせていただいた。土用の丑の日は「う」が付く食べ物ならいいと日本はなっているが、そんな単純な理由だったら牛でもいいじゃないかと思った

しかし、この主張に真っ向から対立するのは、大隅地区養まん漁業協同組合の奥園久人さん。

こちらも南日本新聞の丸々一面を使って持論を展開。ウナギへの熱い思いを語った。

「ウナギを食べる食文化を守るべき」と主張、養まん業者の奥園久人さん
「ウナギを食べる食文化を守るべき」と主張、養まん業者の奥園久人さん

大隅地区養まん漁業協同組合販売部・奥園久人部長:
うちらとしてはウナギですので、土用の丑はウナギを食べてほしいと思った。牛と言われると「はてなマーク」でした。ウナギを食べる文化があるので、ウナギを食べてほしいと思います

実は自治体のPR。地元出身のあの芸人もサポート!

土用の丑の日は、牛か?ウナギか?両者、一歩も譲らないが…。

実はこの流れ、鹿屋市が展開している「和牛」と「ウナギ」のPRキャンペーンだ。

鹿屋市は、肉用牛の年間産出額が約185億円と、全国の市町村の中で2位を誇る。

一方、鹿屋市のある鹿児島県・大隅半島は養殖ウナギの一大産地。鹿屋市も例外ではなく、ふるさと納税の返礼品では人気ナンバー1だ。

そんな2つの特産品を同時にPRしようと始まったこのキャンペーン。「いっと待ちやんせ(ちょっと待ってくれ)!」というYouTube動画も制作された。

動画にはそれぞれの生産者の荒木さんと奥園さんも登場。荒木さんと同業者らが、奥園さんたちのグループに、たんかを切った。

うしの中山・荒木真貴専務:
“うしの日”やっとにウナギを食う!? 前々からおかしい、ち思うちょったとー! ウチのわけぇ衆にインターネットで調べさせてみたわけよ。したら何ね、丑の日にちなんで「う」がつくものをたぶっとが(食べるのが)由来っちゅう話じゃ!「う」がつくもんを食べればよかなら…牛でよかじゃろ!!(“うしの日”なのにウナギを食うのは前々からおかしいと思っていた。ウチの若いモンにネットで調べさせたら、何だよ、丑の日にちなんで「う」がつくものを食べるのが由来という話だ。「う」が着くものを食べればいいなら牛でいいだろう!)

なんと両者が取っ組み合いのケンカを始めてしまった。すると止めに入る1人の男性が。

鹿屋市 クリイェェェーティブディレクター・池崎慧(サンシャイン池崎さん):
どっちが「イエイ」か、民意を問う、イェイ!

こう話したのは、鹿屋市の“クリイェェェーティブディレクター”を務める、池崎慧さん。そう、地元・鹿屋市出身の芸人・サンシャイン池崎さんだ。

どちらかに決めなければいけないのか?

早速、荒木さんがマイク片手に「みなさん!土用の丑の日にはシンプルに牛を食べようじゃありませんか!」とアピールすると、「土用の丑の日にはウナギを食べるのが日本の文化です!」と奥園さんが応酬する。

和牛か、ウナギか。両者のにらみ合いが続く中、1人の少年が提案した。

少年:
どっちも「イェイ」じゃだめなのかなあ?

するとサンシャイン池崎さんが少年の肩をポンとたたき、いつものハイテンションとは正反対の穏やかな口調で、「ナイスイェイ。私が言いたかったことをこの少年が言ってくれました。ウナギも和牛もどっちもイェイでいいじゃないですか!」とまとめた。

2023年の鹿屋市は、ウナギも和牛も推していくということで決着した。でも本音は?

うしの中山・荒木真貴専務:
牛さんを食べてほしいというのが、牛農家の本当の気持ちだと思います

一方、奥園さんは…。

大隅地区養まん漁業共同組合販売部・奥園久人部長:
やっぱり、牛でしょう、あ、間違えた(苦笑)

思わぬコメントにあわてる奥園さん。それでは仕切り直しのTake2を…。

大隅地区養まん漁業共同組合販売部・奥園久人部長:
やっぱり土用の丑の日は、ウナギでしょう!

ウナギと牛、いずれも特産という、食の豊かな土地柄なればこそのキャンペーン。新聞広告は東京地区の新聞約72万部でも展開されたほか、総勢60人が出演したYouTube動画の再生回数は、7月14日夕方時点で70万回に迫っていた。

ちなみに今回、鹿屋市が「土用の丑の日に食べるものは何か?」調査したところ、83.8%が「ウナギ」と答えた。

(鹿児島テレビ)

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