鹿児島・鹿屋市に、牛好きが高じて畜産農家を始めた鹿屋市の中学生がいる。中学1年生にして畜産歴実に4年目。和牛王国鹿児島で青春を駆け抜ける“牛ガール”の奮闘ぶりを追った。

帰宅後向かうのは「牛舎」

鹿児島テレビの取材班が初めて彼女に出会ったのは2021年。まだ小学校4年生だった。

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「牛飼いになりたい」と小さな声で話してくれたのは福﨑帆乃香さん。ちょっと照れ屋で、牛が大好きな女の子だ。

あれから2年たった2023年春、中学生になった彼女に会いに行った。身長は2年前と比べ15cmも伸びていた。

学校から帰ると一目散に向かうのは、もちろん牛舎。帆乃香さんは、子牛を産ませて競りに出す「生産農家」だ。

牛のいいところを聞かれると「エサを食べているところとか、目のかわいさ。見ていると幸せになる」と、はにかんだ帆乃香さん。

現在飼育しているのは、母牛5頭に子牛4頭。2年前と比べると母牛は2頭増え、これまでに競りに出した子牛も5頭と、経営規模も少しずつ拡大している。

娘のために仕事を辞めた理由

帆乃香さんが牛に興味を持ったのは、4歳の時。家族で出かけた牧場で牛に出会い、一瞬で心を奪われた。牛を飼いたいと両親に訴えたが、母親の加代子さんは当時をこう振り返る。

帆乃香さんの母・加代子さん:
うそでしょって。育てたこともないし、経験もなければ知識もないし、私は無理って

それでも帆乃香さんは諦めず、両親を説得すること3年。

帆乃香さんの母・加代子さん:
牛飼いの絵本があってそういうのを見せたり、食肉センターの工場に見に行って、あの場面を見て2人とも号泣でしたけど、それでも本人がやりたいって。それを見てもやりたいんだって、娘の気持ちに本当に負けました

なんと、自宅の庭先に牛舎を建て、母・加代子さんは牛の世話をサポートするため保育士の仕事を辞めた。

帆乃香さんの両親が並々ならぬ決断をしたのには、もう一つ理由があった。帆乃香さんが、腎臓の難病を患っていることだ。毎年のように長期の入院を繰り返し、学校に行けず、引きこもりがちになることもあった。

「牛を飼うことで娘に笑顔になってほしい」そんな思いで、家族そろって畜産の道を歩み始めた。

「たくさんの牛に囲まれて暮らしたい」

自分で覚悟して飼い始めた牛だったが、帆乃香さんにとっては涙の連続だった。

初めて迎え入れた母牛「ほりこ」は最初の出産で命を落とし、子牛を競りに出す時は、毎回、別れがつらすぎた。高値で子牛が売れてもちっともうれしくなかったという。それでも自分で選んだ道に後悔はない。

福﨑帆乃香さん:
たくさんの牛に囲まれて暮らしたい

中学生になった帆乃香さんは、えさ代など経費をまとめる帳簿も自分でつけ始めた。

福﨑帆乃香さん:
飼料代と電気代が高くなっています

“夢は牛100頭を飼うこと!” 牛と歩み、牛と成長してきた中学1年生は、畜産王国鹿児島で、今青春を駆け抜けている。

(鹿児島テレビ)

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