新年度が始まる4月から5月はクラス替えや異動で環境が変化し、心身を崩しやすい季節になる。「五月病」とも呼ばれる症状だが、医学的には「適応障害」に分類される。大人だけでなく子供も発症する恐れがあり、専門医は症状が重いケースでは早期発見が重要だと呼びかける。

体の不調 環境の変化が原因かも…

福井市の福井厚生病院ストレスケアセンター長、杉坂夏子医師は適応障害の要因について「その場の環境に慣れることができず頑張りすぎた結果」と指摘する。

福井厚生病院ストレスケアセンター長・杉坂夏子医師
福井厚生病院ストレスケアセンター長・杉坂夏子医師
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杉坂夏子医師:
症状としては体調や気分が悪くなる。脳が疲弊して神経伝達物質のセロトニンやドーパミンがうまく調整できなくなる状態

主な症状としては、だるさや疲れやすさ、不眠などは身体の症状。このほか、憂鬱(ゆううつ)な気分、マイナス思考、涙が出るといった精神的な不調がある。

適応障害は新しい環境に変わってから1~2カ月後に発症しやすいとされる。そして、年齢に関わらず誰でもかかる恐れがある。

杉坂夏子医師:
きちょうめん、真面目、完璧主義。他人の評価をすごく気にする人、目標や理想が高い人がなりやすい

精神疾患は見た目ではわかりにくいため、注意が必要だ。特に子供の場合、精神的な不調を言葉で表現することが難しく、体調不良だけを訴える子供が多いという。学校に行く際、腹痛や頭痛などを訴える頻度が増えた場合は要注意だ。

杉坂夏子医師:
親は内科や小児科で検査をするが、異常がないと言われることが多い。親は仮病だと疑い、子供が傷つくこともある

一方、大人の場合は職場環境からの影響が大きい。厚生労働省がまとめた調査によると、精神の不調で1カ月以上連続しての休職、もしくは退職した従業員がいる事業所の割合は全国で約10%になる。

2019年から働き方改革が始まり労働環境の見直しが進んでいるが、精神科や診療内科を受診する敷居が下がったこともあり、適応障害と診断される人は増えている。

SOSが出しやすい雰囲気づくりが大切

原因が特定できる適応障害は、それを取り除けばすぐに症状が改善することがある。重要なポイントは「家族や上司の理解」と「負担を減らす」の2点だ。

杉坂医師は「家族や上司の理解」について「SOSが出しやすい雰囲気づくりが大切。どうしてつらくなったのかや、どうしたら良いかを同じ目線で考えられるといい」と話す。

「負担を減らす」については「原因から離れると治るのが適応障害。長期休養や治療よりも、クラスや職場などの環境を整えるのが大事」だと指摘する。学校に段階的に参加したり、仕事を振り分けたりして、少しずつ負担を減らした方がいいという。

杉坂夏子医師:
最終的に自分を守れるのは自分しかいない。自分に優しく、自分を大事にするといいと思う。今は精神科の敷居も下がっているので気軽に来てもらいたい

(福井テレビ)

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