日本三大備長炭の一つに数えられる日向(ひゅうが)備長炭。その製炭技術を継承するため、2022年、20代の女性が宮崎・美郷町に移住した。製炭業の研修を始めて約1年、一人前の炭焼き職人を目指す女性の今を取材した。

「山や炎や人と関わることが好き」

2022年、当時23歳の松岡理妃(りき)さんは、炭焼き職人を目指し、東京都から美郷町に移住した。そして同年6月、備長炭製炭技術と文化の伝承に関わる美郷町地域おこし協力隊に任命された。

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松岡理妃さん:
山や炎や人と関わることがすごく好きで、その関わり方として炭焼きをしたいと思ったのが率直な思いです。炭焼きがめっちゃかっこよくて…

火持ちの良さなどから全国でも高い評価を受ける日向備長炭。美郷町には現在、24の窯元があるが、製炭業を営む人の平均年齢は63歳と高齢化が進み、担い手不足が課題となっている。

その解決策として 2022年3月、製炭業の後継者育成を目指す「備長炭製炭指導者の会」が結成され、その一期生として松岡さんがやってきた。

全工程をメインで担当し「火入れ」へ

それから約10カ月後の4月10日。松岡さんは、原木の伐採から炭ができあがるまでの全ての工程をメインで行う研修をしていた。見守るのは、指導者の会のメンバー・上杉貴敬(あつひろ)さん。

備長炭製炭指導者の会・上杉貴敬さん:
昔からこの地域でやっていた人の後継者がなかなか育たないんですよね。せっかく製炭の仕事があるからですね、この仕事をずっと残していきたいなという思いですね

この日は、伐採した木を窯に並べる「窯くべ」、窯の入り口を石や土で閉じる「口掛け」、そして焚き口に火をつける「火入れ」を行った。

「火入れ」
「火入れ」

備長炭製炭指導者の会・上杉貴敬さん:
最初の炭焼きさんの火じゃ

松岡理妃さん:
率直に嬉しい。わくわくするというか、(炭を)入れたばかりなんですけど、早く出ないかなと思います

この日から約1カ月間、朝と夜に薪を炊いて窯の火が消えないように見守り、そして5月9日、完成した炭を取り出す「窯出し」の日を迎えた。

指導者の会のメンバーも期待

窯から掻き出された赤々とした炭に灰をかぶせ冷却。約9時間かけて全ての炭を取り出した。

備長炭製炭指導者の会・上杉貴敬さん:
100点満点で80点以上やね

備長炭製炭指導者の会・狩峰和彦さん:
甘い!

備長炭製炭指導者の会・上杉貴敬さん:
いや甘くない。自分でもこんな良い炭焼けんことがある

松岡さんの初めての「窯出し」には、指導者の会のメンバーも手伝いに駆け付けた。

備長炭製炭指導者の会・狩峰和彦さん
(松岡さんは)女性として炭焼きをどれだけやれるか追求して知ろうとしている。知恵も湧くし、将来のこともしっかり考えているし、だから出来る限りは応援してあげたい

備長炭製炭指導者の会・清田幸輔さん
女の人が一人でやるというのがいないから、それの先駆者としてやってもらえる姿は見ていきたいと思いますね

経験を積んでより強くなった思い

製炭業に憧れを抱き、美郷町に移住して約1年。

松岡理妃さん:
体感でいうと3年くらいはここで炭焼きをやっていたような気持ちになっていて、やった分だけ分からないことも同じだけ出てくるので次の課題がまたいっぱい見つかったような気持ちです

炭焼き職人を目指す松岡さんの思いは、経験を重ねるごとに熱を帯び、一片の迷いもない。

松岡理妃さん:
今、炭焼きで40年50年やっている人と張り合っていけるような炭焼きの人になりたくて、こんげな山を切ったとか、今回良い炭だしたとか、炭を通して美郷町の人と深く関わっていけるような炭焼き職人になりたいです

(テレビ宮崎)

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