ほとんどの人は、見たこともない漢字たち。「こんな漢字が本当にあるの?」と疑問に思う人もいるだろう。

奇妙な漢字の世界を堪能できる杉岡幸徳さんの著書『奇妙な漢字』(ポプラ社)から、一部抜粋・再編集して紹介する。

<形が奇妙>麺のためだけに存在する漢字

この漢字は「書けないけれど、読める!」という人はいるのではないか。

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【部首】之繞部54画【総画数】57 
【音】ビァン
【意味】ビァンビァン麺のビァン

中国の陝西省(せんせいしょう)にビァンビァン麺という麺料理があるが、それを表記するためだけに存在する漢字。 ビァンビァン麺とは、きしめんのような幅の広い麺を茹で、その上に唐辛子、醬油、油などをかけたもの。

この漢字の内部は複雑怪奇で、中にはごったまぜになって「具」が絡みあっている。麺類がとぐろを巻いているようにも見える。

あまりに複雑すぎるので、この漢字の書き方を覚えるための「詩」すら存在する。もっともそこまでして覚えても、 ビァンビァン麺と書くとき以外に使い道はない。  

【部首】口部33画【総画数】36
【訓】おしゃべり
【意味】おしゃべり  

「口」を三つ並べた「品」は我々にも身近な漢字だが、さらに極限まで推し進めて、12個も積み重ねた漢字がこれ。意味は「おしゃべり」。

このふざけた字は、江戸時代の戯作者である式亭三馬の『譃字尽(うそじづくし)』という本の中に出てくる。それにしても、とてつもなく喧(やかま)しそうな字だ。  

<読み方・意味が奇妙>孤独な漢字

【部首】魚部12画【総画数】23
【訓】ブリザード
【意味】ブリザード  

これで「ブリザード」と読む。「人を馬鹿にするな!」と怒る方がいるかもしれないが、その通り、この字は人を馬鹿にしている。

これは暴走族が作った漢字。魚偏に「嵐」をつけてブリザード(猛吹雪)のイメージを作りたかったのだろう。「夜露死苦」だとか、とにかく暴走族は難しい漢字を使いたがるものだ。 
 
なぜ魚なのかは謎だが、これは「鰤(ぶり)」から来ているそうだ。といっても、まったく理屈がわからないのだが。論理が暴走しすぎだろう。

【部首】人部1画【総画数】3
【音】カ【訓】ひとりぽっち
【意味】ひとりぽっち

「ひとりぽっち」という読み方はどこか情けないが、漢字の構成は「一人」だから、明快だ。

これは日常生活でも使えるだろう。

『奇妙な漢字』(ポプラ社)
『奇妙な漢字』(ポプラ社)
杉岡幸徳
杉岡幸徳