長野県内で猟銃所持の許可を受けた人数と銃の数の推移は年々、減少しているが、3000人以上が所持していて、銃の数は6700丁に上る。中野市で4人が死亡した事件では、青木正憲容疑者(31)が許可を得て自宅で所持していた猟銃が犯行に使われた。銃器の専門家は、許可手続きの段階で精神面の問題などを見抜くことは難しく、店に預けることを義務化するなど「管理を見直すべきだ」と訴える。

長野県内の猟銃許可数
長野県内の猟銃許可数
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「ハーフライフルで撃った」

事件を目撃した人:
(容疑者が)見に来たのかなと思ったら銃を構えだした。「撃つぞ、撃つぞ」という感じで笑っていた

パトカーで駆け付けた警察官2人を銃撃した青木容疑者。自宅で管理していた「ハーフライフルで撃った」と供述している。

警察官2人が乗っていたパトカー
警察官2人が乗っていたパトカー

銃器専門家・津田哲也さん:
一般人が所持している猟銃やライフル銃を使って起こした事件は、たいがい身内のトラブルか近隣トラブルで激高して使ってしまったというパターンが多い。今回の事件は銃が手元にあったから起きた典型的な事件

こう話すのは銃器に詳しい津田哲也さん。

銃器専門家・津田哲也さん
銃器専門家・津田哲也さん

容疑者は銃所持の許可を得ていた

青木容疑者は県公安委員会から銃所持の許可を得ていた。

2020年5月には、上田市菅平高原にある射撃場で、許可の申請に必要な技能講習を受けていた。

青木容疑者は2020年5月、上田市菅平高原にある射撃場で技能講習を受けていた
青木容疑者は2020年5月、上田市菅平高原にある射撃場で技能講習を受けていた

上小猟友会・橋本和幸会長:
(容疑者は)私の記憶にもないし、射場長の記憶にもない。故意に撃っているので技能講習を受けていても、それは防げない

猟友会には所属していたもののメンバーとの交流はなく人柄は知られていなかった。

容疑者が所属していた猟友会の会長:
話したこともない、一度も会ったことないからわからない。(猟友会に入った理由は?)わからない

箕輪町で銃砲店を営む登内里見さん。銃を販売するときは、客の様子に不自然なところがないか、あえて雑談などをするという。

上伊那銃砲火薬店・登内里見さん:
(雑談で)この人は変な人だなと思ったら、なるべくやんわりとお断りしたりすることも

上伊那銃砲火薬店・登内里見さん
上伊那銃砲火薬店・登内里見さん

専門家「精神面を見抜くのは困難」

銃所持の申請には、精神疾患がないことを証明する医師の診断書も必要だが、青木容疑者は問題ないと判断されていたとみられる。

また、家族や近隣住民への聴取では母親などが所持に賛同していたという。

青木政憲容(31) 長野中央警察署に移される(5月26日夜)
青木政憲容(31) 長野中央警察署に移される(5月26日夜)

津田さんは現在の手続きでは、「精神疾患などを見抜くのは難しい」と話す。

銃器専門家・津田哲也さん:
(精神疾患は)本人が進んで病院に行くこともなかったりするので、表面化しにくい。それを医師が短い問診だけで判断するのが非常に困難。人の資質を調査だけで判断するのは難しい

銃器専門家・津田哲也さん
銃器専門家・津田哲也さん

銃規制をめぐっては、2007年に長崎県で2人が死亡した発砲事件以降、所持を認めない「欠格事由」に「自殺の危険性がある人」を加えるなど強化された。

専門家「管理体制を見直すべき」

今回の事件を受けて、さらなる規制強化へ議論が進む可能性もあるが、津田さんは、法規制より管理体制を見直すべきだと指摘する。

銃器専門家・津田哲也さん:
銃を実用されている方も非常に多い。狩猟のためだとか、有害鳥獣駆除のためにどうしても必要だとか。(法規制では)そういう方々が不便することになるので、その人たちの立場は尊重して、委託保管という形で銃砲店に預けることができる。事件が起きそうな時に手元に銃があるから使ってしまうわけですから、すぐに手元になければそれは防止できる可能性がある。手元に銃を置かせないというのが一番大事なこと

事件現場
事件現場

悲劇を繰り返さないために。

銃の規制・管理の在り方が改めて問われている。

(長野放送)

長野放送
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