福岡市の博多駅前路上で女性が殺害された事件。行方をくらましていた元交際相手の男をどうやって見つけたのか。容疑者逮捕へ結びつけたのは、厳しい目を持つプロのアナログ捜査だった。

「別れ」を受け入れられず…

カメラに向かって陽気に自己紹介する男。

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SNS映像(関係者提供):
きょうも元気なすすむちゃんでございま~す。きょえきょえきょえ

2023年1月18日、殺人の疑いで逮捕された、福岡市博多区の飲食店従業員、寺内進容疑者(31)だ。1月16日、博多駅前のビル街で起きた女性殺害事件。手詰まりの状態が続くかと思われた状況は、事件から2日目の18日、急展開を迎えた。

福岡県警捜査1課・有馬健一課長(記者会見 2023年1月18日):
被疑者を確保したときに、本人が所持していたものの中に、刃物がありました。自己中心的な非道な残忍な殺人事件であります

元交際相手で会社員の川野美樹さん(当時38)は、頭、胸、腹など上半身を十数カ所刺され、死因は失血死だった。突然の訃報に川野さんの親戚は…。

川野さんの親戚:
なんのためにやったか知らんけどね。殺しまでせんでよかったのに…。別れた後にストーカーみたいにつけられていたということだね。警察に何回か相談に行ったって

川野さんとの「別れ」を受け入れることができず、付きまとい行為を続けていた寺内容疑者。2022年11月、ストーカー規制法に基づく禁止命令が出されていたにもかかわらず、事件当日も仕事帰りの川野さんを待ち伏せしていたとみられている。

事件が起きる直前、現場近くの防犯カメラ映像には、並んで歩く男女2人の姿が写っていた。黒い上着の男が寺内容疑者、隣が川野さんとみられていて、会話をしているように見える。

時刻は午後6時8分頃。事件はこの5分後に発生した。その犯行直後には、走って逃げる寺内容疑者とみられる男の姿も捉えられていた。

「見当たり捜査員」を動員

事件発生後、捜査本部は、目撃情報や現場に残された指紋などから寺内容疑者を早々に特定し、家宅捜索などを行うも、肝心の行方をつかめきれずにいた。事態が動いたのは、18日午前6時頃。捜査本部の元へ一本の有力な情報が関係者から寄せられた。

「中洲周辺で寺内を見かけた」

犯行現場から1.5km、自宅からはわずか900メートルしか離れていない中洲付近で、寺内容疑者が目撃されたのだ。捜査本部は顔写真などを元に容疑者を探し出すプロ「見当たり捜査員」を動員した。

見当たり捜査員とは、指名手配犯の写真を記憶して日頃から街中で容疑者を探す専門の捜査員のこと。今回は「中州周辺で寺内容疑者を見かけた」という目撃情報を元に、見当たり捜査員が、一帯をくまなく探し、情報提供から約5時間半後、中洲の路上を1人で歩く寺内容疑者を発見した。その際、寺内容疑者は、当時、マスクと黒縁のだてメガネを身に着け、フードを被っていた。

発見現場付近にいた人:
あとからもどんどん来たので(捜査員の人数は)最終的には15人くらい。物々しさが半端じゃなかったので

アナログな捜査が、容疑者逮捕へと導いた今回の事件。寺内容疑者は当時、凶器とみられる刃物1本を所持していたが、抵抗することもなく容疑を素直に認めたという。

福岡県警捜査1課・有馬健一課長(記者会見 2023年1月18日):
川野さんが、きょうが39回目の誕生日ということは認識しておりました。何とかこの日までに被疑者を逮捕したいということは強く思っていたということであります

SNSの投稿からたどる 容疑者の人物像

この寺内容疑者とは一体どんな人物だったのか。

寺内容疑者の元同級生:
地元の番長的な存在だったかなと思います。一番、けんかが強かったという印象

寺内容疑者は大阪市出身。知人の話によると中学時代から髪の毛を金髪にするなど、目立ちたがり屋の一面があったという。

寺内容疑者のSNS(2013年2月15日):
今可愛い後輩と飲みなう!

約10年前、当時21歳の寺内容疑者のSNS。

寺内容疑者のSNS(2013年2月17日):
東京池袋なう!池袋でさ迷い中!わら

2013年2月、寺内容疑者は何らかの理由で大阪を離れ、上京。

寺内容疑者のSNS(2013年3月11日):
レッスンやっとおわったぜい!しかも名刺できたぜい!ススムの時代きたぁー!笑

東京では、いわゆるショーパブで働いていたとみられる寺内容疑者。新しい仕事に就き、前向きな気持ちを投稿し続けた。しかし…。

寺内容疑者のSNS(2013年3月12日):
仕事終わっていろいろみなさん迷惑かけました…本当すいません…

寺内容疑者は何か仕事で失敗したようだ。その後も…。

寺内容疑者のSNS(2013年3月16日):
自分変えるために来たのに変えないとアカンな!本間俺はクズやわ。本間にがんばろ!

寺内容疑者が大阪を離れた理由は、いわゆる“自分探し”のためだったのか。さらに寺内容疑者の投稿は続く。

寺内容疑者のSNS(2013年3月30日):
僕の願い事…東京の友達ほしい。寂しっ!

寺内容疑者のSNS(2013年4月17日):
ここに俺の居場所がねぇわ!

そして東京に来てから1年も経たずして、寺内容疑者は大阪に帰る。

寺内容疑者のSNS(2014年1月26日):
もーえ所詮クズなりに生きたる!

知人らによるとその後、寺内容疑者は大阪のバーなど飲食店で働きだしたという。

寺内容疑者の知人:
(寺内容疑者の印象的は)もうベリーバッド。(勤務先の店は)ぼったくり

そして事件の約2年前…。

寺内容疑者を知る飲食店の店長:
似たような仕事をしたことがあるので僕に任せてください、じゃないけど、強気な感じ

寺内容疑者は1万円だけを持ち大阪から福岡へ。中洲の飲食店グループでアルバイトとして働き出した。

SNS映像(関係者提供):
はい、どうも、今日も元気なすすむちちゃんでございま~す。きょえきょえきょえ

その後、寺内容疑者は同じ飲食店グループで働いていた川野さんと知り合い、2人は交際に発展した。

寺内容疑者が勤務する店の代表:
川野さんは、うちの店には飲みに来たが。(2人の会話は)普通の会話ですよ、博多弁で「なんしようと?」みたいな

しかし寺内容疑者は、互いのスマートフォンに位置情報アプリをインストールするなど、川野さんを束縛。

2022年10月、川野さんは春日警察署に「寺内容疑者に携帯電話を取られた。相手とも別れたい」「別れようと言っても聞かない」などと相談した。これを受けて警察は寺内容疑者に「警告」を行ったが、その後も寺内容疑者は川野さんの職場を訪れるなど、つきまとい行為を止めなかった。

そして2022年11月26日、春日警察署は寺内容疑者に対して、ストーカー規制法に基づく川野さんへのつきまといの「禁止命令」を出したのだ。

寺内容疑者が勤務する店の代表:
警察から身元引受人がいないから来てくれと(連絡受けた)。「もう全然、会わないようにして近寄るな」と、「連絡もするな」と。本人は「分かりました」としか言わない

しかし、禁止命令から51日後、事件は起きた。

凶行を目撃した男性:
私が聞いたのは、きゃーみたいな声だけ。男は全く無言だった

調べに対し寺内容疑者は「間違いありません」と容疑を認めているという。捜査本部は、事件後の足取りや犯行に至る経緯を詳しく調べている。

(テレビ西日本)