シャコのイメージを変えるような色をした個体が、Twitterで反響を呼んでいる。

日本の海にはいろんな生物がいます。
こちらは笑っちゃうくらいエメラルドグリーンなシャコ。

でんかさん(@K_theHermit)が投稿したのは、透明なケースに入ったシャコの写真。体が色鮮やかな緑色で、透き通るような美しさを感じさせる。

でんかさん撮影したシャコ(出典:でんかさんのTwitterアカウントより)
でんかさん撮影したシャコ(出典:でんかさんのTwitterアカウントより)
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でんかさんによると、沖縄県の磯で生物観察をした際に見つけたとのこと。全長は5cmほどで、観察後は逃がしたという。Twitterでは「すんごいキレイ。宝石みたい」といった反応が寄せられ、3万4000以上のいいねを集めた(5月25日時点)。

寿司ネタの印象もあるが…(画像はイメージ)
寿司ネタの印象もあるが…(画像はイメージ)

シャコというと、寿司のネタに登場する薄いグレーの印象もあるが、鮮やかな緑色をしているのはなぜなのか。シャコ類の研究者である、琉球大学大学院の中島広喜さんに聞いた。

生態的な理由が関係しているかも

――Twitterのシャコはどんな生物とみられる?

本来であれば、標本の外部形態(額板や尾節の形状など)を見たうえで種同定を行う必要があります。その上で画像からの推察となりますが「コトゲフトユビシャコ」(学名:Gonodactylellus viridis)だと思います。経験上、沖縄でみられる、このような体色のフトユビシャコ類はこの種です。


――コトゲフトユビシャコはどんな特徴がある?

口脚目(シャコ類)のフトユビシャコ上科フトユビシャコ科に分類され、成体で6cmほどの比較的小型な種です。東南アジアやオーストラリアなど幅広い地域で見られ、日本国内では、沖縄の礁池(浅い海)などでよく見られます。


――鮮やかな緑色をしているのはなぜ?

厳密には調べられていないので不明です。ただ、生態的な理由が関係しているかもしれません。沖縄の礁池では海草(うみくさ)のリュウキュウスガモ等が繁茂することが多いため、緑色の体色はカモフラージュとして役立っていることが考えられます。実際に干潮時に潮溜まりを歩いてみると、こうした海草やサンゴ礫の合間を縫って逃げていくのを目にします。

寿司ネタのシャコとはどう違う?

――寿司ネタになる、シャコと色が違うのはなぜ?

食用のシャコは、シャコ上科シャコ科に分類されます。遠い分類群ですので、そこがまず大きく違います。フトユビシャコ類にはサンゴ礁をはじめとする浅瀬、つまりカラフルな環境に生息するものが多いので、砂や泥などの海底に穴を掘って生息するシャコ科よりも、体色が全体的に派手になる傾向があるのだと思います。

補脚の形に違いがあるという※こちらは、モンハナシャコ(画像はイメージ)
補脚の形に違いがあるという※こちらは、モンハナシャコ(画像はイメージ)

――体色以外だと大きな違いはあったりする?

形に注目すると、いわゆる“シャコパンチ”に用いる付属肢である捕脚の形が挙げられます。シャコ類は英語でMantis shrimp(カマキリ+エビ)といいますが、特にシャコ科などでは捕脚がカマキリを彷彿させるような形になっており、これで獲物を挟み込んで捕まえることもできます。

対して、フトユビシャコ類の捕脚はそれよりも頑丈な形状となっており、強烈なパンチを放つことに特化しています。シャコを食される際には、ぜひ捕脚の形状に注目してみて下さい。

中島さんが発見した、アデヤカフトユビシャコモドキ(提供:中島広喜さん)
中島さんが発見した、アデヤカフトユビシャコモドキ(提供:中島広喜さん)

――他にも、鮮やかな体色のシャコはいる?

挙げだすときりがありませんが、例えば、アデヤカフトユビシャコモドキ(学名:Gonodactylaceus ternatensis)は変わった体色をしていると思います。2020年に西表島で私が発見した個体です。

今回の投稿者でんかさんは「意外と身近なところに美麗な生物がいます。実物は感動的美しさですので、自然下で見て欲しいです。装備を揃えて、危険生物に気をつけてゆるく磯観察をするのは楽しいですよ」とも話していた。

地球にはまだまだ、私たちのイメージを変えるような生物が隠れているかもしれない。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。