“プーチン”が占領地を初訪問

先にウクライナ侵攻後初めて占領地を訪れたロシアのプーチン大統領は「替え玉」だったと言われ始めている。

プーチン大統領は19日、ロシア占領下のウクライナ南部マリウポリを予告なしに訪問したとロシア当局が発表し、現地での映像を公開した。

占領地を視察する“プーチン”大統領
占領地を視察する“プーチン”大統領
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2022年2月にロシアがウクライナに侵攻を始めて以来、新たな占領地をプーチン大統領が訪れたのは初めて。マリウポリは激戦の末、2022年5月ロシアが占領した場所で、ロシアの占領地の実効支配を誇示するねらいからだったと考えられた。

映像には、プーチン大統領がヘリコプターでマリウポリに入り、その後自ら自動車を運転して市内を視察して回る様子が映し出され、事態が落ち着いていることを訴える意図が見え透いていた。

占領地で自ら運転する“プーチン”大統領
占領地で自ら運転する“プーチン”大統領

ウクライナ側は「替え玉」と指摘

ところがこの映像が公表された翌日、ウクライナの内務大臣顧問のアントン・ヘラシチェンコ氏がツイッターにマリウポリに入ったプーチン大統領の写真と別の2枚の同大統領の写真を並べて見せ「どれが本物でしょう?」と疑問を投げかけた。

ヘラシチェンコ氏は写真のあごに注目するよう赤い丸かこみで強調したが、19日マリウポリで撮影された写真のプーチン大統領の顎は比較的とがっていて前に出ている。これに対して前日の18日セバストポリで撮影されたプーチン大統領のあごは非常に小さい。さらに今年2月21日モスクワで撮影されたプーチン大統領のあごは丸く、2枚の写真のプーチン大統領のあごとは明らかに異なる。

ウクライナの英字紙「キーウ・ポスト」は、この指摘について関係者の反応を取材したが、ウクライナ軍情報部のアンドロイ・ユソフ代表は「プーチンによく似た人物がマリウポリに行ったということだ」と語っている。(同紙電子版20日)

また同記事は、ウクライナ軍諜報部のキョリロ・ブダノフ部長の次のような談話も紹介している。

「ロシアのウラジミール・プーチン大統領は少なくとも3人の替え玉を使っている。プラスチック整形でプーチン大統領そっくりに手術されている。この3人についてはたびたび登場するので分かっている。後何人か替え玉がいるはずだか我々には分かっていない。一つだけ替え玉を知る方法が背丈だ。こればかりはビデオや写真でも違いがわかる。あとは身振り手振りで判断もできる。人の癖はなかなか修正できないものだから」

ロシアのプーチン大統領
ロシアのプーチン大統領

「全部芝居なのよ」削除された怒鳴り声

さらに、ロシア政府が公表した映像の中にプーチン大統領とマリウポリ市民が歓談する様子があったが、ボリュームをあげてビデオを再生すると背後で女性がこう怒鳴っている声が入っていた。

“マリウポリ市民”と歓談する“プーチン”大統領
“マリウポリ市民”と歓談する“プーチン”大統領

「それは本当じゃあないわよ。全部芝居なのだから」

西側のマスコミがこの発言を伝えて以来、ロシア政府はこのビデオの公表を取りやめたという。

ロシア政府が公表するプーチン大統領のビデオは、いろいろと検証して見る必要がありそうだ。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。