コロナウィルスの感染もひとまず収まり、今年の夏休みには米国旅行を計画する方も多いと思うが、銃乱射事件など犯罪が多発している米国へ行っても大丈夫なのだろうか。

そうとは考えない国が少なくとも7カ国はあり、米国への渡航には警戒するよう自国民に呼びかけているからだ。

非常線をはるニューヨーク市警
非常線をはるニューヨーク市警
この記事の画像(7枚)

ニュージーランド、カナダ、豪州、英国、フランス、ベネズエラそれにウルグアイがそれらの国々で、ニュージーランドの場合は4段階ある警戒段階の2番目に当たる警告で「旅行者は注意深く行動するよう」次のように助言している。

「米国は、国際的なテロ集団と国内に拠点を置く過激派の両方から、依然としてテロの標的となっています。(中略)米国に滞在するニュージーランド人は、メディアやその他の現地の情報源をモニターし、安全やセキュリティに対する潜在的なリスクについて常に情報を得るようお勧めします。ショッピングモール、市場、モニュメント、観光地、デモ、大規模な集会、公共交通機関など公共の場では、地元当局の指示に従うとともに、周囲に気を配ってください」

ニュージーランド政府が米国旅行への警戒を呼びかけるホームページ
ニュージーランド政府が米国旅行への警戒を呼びかけるホームページ

テロ事件といえば、2001年9月11日の同時多発テロ事件の後も2013年4月15日のボストンマラソン爆破事件や2016年9月17日にはニューヨーク、マンハッタンの繁華街で爆弾が爆発し30人が重軽傷を負うという事件が起きており、イスラム過激派や反イスラム過激派、反ユダヤ過激派などのテロ事件が絶えていない。

ボストンマラソン大会で2つの爆弾が爆発(2013年)
ボストンマラソン大会で2つの爆弾が爆発(2013年)

そうした思想的背景がなくても、多発する銃乱射事件についてニュージーランド政府はこうも警告する。

「米国では、銃乱射事件が発生しています。無差別銃撃事件が発生した場合の対応については、米国国土安全保障省のウェブサイトを参照してください」

米国では今月1日までの120日間に被害者が4人以上に及ぶ「銃乱射事件」が184件発生。248人が死亡。744人が負傷している(ABCニュース)。1日に1.5件、米国のどこかで銃乱射事件が発生している計算になる。

28歳女が小学校で銃乱射 子供ら6人死亡(米・テネシー州 3月)
28歳女が小学校で銃乱射 子供ら6人死亡(米・テネシー州 3月)

強盗やスリ、ひったくりの被害も大都市を中心に多いのはこれまで通りだ。ニューヨーク市のウェブサイトNY.comはニューヨークを訪れる観光客に次のようなアドバイスをしている。

・常に周囲の人物に気を配ること。
・人通りの多い場所にいること。
・おどおどせず自信ある態度でいること。
・財布やハンドバッグはしっかり小脇に抱えること。
・2人で歩く時はハンドバッグはその間に持つこと。
・指輪は宝石の部分を掌側にして他人に見せないこと。
・ネックレスは衣服の内側にすること。
・道で誰かに嫌がらせを受けたら人混みのある店へ逃げ警官を探すこと。
・困ったら「助けて(help)」とは言わず「火事だ(fire)」と叫ぶこと。その方が他人の注意をひく。
・もし強盗に襲われたら抵抗しないこと。お金より命が大事と思うこと。
・歩道ではその中央を歩くこと。夜間は車に救いを求められるよう道路側を歩くこと。

ニューヨーク
ニューヨーク

ニューヨークに限らず、観光客を招きたい地元としては「気をつけて来てください」ということだろうが、犯罪に対処する警察の本音は違うようだ。

「ロサンゼルスに来ることを考えている人へのメッセージは『来るな』ということだ」

一昨年のクリスマス休暇前ロサンゼルス警察官組合の委員長はテレビ番組でこう言っていた。

ロサンゼルスの高級住宅街ビバリーヒルズでの銃撃事件 男女3人死亡(1月)
ロサンゼルスの高級住宅街ビバリーヒルズでの銃撃事件 男女3人死亡(1月)

こうした米国の状況について日本の外務省は、その「海外安全ホームページ」でアメリカ合衆国については何ら注意喚起を表示していないのだが…

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。