図工や美術の時間、絵筆を洗うための“黄色いバケツ”を覚えているだろうか。イエローカラーだったり、水をためる部分が複数あるのが特徴的だった。
この道具の製造元である、文具メーカー「坪米製作所」(大阪市)が大きな決断をした。2023年3月末で廃業すると、Twitterの企業アカウント(@TSUBOYONE)で報告したのだ。
「お世話になりました」感謝のコメントが相次ぐ
坪米製作所は1949年創業で、鉛筆を削るためのミッキーナイフ、文鎮、パレットなどを製造。

1973年には「H型バケツ筆洗」の製造を始め、形状が異なるシリーズ商品も生まれた。この、バケツ筆洗シリーズがいわゆる、黄色いバケツだ。
1月27日に投稿された今回の報告では、廃業の理由を「諸般の事情」として、「皆様の長年に渡る並々ならぬご愛顧に心から感謝申し上げます」と伝えている。

現在は白色の四角いタイプもあって世代によって感じ方は違うようだが、Twitterでは「たいへんお世話になりました、ありがとうございました。さびしいですね」「筆を水に入れる瞬間大好きだったな」など学生時代の思い出とともに感謝の声が相次ぎ、5万以上のいいねが寄せられた。(2月2日時点)
少子化や原材料の高騰が打撃に
廃業を惜しむ声がある中、今回の決断はどんな経緯で決まったのだろう。黄色いバケツは見られなくなってしまうのか。坪米製作所の担当者に聞いた。
――黄色いバケツの特徴はどのように生まれた?
先代の時代になるので、正確な経緯はわかりませんが、黄色は注意を呼ぶような色として、採用されたと思われます。黄色は交通安全の帽子(通学帽)などにも使われています。形状はさまざまな使い分けができるようにと、種類が増えていきました。

――学校の授業の道具として、採用された経緯は?
こちらも正確な経緯はわかりませんが、昭和時代、学校の授業の道具は同じものにしようという流れになり、(黄色いバケツが)納品されるようになったと思われます。ただ、業者を通じて納品していたので、学校や地域で違うかもしれません。
――そうした中、廃業を決意したのはなぜ?
少子化で需要が減ったこと、原材料の高騰が続いたこと、製造設備の老朽化などが影響しています。コロナで展示会を開くことが難しくなり、絵画を楽しむ人も減ったようにも感じました。

――廃業はいつごろから考えていた?
2022年の秋ごろからです。(無理をすれば)続けることもできますが、先を考えると迷惑をかけてしまう可能性もある。今ならきれいに解散できる。タイミングが来たと思いました。
感謝の気持ちでいっぱいです
――感謝や残念に思うコメントが相次いだ。
ありがたく思います。ノスタルジーを感じられているのかもしれませんね。当社で製造していたことを初めて知った方もいたようなので、社名をもっと出せばよかったのかもしれません。

――黄色いバケツは今後、入手はできなくなる?
以前に発注があったものは業者に納品しましたが、当社にはほぼ残っていません。当社の事業を引き継ぎたいという方もいるのですが、簡単なものではないのでどうなるかはわかりません。バケツに関しては、他社でも似たようなものが販売されていることもあると思います。
――廃業の決断、反響に関連して思うことは?
ありがとうございましたという、感謝の気持ちでいっぱいです。解散して全てが終わります。少子化でしたり、原材料の高騰でしたり、今の日本の国情を反映しているのかもしれませんね。

坪米製作所の商品を購入できる、ホームページは1月末で終了予定だったが、要望に応じて、2月10日までの予定で在庫品限りの最終販売を行っている。最後の機会にのぞいてみてはいかがだろうか。