ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってからまもなく1年を迎えるなか、ウクライナ支援をめぐる新たな動きについてアメリカメディアが報じた。
アメリカの政府高官が、ウクライナへの支援は「永遠ではない」として見直しを示唆し、ウクライナ政府に対して早期に大きな戦果を挙げるよう圧力をかけているという。

“これまでと同レベルでの軍事・経済的支援は困難”
ワシントン・ポストは13日、アメリカ政府高官がウクライナに対して「我々は永遠に何もかもができるわけではないことを印象づける努力を続ける」と述べて、野党・共和党が議会の下院で多数派を占める中で、これまでと同じレベルでの軍事や経済的支援は難しくなるとの見方をバイデン政権が示していると報じた。

また、バイデン大統領の側近は、ロシアとの停戦交渉を行う前に、ウクライナに対して今後数カ月のうちに可能な限り多くの領土を奪還するよう求めていく姿勢も示しているという。
特に激戦が続くウクライナ東部の要衝であるバフムトをめぐっては、ゼレンスキー大統領はバフムトを象徴的に重要視し、陥落すればウクライナ軍の士気に打撃を与えると懸念を示している。しかし、アメリカ政府高官は仮にロシアに占領されたとしても「戦況に大きな変化はない」として、大規模な反攻作戦に向けた準備に戦力を集中させるべきとの考えも示していると報じている。

一方で、アメリカの研究機関「戦争研究所」は14日、前述した政府高官の発言に対して、ウクライナによるバフムトの防衛を「戦略的に健全な努力」と評価した。
具体的には刑務所に収監されていた犯罪者などを動員し、波状攻撃を仕掛けていたロシアの民間軍事会社「ワグネル」からの攻撃を防ぎ、ロシア軍が重要な部隊を投入せざるを得なくなった点などを挙げている。
もしロシア軍がウクライナの大きな抵抗を受けずにバフムトを占領していたら、ウクライナ軍はより不利な地形での防衛を迫られていたとの見方を示し、バフムトの防衛と大規模なウクライナの反攻作戦の準備は「相互に補完し合う活動である」と指摘し、先の政府高官と逆の評価をしている。

米軍事関係者“趨勢左右する戦闘が近く発生”
アメリカの軍事関係者は、ロシアとウクライナの双方が現在、大規模な攻勢に向けた準備し、近く今後の趨勢を左右する戦闘が発生するとの見方を示している。
バイデン大統領は一般教書演説でウクライナに対して「我々は必要な限りウクライナと共に立ち上がる」と語り支援継続と結束を呼びかけた。しかし演説全体でウクライナに触れた割合は少なく、大部分を国内経済に充てるなど、1年前の演説とは様変わりした。ウクライナ支援の削減を求める共和党の一部強硬派にも配慮したとも見られる形だ。

米紙の報道から読み取れるアメリカ政府高官の発言も、議会運営などで苦しむバイデン政権の現状を表しているかもしれない。アメリカの決断次第では、ウクライナが苦境に立たされることは間違いなく、主力戦車「エイブラムス」の提供を決断するなど、大規模な支援を続ける一方で、バイデン政権による支援継続は侵攻から1年を迎える今、正念場を迎えているのかもしれない。
(FNNワシントン支局 中西孝介)