2023年10月、鹿児島県で「燃ゆる感動かごしま国体」が開催される。1972年の「太陽国体」以来51年ぶりの鹿児島開催だ。実施されるのは、公開競技やデモンストレーション競技などを含め79競技で、県内43市町村すべてでいずれかの競技が開催される。
開催まで半年、競技場整備や宿泊施設の受け入れ体制はどうなっているのだろうか。

「全共」開かれた場所が“馬術”の会場に

「かごしま国体」がラッピングされた電車
「かごしま国体」がラッピングされた電車
この記事の画像(25枚)

鹿児島県内では、国民体育大会開幕までの日数を表示したカウントダウンボードや、鹿児島市電のラッピング車両が走るなど、「国体」を身近に感じるようになってきた。

白波スタジアムの入り口も国体仕様に
白波スタジアムの入り口も国体仕様に

開会式が行われる鹿児島市の白波スタジアムの入り口は、壁一面に国体のメッセージやイラストが描かれるなど、施設整備も進んでいる。また、2023年4月現在、芝生になっている一部の客席にも座席が作られる予定だ。

そして、鹿児島が“日本一”になった快挙達成の舞台でも整備が進んでいる。

「全国和牛能力共進会」が開かれた場所が馬術の会場に
「全国和牛能力共進会」が開かれた場所が馬術の会場に

前原竜二アナウンサー:
霧島市のこちらの会場は、2022年10月に全国和牛能力共進会が開かれた場所です。この場所が国体では、馬術の会場に生まれ変わります

2022年の全国和牛能力共進会の様子
2022年の全国和牛能力共進会の様子

鹿児島が「和牛日本一」に輝いた2022年10月の全国和牛能力共進会「全共」。鹿児島のチャンピオン牛が堂々と歩いた会場も、国体の舞台に変わろうとしている。

前原竜二アナウンサー:
この場所は、鹿児島の牛がすごく頑張って日本一をとった縁起のいい場所ですね

霧島市 国民体育大会推進課・赤塚孝平課長:
そうですね。その場所でお馬さんも頑張ってもらうということですね

スポーツの一大イベント、国体。その経済効果について専門家に話を聞いた。

九州経済研究所・福留一郎さん:
監督、選手、観覧者が来るので、そういう人たちが鹿児島に来て宿泊し、飲食し、お土産も買い、移動してといった、消費をともなう大きな経済効果が期待できますよね

大きな経済効果が期待 特別な思いで迎える施設も

全国から選手や関係者、約3万人が訪れると推計される中、選手を受け入れる宿泊施設には、特別な思いでこの大会を迎える場所もある。

鹿児島テレビに残る1972年に行われた太陽国体の開会式映像
鹿児島テレビに残る1972年に行われた太陽国体の開会式映像

51年前の1972年に行われた太陽国体の開会式は、今回と同じ白波スタジアム(当時の名称は鴨池陸上競技場)で行われた。

鹿児島テレビに残る開会式の映像をみると、スタジアムの奥に映り込んでいる大きな建物は、当時建設中だった鹿児島サンロイヤルホテルだ。正式開業は1973年だが、太陽国体に合わせて部分開業した。ホテル名の「サン」は「太陽国体」にちなんでいる。

鹿児島サンロイヤルホテル・池田司総支配人:
鹿児島で国体があるということで、非常に縁を感じている。既に国体に向けて大会事務局から宿の予約をいただいている

サンロイヤルホテルの客室
サンロイヤルホテルの客室

半世紀ぶりに国体関係者を迎えるサンロイヤルホテル。大会期間中、延べ1万2,000人が宿泊する予定だ。

鹿児島・北部の伊佐市にある1917年創業の旅館「松栄館」も、太陽国体と縁がある。当時から働いている貴嶋加代子さん(73)に話を聞いた。

松栄館・貴嶋加代子さん:
(二代目の)父(故・松元政一さん)が一番盛り上がっていた。損得なしでしていたみたい。大好きだったんですよ。「水分と塩分を一緒に取って」とか言って、スイカをあげていた

「太陽国体」時の選手の名前が書かれたラグビーボール
「太陽国体」時の選手の名前が書かれたラグビーボール

太陽国体では、新潟の高校のラグビー部を受け入れていたそう。
選手が帰るときにもらったという選手の名前が書かれたラグビーボールと、メッセージが書かれたスケッチブックは今も大切に保管されている。

メッセージが書かれたスケッチブック
メッセージが書かれたスケッチブック

スケッチブックには「皆さんのご親切を忘れません!」と大きな字で書かれていた。貴嶋さんは「こんなにみんなよく書いてくれたということは、いいおもてなしができたんだなと思いますね」と振り返った。

今回の国体では、カヌー競技の関係者を受け入れることになっている。

鹿児島県の特産品を生かしたメニュー
鹿児島県の特産品を生かしたメニュー

おもてなしで一番こだわりたいのは、鹿児島県の特産品を生かした食事だ。メニューを考案中の旅館の四代目に呼ばれ、取材班は厨房に行ってみた。

松栄館四代目・山下竜一さん:
さつまいものポテトサラダ。国体メニューにしようかと思って

思いついたのはなんと、たった今!この日のまかないを作っていて思いついたという。山下さんが「食リポをお願いしていいですか?」と前原アナウンサーにむちゃぶり。さて、そのお味は?

前原竜二アナウンサー:
いただきます。ごろごろさつまいもが入っていますね、おいしい!!

すかさず「おいしいでしょ!」と反応した山下さん。甘さと塩っ気が絶妙な、さつまいものポテトサラダ。なんと取材中に1つ国体メニューが完成してしまった。

今度は、前原アナウンサーが貴嶋さんに「太陽国体の経験を生かして(貴嶋)加代子さんもメニューをぜひ」とむちゃぶり!

貴嶋さんには「わたしはもう…脳が回らない!ははは!」と一蹴されてしまったが、「みんなと一緒に、家に帰ってきたみたいな家族的な感じでおもてなしができたら」とも話してくれた。こんなアットホームな雰囲気は、太陽国体の時代から変わっていないのかもしれない。

やる気が切れたような…感じる熱量の差

各地で選手らの受け入れ、準備が進んでいる一方、「(当初の予定から)3年延びたが、非常に待ち遠しくて、やる気が切れたような感じもする」と話すのは、鹿児島県水泳連盟の顧問を務める福重澄雄さん。太陽国体では競泳の鹿児島県代表選手だった。

「かごしま国体」は当初、2020年の開催予定だったが、新型コロナの影響で3年延期された。福重さんは、太陽国体当時との熱量の違いを感じている。

鹿児島テレビに残る1972年に行われた太陽国体の開会式映像
鹿児島テレビに残る1972年に行われた太陽国体の開会式映像

鹿児島県水泳連盟 顧問・福重澄雄さん:
あの時はまだすごかったですね。みんなで国体を成功させようと、燃え上がっていました

街の人は…
街の人は…

実際、街の人に聞いても「え~!あるんだ」、「市役所とか行ったら、あと何日って出ていて『あと何日なんだな』というのは見るんですけど、気持ちが追いついていないですね」という答えが返ってきた。

福重さんは、「歓迎ムードをつくるとか、会場が近かったら応援に行くとか、身近なことをしてほしい」と、どんな形でも一人一人が国体に関わるという意識を持つことが大事だと話す。

かごしま国体まであと半年という段階では、大会開催の盛り上がりは、まだまだこれからというところかもしれないが、競技場の整備や半世紀前の思いをつなぐ宿泊施設、それぞれの立場でその時を迎えようとしている。

(鹿児島テレビ)

鹿児島テレビ
鹿児島テレビ

鹿児島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。