夏に注意が必要なのは、熱中症や夏風邪だけではなく、「痛風」にも要注意だ。痛風にとって、筋トレやサウナや海水浴が危険だという話もある。“痛風予備軍”は約1000万人いるということで、一体どう注意すればいいのか。近畿大学病院の前田法一さんに聞いた。

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尿酸値が高くなると痛風のリスク高まる

痛風の症状は、足や膝など関節部分が腫れて、激痛を伴う。

痛風になる仕組みを説明する。食品から摂取されたプリン体が、肝臓で分解され尿酸になり、尿や便と一緒に排せつされる。ところが作られる尿酸が多かったり、うまく排せつできないと、血液中の尿酸が増えてしまう。

ポイントは、「尿酸値が高くなると痛風のリスクが高まる」ということだ。尿酸の正常値は、1デシリットルあたり7mg以下で、これを超えると痛風のリスクが高くなる。

かつては“ぜいたく病”と呼ばれた痛風だが、今はそうではなく、誰もがかかり得る病気なのか?

近畿大学病院 前田法一主任教授:
かつてぜいたく病と言われましたのは、高度経済成長の前の話で、今はもう完全に飽食の時代と言ってよく、痛風はいわゆる生活習慣病と捉えています

痛風を引き起こす引き金となるのは、「生活習慣」と「脱水状態」ということだ。夏に患者が増えるのはこれらの影響なのか。

近畿大学病院 前田法一主任教授:
夏場はやはり脱水につながりやすいです。それとビールとか、アルコールを飲む機会ですね。コロナ明けという状況で、宴会が多いと思うので、それも重なっているかもしれません。厚生労働省の統計によると、2022年は130万人以上が痛風になったということです

「医師355人に聞いた“痛風のトリガー”」という調査結果が、7月に発表された。

まず、3位「激しいスポーツ」、4位「サウナ」、5位「筋トレ」と、体にいいとされているものがランクインしている。その他「ダイエット・ゴルフ・海水浴」などもトリガーになりやすいとのことだ。どうしてなのか?

近畿大学病院 前田法一主任教授:
筋トレはいわゆる無酸素運動に属するんですが、無酸素運動になるとプリン体の原料が増えてしまいます。有酸素運動も取り入れながら、筋トレしていただきたい。水分もしっかり取ってください

「痛風のトリガー」、1位は「飲み会」、2位は「特定の食品の食べ過ぎ」だ。

近畿大学病院 前田法一主任教授:
ここにあげられたもの全て悪いと思いますね。ジムなどで筋トレをして、水分を取らずにそのままサウナで整って、ビールを飲みながら焼き肉を食べるというのが一番危険です

プリン体が多いアルコール飲料はどれ?

ここでプリン体クイズ。ビール500ml、ワイン200ml、ウイスキー60ml、焼酎100mlのうち、尿酸の元になるプリン体が多い飲み物、少ない飲み物はどれか?

一番多いのはビールで、焼酎はゼロだ。ただ、アルコール自体に尿酸値を上げる働きがあるので飲み過ぎには注意。アルコールを飲みながら、適度な水分補給もしないといけない。

Q.生ビールを飲んだ後、水を飲めば“チャラ”になりませんか?

近畿大学病院 前田法一主任教授:
プリン体を摂取している状況なので、チャラにはならないです。あとアルコールをよく飲むと脂肪肝になってくる。脂肪肝になるとプリン体を作る酵素がすごい増えてしまうので、アルコール自体リスクになります

プリン体が多い食品はどれ?

続いてプリン体クイズ2問目、食品に関して。ここにあげたマグロ、カズノコ、イクラ、牛肉(ヒレ)、鶏肉(レバー)、白米のうち、100g中のプリン体が多い食品はどれか。「イクラやカズノコを食べ過ぎると痛風になる」という話を聞いような気がしますが本当なのか?

最もプリン体が多いのは「鶏レバー」で、お肉に多く含まれている。イクラやカズノコは意外と少ない。

Q.プリン体の多いお酒や食品をなるべく取らないといった生活習慣が大事なのか?

近畿大学病院 前田法一主任教授:
少なくとも尿酸値が高い方はそうです。これ以外にもイワシとかもプリン体がけっこう入っています。尿をアルカリ化することで、尿酸の排せつが増えますので、アルカリ化するような食品、例えばわかめ・昆布などの海藻類や、きのこ類なんかも良いとされています

関西テレビ「newsランナー」視聴者から質問。

Q.父が痛風でした。痛風は遺伝しますか?

近畿大学病院 前田法一主任教授:
極まれですけど、やはり遺伝する患者さんがおられます。尿酸値、僕らが見ていて高いなというのは大体8mgから9mgぐらいなんですが、そういった方は10mgとか15mgとかになって、痛風の関節炎が手にも出てきたりという、特殊な病気ですけれども、遺伝するケースがあります。内臓脂肪がたまっているメタボの人というのは、7mg未満であってもリスクが高くなります。痛風自体が心筋梗塞とか、心血管病につながると言われています。そこにメタボとなれば、よりリスクは高くなります

Q.まったくお酒を飲まなくても、痛風になるものですか?

近畿大学病院 前田法一主任教授:
中にはおられます。気を付けたいのは脱水です。水分を取らずに激しい筋トレをしたときなど、脱水が引き金になります。お酒だけではないです

夏こそ「痛風」に要注意だ。

(関西テレビ「newsランナー」7月20日放送)

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