福井の味覚の王様「越前がに」が、食以外でも脚光を集め始めている。捨て殻の成分に稲の苗の成長を促す成分が新たに発見されたためだ。カニと米は福井県が力を入れてアピールしており、2つのコラボレーションで次の可能性を探っている。

水揚げ量の半分が“捨て殻”

5月2日、福井・坂井市で農家の大嶋裕一さんが田植えを始めた。植えている苗は福井のブランド米「いちほまれ」。苗には、越前がにの食べ殻から抽出された成長剤が使われている。

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越前がには福井を代表する味覚で、漁が認められる11月から3月まで食することができる。毎年この時期は国内外から大勢の人たちが、この味を求めて福井を訪れる。

多くの人を魅了する越前がにだが、身を食べ終わった後には大量の捨て殻が残り、生ごみとして捨てられる。その量はワンシーズンで約200トン。年間の水揚げ量は約400トンで、その半分が殻として捨てられている。

カニ殻で「強く丈夫な稲」に

大量に廃棄される殻を有効活用する方法はないかと立ち上がったのが、福井県立大学生物資源学部の木元久教授だった。

木元教授が研究を始めたのは十数年前。お年寄りたちが自分の畑に、越前がにの殻をまいているのを見たことがきっかけだった。

試行錯誤を繰り返し、2年前に苗の成長を促す「ある物質」を突き止めた。それが、カニの殻に含まれる主成分「キチン」だ。

県立大学 生物資源学部・木元久教授:
植物の病原菌の8割はカビ。カビとカニの捨て殻は同じ成分。瞬時にカニ殻の成分をかけると外敵だと判断して防御反応を見せる。人間のワクチンと同じ効果が出る。そのため丈夫な苗が育つ

苗の育成中に計3回、キチンが含まれた液体の成長剤をまく。苗の外見に変化はないものの、丈夫で強い稲に育つという。米も大粒化し、食感がアップするという効果も確認されてる。

福井の味覚を“コラボ” 内外にPR

福井を代表する味覚「越前がに」と「いちほまれ」。2大ブランドのコラボレーションを前面に打ち出し、県内外へとPRする予定だ。

農家の大嶋さんも、この「新しい米」に期待している。

さんさん池見 取締役・大嶋朋裕さん:
米は差別化が難しい。地域特性の越前がにといちほまれを掛け合わせれば、新しい米になる。1つの観光の目玉として、食でみんなが楽しめる米になればうれしい

越前がに由来の成長剤を使ったいちほまれは、9月中旬に県内外で初めて試験販売される。

(福井テレビ)

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