発生から2年がたった中野市の4人殺害事件。9月に始まる見通しの裁判には、青木被告の両親も出廷する予定であることが、支援する団体への取材でわかった。団体の代表は、「両親の証言は次の犯罪を防ぐために必要な情報」だとしている。

冥福祈り…被告両親が観音像を建立

長野県中野市で住民と警察官4人が殺害された事件から5月25日で2年。

被害者の冥福を祈って現場の近くに被告の両親が建てた観音像には花が手向けられていた。

被告の両親が建てた観音像
被告の両親が建てた観音像
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住民2人の殺害の動機について「ぼっちとばかにされていると思った」と話した青木政憲被告(33)。

弁護人によると、「事件や裁判には興味がない様子」で、謝罪の言葉も聞かれないという。

命絶つことも考えた両親

加害者家族の支援などを行うNPO法人の理事長の阿部恭子さんは、事件後から被告の両親の支援を続けている。

最近の両親の様子について「苦しい気持ちに変化はない。苦しい日々を過ごされていると思います」と話す。

NPO法人「ワールド・オープン・ハート」の理事長・阿部恭子さん(47)
NPO法人「ワールド・オープン・ハート」の理事長・阿部恭子さん(47)

NPOを立ち上げたのは14年前。被害者への支援を研究する中、激しい非難や差別を受ける加害者家族の実情を知ったのがきっかけだった。

阿部さんは「私が出会った加害者家族の中で責任を感じていない人は会ったことがない。背負いきれないほど背負っている。究極の謝罪じゃないが、そういう形で自ら命を絶つみたいなケースが少なくない」と話す。

観音像に手向けられた花
観音像に手向けられた花

事件後に相談を受けたことをきっかけに、青木被告の両親に寄り添ってきた阿部さん。両親は一時、命を絶つことを考えていたという。

阿部さんは2024年5月の取材時、「自ら命を絶つとかそういうことではなく、一緒に前を向いて、何で事件が起きてしまったのか、ずっと考え続けていくということが大事」と話した。

裁判には被告の両親も出廷する予定

精神面のケアはもちろん、転居や就労などの生活再建、マスコミ対応など様々なサポートを続ける阿部さん。

阿部さんは「(加害者家族に)過剰に責任を問う風潮は逆効果。社会の側に犯罪者を助ける術がなかったかというところから考える必要がある。責任を問うだけでなく新たな加害者をつくらないため社会で包摂する(受け入れる)社会になったら」と話し、家族を孤立させず、新たな悲劇を生まないため、ともに事件に向き合うことが必要という。

事件現場(当時)
事件現場(当時)

裁判は長野地方裁判所で9月に始まる見通しで、被告の両親も出廷する予定だ。

阿部さんは「家族が考えていることなどは、裁判の中で明らかになるだろう。(加害者の)家族もいろんな後悔をもっている。その後悔は、次の犯罪が起こらないため重要な情報」だと語った。

(長野放送)

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