11月3日から始まった金沢美術工芸大学の「美大祭」にあわせ、金沢市中心部では、美大生による恒例の仮装パレードが実施され、街なかを盛り上げた。一方で、金沢美大はこの秋、新しいキャンパスに移転。古いキャンパスでは卒業生らが、思い出に浸っていた。

金沢の秋を彩る『仮装パレード』

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石川県の金沢市役所前に集まったのはユニークな仮装に身を包んだ学生たち。

記者:
何の仮装ですか?
学生:
野菜の仮装です。ネギです。

学生:
魚人の仮装をしました。マグロです。マグロって美味しいので自分もなりたいなと思って。

学生:
囚人が脱獄するというテーマです。旧校舎という刑務所からから新校舎の新しい刑務所へ移動しているところです。

学生:
私は家賃を滞納しまして、すいませんて感じです。今月もちょっと危ないです。

金沢美術工芸大学で3日から始まった「美大祭」このお祭りに合わせて行われるのが、恒例の仮装パレードだ。1年生約150人が、専攻ごとに決めたテーマの仮装に身を包み、金沢の中心部から新しい校舎まで練り歩いた。

このパレードは、コロナ禍で去年3年ぶりに復活。今年は4年ぶりに、マスクの着用など制限がない本来の形に戻った。沿道では地元の人や観光客が写真を撮ったり手を振ったりして楽しんでいた。

卒業生が思い出に浸るイベントも

一方、この秋に引っ越しを終えた金沢美大の旧校舎では、卒業生たちが企画したイベントが始まった。

工芸作品やアクセサリーの販売ブースに…建物の壁を使ったライブペインティング。

ペインティングした人は「学校にお世話になったので、最後までイタズラしたかったので…」と笑顔で話した。

金沢美大の旧校舎で3日から始まったイベントだ。

卒業生がお世話になった旧校舎へ感謝の思いを伝えようと企画した。

実行委員 青木小波さん:
にぎわいが戻ってきて、生き返ったみたいで校舎もきっとうれしいと思います。

卒業生200人が集まって思い出の校舎で準備

10月中旬。旧校舎ではイベントに向けた準備が進められていた。

金沢美大の旧校舎
金沢美大の旧校舎

訪れた人がじっくり鑑賞できるよう、イスの向きなどの調整に余念がない。

10月2日に新校舎での授業が始まった金沢美大。

青木さん:
汚いなって思います(笑)でもそれが絵の具の汚れだったり、制作の跡なので無くなってしまうのは寂しいなって思います。

旧校舎が完成したのはいまから51年前。アニメ監督の細田守さんや漫画家の東村アキコさんなど、各界の才能がここで磨かれていた。

1972年の金沢美大
1972年の金沢美大

 

青木さん:
卒業生のみなさんが、無くなってしまう校舎にどうやったら集まれるかと考えて、(現役の)学生は美大祭をされているのでじゃあこちらの残った校舎でOBで展覧会できたらなと。

旧校舎は老朽化を理由に早ければ来年度、取り壊されることになっている。どうせ取り壊されるならと、大胆に壁に穴を開けて卒業生の作品を集めた展覧会を企画したのだ。

一般の人が中に入れる機会は、今回が最後だ。総勢約200人の卒業生が協力して実現したイベント。イベント前日の2日。多くの卒業生が準備に追われていた。

日本画を展示する卒業生:
無くなってしまうので、せっかくなので展示してみると面白いのかなあと。こうやって展示をすると、現役っぽい感じに途端になるから、無くなるのが不思議な感じ。いかにも使いこんだ感じがあるから、いろんな人がここを通ってきたことをなんとなくしみじみ感じながら設営とかやっています。

日本画を展示する卒業生
日本画を展示する卒業生

今回のイベントでは、新校舎への引っ越しで空になった教室も作品のように鑑賞できるようにした。

陶芸を学んだ卒業生は、「ここは独立で暖房がついていたので、夜間に館内の暖房が切られたときは、陶芸の子はここに避難して暖をとっていました。あんまり言っちゃいけないかも(笑)」などと懐かしむ。

思い出の『中央階段』で"卒業写真”

さらに、旧校舎の中心にある階段ではこんな試みも…

旧校舎の中心にある階段
旧校舎の中心にある階段

青木さん:
ここに集まって、みなさん写真を撮ってもらうのと、正面の壁は思い出の写真を自分で貼っていってもらうっていうイベントをします。

スーツや袴ではなく「仮装」をするのが恒例の美大の卒業式。思い思いの姿で並ぶ、卒業式の集合写真は、美大のシンボルでもある「中央階段」だった。

記者:
この中に青木さんがいるんですか?
青木さん:
それがですね…やっぱりこういうところが美大生のいいところだとは思うんですけど、写真を撮るっていうことを知らなかったんです!それで私は写ってません!なので、(イベントでは)絶対写ります!リベンジです。

そして迎えたイベント当日。30年ほど前に金沢美大を卒業した男性は特別な気持ちで作品を販売していた。

「もう一度、卒業制作展をするような。(卒業してから)こんなん作るようになりましたっていうことを発表させていただいて(最終日の)あさってが卒業式だという気持ち」

工芸作品を販売する卒業生の気持ちは、最終日に向けて高まっていく。

卒業生が再会を喜ぶ姿も見られた。

卒業生:
歩けば誰かに当たるし、誰に会っても幸せです。

イベントの実行委員長、青木さんは念願だった卒業写真を撮ることができた。

青木さん:
校舎にくるとその当時に自分も戻ってしまう。金沢美大に通ってよかったなって、いくつになっても美大生っていう気持ちを改めて感じました。

51年間、芸術家の卵たちの自由な創作を見守ってきた旧校舎。最後に巣立った人たちから贈られたのは美大生ならではの感謝の表現だった。

(石川テレビ)

石川テレビ
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