男性デュオ「バブルガム・ブラザーズ」のブラザー・コーンさん(67)が、自身のSNSで乳がんであることを公表し、男性の乳がんについて関心が高まった。乳がんになった男性を取材してみると、がんに気づいたきっかけは、何気ない異変だった。

「寝耳に水」男性の乳がん 特徴は…

ブラザー・コーンさん(SNSより):
私、ブラザー・コーンは左胸にシコリができ、病院で検査を受けたところ乳がんと診断されました。乳がんは男性では本当に珍しいらしく、自分でも寝耳に水でした

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SNSで心境を語る男性デュオ「バブルガム・ブラザーズ」のブラザー・コーンさんがSNSで乳がんであることを公表。現在、ステージ2で主治医からは「命に別条はない」と告げられているというが、抗がん剤の副作用が予想以上に大きく、つらい治療に耐えているということだ。

女性の病気というイメージが強い乳がん。国立がん研究センターによると、男性の乳がんは乳がん患者全体の約1%ほどだが、生涯を通じて男性の1,000人に1人が乳がんになるというデータもある。

「左だけちょっとへこんでない?」と指摘され

岐阜県に住む野口晃一郎さん(48)は、今から7年前、41歳の時に乳がんと診断された。

野口晃一郎さん:
ここが乳首でそこから乳腺が伸びてるんですけど、腫瘍がひっぱるというか、窪みができて、外から見るとへこんだように見える。まさか自分が、何でなるの?と。がん家系ではなかったので。”なっちゃったんだ…”というのが最初の印象

診断された時の進行度は「ステージ2」だった。早期の発見となったものの、リンパへの転移がみられ、腫瘍を取り除く手術で左乳房と左腕のリンパを切除した。

野口晃一郎さん:
おまんじゅうがあって、中のあんこをくり抜くような感じ。女性ほど切除することに抵抗は少なかったと思うんですけど、やはり自分の体の一部がなくなるというのは多少切ないというか…

手術は成功し、現在、再発はないが、今もホルモン剤の服用を続けている。

当時、乳がんに気づくキッカケとなったのは、妻・美穂さんの何気ない一言だった。

野口晃一郎さん:
お風呂に入る時に妻が「あれ?左だけちょっとへこんでない?」と指摘してくれて気づきました

妻・美穂さん:
パッと見た時に、へこんでるというのが分かったので、何だろうと彼に聞いてみた それくらいの話です。その時、乳がんというのは思ってなくて…

野口晃一郎さん:
言われてみると、チクチクするような感じもするし、左だけちょっと違和感があったので受診することにしました

病院でエコーや触診、マンモグラフィ、組織を調べる生検を受けた結果、乳がんが判明した。

野口さんはフリージャーナリスト。 自身の取材活動の中で、男性でも乳がんになることは知っていたそうだが…

野口晃一郎さん:
ブラザー・コーンさんが乳がんを公表されて初めて男性も乳がんになると知った方も多いと思うんですけど、私の場合は取材を通じてどこに行ったらいいかを知っていました。乳腺外科に行けばいいというのがあったので、おそらく何科に行っていいのだろうとか、例えば乳首から出血した時に、内科?皮膚科?など迷うと思うんですね

現在、男性の乳がんを知ってもらうための活動をしている野口さん。

野口晃一郎さん:
早く見つかって、早く治療するというのは大前提だと思うんですけど、見つかるのが早ければ早いほど治療の選択肢が増えるので、本当に早期発見が大事だと思います

女性だけの病気ではない「乳がん」。 「男性の乳がん」の特徴や命を救うためのセルフチェックの方法を乳がんのエキスパート・たかはし乳腺消化器クリニックの孝橋慶一院長に詳しく聞いた。

“認知度”が低く進行も早い

まずは、男性の乳がんの現状から見ていく。男性の乳がんで年間100人以上が亡くなっている。厚労省によると、2019年に乳がんと診断された男性は670人、2020年に乳がんで亡くなった男性は129人となっている。

国立がん研究センターによると、男性の場合、生涯を通して1,000人に1人が乳がんにかかるそうで、近親者が乳がんならリスクは2倍になるそうだ。

男性の乳がん、女性の場合と違いがある。男性の乳がんは「気づきにくい」と言われるが、男女でこんな違いがある。

女性の場合、発症が多い年齢は40代以降だが、男性は60代から70代となっている。

そして、女性の場合は40歳以上から国が「乳がん検診」を推奨しているが、男性の場合は「乳がん検診」は対象外だ。女性の乳がんは認知度が高いが、男性の乳がんは認知度も低く、さらに進行も早いそうだ。

たかはし乳腺消化器クリニックの孝橋医師の視点では、診断された時点で進行しているケースが多いそうだ。進行が早いのはどうしてなのか?

たかはし乳腺消化器クリニック・孝橋慶一院長:
一番大きな原因は男性の胸はおっぱいが小さくて、ぺちゃんこだということです。だからガンができると、その奥の皮膚とか、筋肉に”浸潤”してしまう。そうすると診断された時点で、女性と比べてステージが高い乳がんになりやすいです。転移についてのリスクも高くなります

男性は「乳がん検診」の対象外という話があったが、男性でも「マンモグラフィー検診」を受けることはできるのだろうか?

たかはし乳腺消化器クリニック・孝橋慶一院長:
これは医療機関によります。私のクリニックでは男性であっても必ず、女性と同じようにマンモグラフィを撮っています。マンモグラフィでわかる情報は非常に大きいので。ただ、医療機関によっては、やはり男性はおっぱいが小さいので、撮らないところがあります

気づきにくい男性の乳がん チェックする方法は2つ

番組で取材をさせていただいたフリージャーナリストの野口晃一郎さんは、41歳の時に乳がんと診断された。その時点では「ステージ2」だった。左の乳首のへこみに妻が気づき、チクチクした痛みもあり病院へ行ったそうだ。

実際の写真を見ると、陥没したように見える。

たかはし乳腺消化器クリニック・孝橋慶一院長:
男性の場合は、乳腺が乳首の少し下にあります。がんができる場合、ほとんどが”乳首の下”にできます、そうするとへこみができます。がんの組織が周りの組織を引っ張るからです。乳首がへこんだりすると、ステージが進んでいるケースが多いです。男性の場合はおっぱいが小さいので、普段から意識しておけば、初期でがんを見つけやすいです。女性は乳房が大きいので自己検診で分からないケースが多いですが、男性はその気になれば自己検診で分かるケースが多いものです

そんな気づきにくい男性の乳がんをチェックする方法を教えてもらった。お家でできる簡単セルフチェックを2つ紹介する。

▼チェックポイント1
「鏡で自分の乳首を観察しくぼみや変形をチェック」

これは”見た目”でわかるということなのか?

たかはし乳腺消化器クリニック・孝橋慶一院長:
見た目である程度わかりますが、直接触ることが大切です

続いてのチェックポイントはいま、まさに孝橋医師が指摘した点だ。

▼チェックポイント2
「乳首の下にしこりがないか、月に一度はチェックする」

このしこりは、”梅干しの種”程度ということだが、実際に孝橋医師に教えてもらった。

たかはし乳腺消化器クリニック・孝橋慶一院長:
風呂場に入った時に、石鹸を使うとすべりがいいので、腕を上げて乳首のあたりを触ってみる。ちょっと触るだけでいいです。触ればすぐわかります。もう石か梅干しの種みたいに硬いですから、相当硬いです

見て、触って気づけるものなのか?孝橋医師によると、「その気になれば初期の段階でも自分で気づくことが可能だ」という。

「家族歴」に注意

男性の乳がん、どのような人がなりやすいのだろうか?

たかはし乳腺消化器クリニック・孝橋慶一院長:
男性乳がんの原因はハッキリとは分かっていません、ただ危険因子はあります。遺伝性の乳がん卵巣がん症候群の原因遺伝子の変異というものがあるんですけれど、それが女性の場合は5~10%の乳がんに見られるんですけれど、男性の場合は2倍近くあると言われています。あとは家族に乳がんの方が多いなど”家族歴”は重要。いろんな要因があると思います

家族歴の認識が大切だという。

たかはし乳腺消化器クリニック・孝橋慶一院長:
女性は年間9万7,000人が新たに発症する一方で、それに対して男性乳がんは670人ですから非常に差があります。なかなか気が向きません

わきの下のしこりは乳がんと関係あるのだろうか?

たかはし乳腺消化器クリニック・孝橋慶一院長:
脇の下にしこりがある場合は、必ずしも乳がんと関係があるとは限らないですね。 脇のリンパに”転移”していれば、乳がんと関係がありますが。また別の皮膚科的なしこりがあるとかそういう可能性もあります。脇のしこりは”転移”であって、乳がんそのものは乳首の下にできるものです

日頃のちょっとした注意が、予防や早期発見につながる。「男性も乳がんになる」ことを知ることが、まずは重要と言えそうだ。

(関西テレビ「newsランナー」9月1日放送)

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