東京電力福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣3人に対する、控訴審の判決公判が、午後2時から開かれた。東京高裁は、1審の東京地裁と同様に、無罪判決を言い渡した。

強制起訴されたのは、東京電力の元会長・勝俣恒久被告(82)、原発担当で、いずれも副社長だった武黒一郎被告(76)と武藤栄被告(72)。2011年3月の福島第一原発事故をめぐって、巨大な津波の襲来を予測できたのに、必要な対策を怠り、事故を招いたとされ、その結果、避難を余儀なくされた双葉病院(福島・大熊町)の患者ら44人を死亡させるなどした罪に問われた。

3人とも無罪を主張していて、1審の東京地裁は、2019年9月、3人に無罪判決を言い渡した。

審理のポイントは2つ。①巨大津波の襲来を予想できたか(予見可能性)、②津波を予想できたとして、対策を講じれば、事故を防ぐことができたか(結果回避可能性)。

①について、政府の機関が2002年に発表した地震予測「長期評価」に基づき、東電子会社は2008年、福島第一原発に、最大15.7メートルの津波が押し寄せるとの想定を試算していた。この「長期評価」が信頼できるものかどうかが、裁判での最大の争点。

2019年の判決で東京地裁は、①について、「地震発生の具体的な根拠が示されておらず、専門家なども疑問を呈していた。信頼性、具体性に疑いが残る」として、巨大津波の襲来を予見できなかったと判断した。

また、②についても、事故を回避するためには「原発を停止するしかなかった」と指摘。その上で、「対策工事を実施し、それが完了するまで、原発を停止するべき法律上の義務はなかった」とした他、原発を停止するほどの「予見可能性があったとは認められない」と判断し、結果回避可能性についても否定していた。

社会部
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