ロシアによる軍事侵攻でウクライナでは、数万人の身元不明の遺体があるという。日本の警察から検視や鑑識の技術を学ぶために、ウクライナの警察官が来日。震災で多くの犠牲者の身元確認作業にあたった福島県警察本部で、当時の被害状況やDNA型鑑定などを学んだ。

戦禍にある母国のために

福島県浪江町の請戸小学校に到着したバス。降りてきたのは、ウクライナ国家警察の警察官。彼らが来日した目的、それは遺体の身元確認などの技術を学ぶこと。ロシアによる侵攻で数万人の身元不明の遺体があるというウクライナ。震災で多くの犠牲者の身元確認作業にあたった福島県警察本部などに研修を要望した。

震災遺構の請戸小学校 黙とうを捧げる
震災遺構の請戸小学校 黙とうを捧げる
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ウクライナの女性警察官は「街の至るところに遺体となっているロシア兵もいるし、ウクライナの一般市民もいる。破壊されたダムの水で流された人がたくさんいて、探すのも大変だし、探した後にその人たちが誰なのか調べることを私たちは今、一生懸命やっています」と語った。

身元特定の作業をすすめる
身元特定の作業をすすめる

DNA型鑑定を学ぶ

震災当時の被害状況について、真剣に耳を傾けたウクライナの警察官たち。福島県警察本部の科学捜査研究所では、DNA型を鑑定する作業方法などを学んだ。

福島県警察本部科学捜査研究所でDNA型鑑定の方法などを学ぶ
福島県警察本部科学捜査研究所でDNA型鑑定の方法などを学ぶ

福島県警察本部の阿部勝也参事官は「福島県警としても、警察官として身元を特定してご遺体をご家族にお戻しするという、一つの力になればいいなと考えている」と語る。

福島県警察本部・阿部勝也参事官
福島県警察本部・阿部勝也参事官

震災当時の状況に耳を傾ける

福島県での研修2日目は、東日本大震災時に多くの犠牲者の検視業務にあたった警察官の話を聞いた。真剣な表情で耳を傾けていたウクライナの警察官たち。これで2日間の研修が終了した。
福島県警察本部の阿部勝也参事官は「私たちと同じように技術を築きあげられると思いますので、その根本になったというのは非常にうれしい」と語った。
今後は、日本の検視技術に触れ得た多くの学びを母国で活かすと共に、ほかの警察官にも共有していくとしている。

福島での研修を終えたウクライナの警察官たち
福島での研修を終えたウクライナの警察官たち

福島だからこそできる支援

放射線が健康におよぼす影響を研究する、獨協医科大学の木村真三准教授。ロシアによる侵攻後、エネルギーがひっ迫した現地で発電機を購入するための費用の援助や、ウクライナの研究者と定期的にメールやオンライン会議で連絡を取っている。
木村准教授は「言葉の端々で”きょうも空襲警報が5回なって、避難を余儀なくされた。でも、私たちはいまも我が国が勝利を目指して頑張っていきます”と。最後に自分を勇気づけるような一文が入るんですよ。これってかなり精神的にはしんどいのではないかと感じている」と話し、福島だからこそ出来る支援があると考えている。

獨協医科大学の木村真三准教授
獨協医科大学の木村真三准教授

大切なことは視線を向けること

木村准教授は、チョルノービリ原発事故から福島の復興について学ぶことがあったように「今後、ザポリージャ原子力発電所の問題が起きて、外部電源喪失するとか冷却水の問題が出てきた時、地域住民は避難をしなくちゃいけなくなる。福島は、津波も経験し原発事故というものを経験した。そういった経験は活かされてくると思う」と、震災を経験した福島だからこそ、今のウクライナへできる支援があると考えている。これからも視線を向け続けることが大切だ。

(福島テレビ)

福島テレビ
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