福井・小浜市の酒蔵で、20代のアメリカ人男性が日本酒造りに奮闘している。留学を機に日本が大好きになり、ALT(外国語指導助手)を経て福井に居を構えた。「小浜のsakeを世界に」。日本文化の発信を担うアメリカ人の姿を取材した。
「自分がどこまでいけるか挑戦しようと思った」
小浜市にある酒造会社「小浜酒造」。ここで働いているのがアメリカ人のネイサン・ウォーカーさん(27)だ。2022年7月まで、青森・八戸市の小中学校でALTとして4年間勤務し、2022年10月、この酒造会社に入社した。

ウォーカーさんはインディアナ州の出身。日本に興味を持ったのは高校生の時だった。親戚からの紹介で、アニメの「デスノート」「ナルト」「ワンピース」などを見たことがきっかけだった。
ネイサン・ウォーカーさん:
日本が好きになって、いつか日本に行ってみたいということになり、大学3年のとき東京の早稲田大学に留学できまして。それでさらに日本を好きになりまして

日本の企業で頑張ってみたいと外国人向けのジョブフェアに参加。そこで小浜酒造と出会った。
ネイサン・ウォーカーさん:
いろんな会社と話す中で、この会社は面白いなと。自分がどこまでいけるか挑戦しようと思った。小浜市の景色は最高!

市内の店舗への配達を任されているウォーカーさん。車を運転し配達先を回る。道順もかなり頭に入ってきて「まだ数カ月しかたってないのに、ずっと小浜にいたかのような感じがする」と笑顔で話す。

配達先の酒店店員は「いつも元気がいいので、元気をもらっている」と話してくれた。
新酒の仕込みは「ムキムキになりそう」
年明け、酒蔵では新酒の仕込みが始まった。酒造りは初体験。この日は250kgの米を蒸して、適温になるまで冷ましてタンクに入れていく作業が繰り返された。
ネイサン・ウォーカーさん:
ムキムキになりそう。めっちゃ体を使う仕事だから。新酒ができたらホッとすると思うので、頑張りたい

その2カ月後、新酒第1号がついに完成した。酒の名前は、昔から福井県南部の若狭地域で親しまれている「上撰わかさ」。

試飲した社長と杜氏は「上出来でしょ!」と太鼓判を押すと、ウォーカーさんも「効きますね!」と満足そうに口に運んでいた。

ネイサン・ウォーカーさん:
最初は日本酒を造りたいとは思わなかった。でも小浜に来て日本酒を飲んで、これはおいしいと。これならいろんな人に売れると思って、全国でも海外でも売りたいと考えている。今はお酒をちゃんと知るように勉強している
夢はアメリカで“小浜の酒”を販売すること
小浜酒造では現在、香港や台湾などのアジア、ヨーロッパなどに商品を出荷している。海外への販路拡大を目指し、ウォーカーさんは英語で海外のバイヤーと積極的に商談している。

フィンランドのバイヤーに熱心にアピールするのは、2022年、ルクセンブルク酒チャレンジの審査で最高賞のプラチナに輝いた「純米吟醸わかさ」だ。

小浜酒造 高岡明輝社長:
アメリカと日本にいた彼がおいしいと発信すると、海外の人から見れば説得力がある

ネイサン・ウォーカーさん:
アメリカ人だから、小浜の酒をアメリカで売りたい。酒の知識と合わせてアメリカ全土で小浜の酒を販売することが僕のゴール

ウォーカーさんの入社で、早くも小浜の地酒を海外に広げるきっかけが生まれている。
ネイサン・ウォーカーさん:
小浜の酒のいいところをアメリカで見せたい。ほかの有名な酒と一緒に並ぶように全力でファイトする

“小浜の酒”を母国アメリカ、そして世界へ。ウォーカーさんの挑戦はこれからが本番を迎える。
(福井テレビ)