獣医師の資格を持たないのに麻酔なしで帝王切開したなどとして動物愛護法違反などの罪に問われている元販売業者社長の第4回公判が5月10日、長野地方裁判所松本支部で開かれた。証人として元従業員が出廷し検察側の質問に「被告は麻酔をせずに帝王切開手術をしていた」などと証言した。

無免許で麻酔なしに犬5匹を帝王切開

施設を家宅捜索(長野県松本市 2021年9月)
施設を家宅捜索(長野県松本市 2021年9月)
この記事の画像(7枚)

劣悪な環境で多数の犬を飼育し虐待したとして、動物愛護法違反(殺傷・虐待)の罪などに問われている松本市の元犬販売業者社長・百瀬耕二被告(62)。

起訴状によると、被告は獣医師の資格を持たないのに、2021年8月、松本市の自宅(当時)でフレンチブルドッグ4匹とパグ1匹の計5匹を麻酔をせずに帝王切開し、みだりに傷つけたとされているほか、2020年4月から12月の間にはシーズー犬8匹に狂犬病の予防注射を受けさせなかったとされている。

元従業員が証言「被告は麻酔せず帝王切開」

長野地方裁判所松本支部
長野地方裁判所松本支部

5月10日の公判で証人として出廷したのは、1995年7月から2010年12月まで被告の下で働いていた男性。

男性は入社当初は土木関係の部門で働いていたが、2004年ごろから松本市寿の犬舎で子犬の世話や、被告が執刀する帝王切開の手術のサポートなどに専従するようになった。

男性が帝王切開に立ち合い始めたころ被告は、獣医から麻酔を仕入れており手術の際に使っていたという。

しかし、当時行われていた手術について、男性は次のように証言した。

(元従業員の男性の証言)
麻酔を投与すると死んでしまう犬もいた

(元従業員の男性の証言)
手術中に犬が鳴き叫ぶこともあった

施設で飼育していた犬
施設で飼育していた犬

検察官にどれくらいのペースで帝王切開が行われていたのか問われると、男性は「年間200日くらい」と答えた。

2007年ごろからは、男性自身も帝王切開の手術を行うようになったという。

しかし、2年後の2009年ごろ、被告からこう告げられた。

「(麻酔を仕入れていた)獣医が世代交代し、麻酔を譲ってもらえなくなった、この麻酔が最後だ」

それ以降、被告は麻酔をせず帝王切開手術をするようになった。また、男性が執刀する際にも使っていなかったという。

元従業員「獣医に頼むと金がかかる」

施設を家宅捜索(長野県松本市 2021年9月)
施設を家宅捜索(長野県松本市 2021年9月)

検察官から、なぜ他の獣医などに頼まず自分たちで帝王切開を行っていたのか問われると「被告に獣医に頼むと金がかかり、もうけられないからと言われた」と答えた。

男性は、給与面や待遇面などから2010年に退職。辞めたあとのことは知らないという。

弁護側「鎮痛剤を使っていた」一部否認

施設で飼育していた犬
施設で飼育していた犬

一方、弁護側は、これまでの公判で「鎮痛剤は使っており、みだりに傷つけてはいない」などと主張し、起訴事実を一部否認している。

男性は、弁護側から鎮痛剤のことを知っているかと問われると「聞いたことがない」と答えた。

杉本彩さん「大規模で残酷な動物虐待」

裁判後、被告を刑事告発し初公判から傍聴している動物環境・福祉協会Evaの杉本彩理事長は次のように述べた。

動物環境・福祉協会Eva・杉本彩理事長が取材に応じる(5月10日)
動物環境・福祉協会Eva・杉本彩理事長が取材に応じる(5月10日)

動物環境・福祉協会Eva・杉本彩理事長:
これだけ大規模で残酷な動物虐待は世界見渡しても本当にないんじゃないかと思うくらいひどいもの。(裁判では)残酷な事実がいつも出てくる。改めて厳罰化への思いが強くなりました

次回公判は6月21日、地裁松本支部で被告人質問が行われる予定だ。

(長野放送)

長野放送
長野放送

長野の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。