神奈川県平塚市の自宅に、自分の両親の遺体を放置した疑いで、同居する50歳の息子が逮捕された事件。「家庭内暴力」が背景にあるとされるが、息子の父親に対する異常なまでの”憎悪”も垣間見える。

新谷嘉朗容疑者(50)が逮捕され、きょう送検された。取り調べを受けている神奈川県警平塚署を出る嘉朗容疑者は、報道カメラに気づくと、少し驚いた様子を見せた。

この事件は、今月13日午後、平塚市撫子原の住宅で、この家に住む新谷哲男(76)さんと、妻の清子さん(75)の遺体が見つかったもの。知人が、新谷さん夫妻と連絡が取れないことを不審に思い、近くの交番に相談。

送検される新谷嘉朗容疑者(50)(16日 平塚署)
送検される新谷嘉朗容疑者(50)(16日 平塚署)
この記事の画像(12枚)

駆けつけた警察官が、住宅から、新谷さん夫妻の遺体を見つけたという。県警は、2人の息子である嘉朗容疑者が、何らかの事情を知っているとみて、行方を捜していたところ、翌14日、静岡県内で発見したという。

嘉朗容疑者は、車を使って、静岡県まで移動していたとみられ、発見当時は、1人だったとのこと。嘉朗容疑者は2人と同居しているが、調べに対して、「遺棄はしていない」と容疑を否認している。

新谷さん夫婦の遺体が見つかった住宅(15日 神奈川・平塚市)
新谷さん夫婦の遺体が見つかった住宅(15日 神奈川・平塚市)
2階建ての住宅で、新谷さん夫妻は、息子の嘉朗容疑者と同居していたという。
2階建ての住宅で、新谷さん夫妻は、息子の嘉朗容疑者と同居していたという。

これまでの取材によると、この家族をめぐっては、「家庭内暴力」が絶えなかったことが分かっている。去年10月から今年9月にかけて、新谷さん夫妻から平塚署に対して、合わせて6回、相談が寄せられていた。

いずれも「息子に暴力を振るわれた」「息子が暴れている」という内容だった。しかし、警察官が自宅に駆けつけるも、2人は、嘉朗容疑者からの暴力がおさまると、事件化することを望まなかったという。

このため、平塚署は、嘉朗容疑者に対して警告をした上で、高齢者虐待防止法に基づき、平塚市に通報。これを受けて平塚市では、この家族に対して、相談支援を行い、合わせて22回やり取りをしていたという。

新谷さん夫妻は、合わせて6回、息子から暴力を振るわれたとして、平塚署に相談を寄せていた(SNSより)
新谷さん夫妻は、合わせて6回、息子から暴力を振るわれたとして、平塚署に相談を寄せていた(SNSより)

近所の人も取材に対して「(現場の自宅)から怒鳴り声が聞こえた。男の声で『こっちに来るんじゃねえ』と叫んでいた」「女性の声で、『キャー』『やめて』という叫びが聞こえた。暴力を振るわれているのではないかと思った」などと話していた。

司法解剖の結果、新谷さん夫妻のの死因は、首を絞められたことなどによる窒息死と判明。殺害された可能性が高い。県警は、嘉朗容疑者が、2人の死亡に関与していないか調べるとともに、日常的な「家庭内暴力」との関連も捜査する方針。

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(12枚)
社会部
社会部

今、起きている事件、事故から社会問題まで、幅広い分野に渡って、正確かつ分かりやすく、時に深く掘り下げ、読者に伝えることをモットーとしております。
事件、事故、裁判から、医療、年金、運輸・交通・国土、教育、科学、宇宙、災害・防災など、幅広い分野をフォロー。天皇陛下など皇室の動向、都政から首都圏自治体の行政も担当。社会問題、調査報道については、分野の垣根を越えて取材に取り組んでいます。