死産した双子の遺体を遺棄したとして、死体遺棄の罪に問われ、1、2審ともに有罪判決を受けた元技能実習生のベトナム人女性に対する上告審判決で、最高裁は、さきほど無罪を言い渡した。

これまでの判決などによると、レー・ティ・トゥイ・リンさん(24)は、2020年11月、熊本県芦北町の自宅で、死産した双子の男の子の遺体を、段ボールに入れるなどして放置し、死体遺棄の罪に問われた。

当時、リンさんは、技能実習生として、熊本県内のみかん農園で働いていたという。現場は、実習生の寮だった。

リンさんは、2人の遺体をタオルにくるみ、段ボールに二重に入れていたとのこと。さらに、タオルの上には、2人の名前や生年月日、お詫びの言葉に加えて、「ゆっくり休んでください」などと書かれた手紙を置いていたという。

段ボールは2つとも、粘着テープで封がされ、棚の上に置かれていたとのこと。その後、リンさんは、産婦人科で診察を受けた際、双子を死産したことを伝えて、事件が発覚した。遺体が放置された時間は、33時間にのぼった。

死体遺棄の罪に問われたリンさんは、1審の熊本地裁で懲役8カ月・執行猶予3年の有罪判決を受けた。これに対して2審の福岡高裁は、二重にした段ボールの中に遺体を入れて、テープで封をした上で、棚に置いた行為は、遺体の「隠匿」に当たると認定し、死体遺棄罪の成立を認めた。

一方で、33時間の遺体放置については、埋葬などを行うべき期間が過ぎていたとは言えないとして、「遺棄」には当たらないと判断。結局、福岡高裁は、懲役3カ月・執行猶予2年に減軽していた。

死体遺棄罪は、遺体を埋葬などせずに放置・隠匿し、死者に対する敬けんな感情や宗教的な感情を害する行為を罰するもの。弁護側は、リンさんは、埋葬するための準備をしていたもので、遺体を「遺棄」したのではなく、「安置」していたとして、無罪を主張していた。

きょうの判決で、最高裁は、遺体が隠匿されていたことは認めたものの、自宅でタオルに包むなどして段ボールに入れる方法などに照らすと、「遺棄には当たらない」と判断し、1・2審判決を破棄して、無罪を言い渡した。

社会部
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