エネルギー価格の高騰や円安による物価高が進み、賃上げの行方が注目されるなか、中小企業の賃上げについて厳しい数字が出た。
城南信用金庫が1月10日から13日にかけて、取引先の中小企業738社に対して聞き取り調査をしたところ、「賃上げする予定」と答えた企業は26.8%に留まり、「賃上げの予定なし」との企業は72.8%に上った。

「賃上げの予定なし」の理由については…
「売上げ回復が進んでいないため」(東京・渋谷区/イタリアンレストラン)
「水道光熱費増額の為、あげられない」(東京・世田谷区/公衆浴場業)
など売上げやコスト上昇をあげる声が多い。

一方で、
「大手取引先への価格転嫁交渉が出来ない」(神奈川・相模原市/ガラス加工業)
との声もあった。
中小企業の賃上げには必須である価格転嫁についても厳しい数字が出た。
2022年7月の調査では、価格転嫁が「全くできてない」と「ほとんどできていない」は合わせて41.9%だった。その後中小企業の賃上げのために価格転嫁が重要との声が強まったが、2023年1月の調査では「全くできてない」と「ほとんどできていない」との回答は合わせて32.8%で、1割ほどしか改善しなかった。
岸田総理が「インフレ率を超える賃上げ」の実現を求めるなか、ファーストリテイリングなど大企業は次々に賃上げを表明している。経団連も17日、春闘に向けて「物価動向を特に重視し、企業の社会的責務として、賃上げへの積極的な対応をするよう呼びかけていく」との報告書を公表している。
日本全体で賃上げの機運を高め、景気を底上げするには、働き手の7割近くを雇用する中小企業の賃上げが欠かせない。
しかし今回の調査で、中小企業の賃上げは容易ではない現状が浮き彫りとなった。