今、世間は第4次焼き芋ブームの真っ只中。“お芋スイーツ”として人気店は個性を磨き、他とは違う戦略を打ち出している。それぞれのお芋戦略を仕掛ける京阪神の人気店を取材すると、お芋スイーツのこれからが見えてきた。

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「お芋スイーツ」が進化

秋の味覚の定番、焼き芋。最近はサツマイモを使ったスイーツが多彩になり、インスタグラムでは「#芋活」で2万件以上がヒットするほどだ。

元々は戦中戦後の食糧難をしのぐために重宝されたサツマイモ。昭和の時代には落ち葉で焼いたお芋さんを子どもたちは喜んで頬張っていた。

そんな中、お芋スイーツの先駆者として早くからキャラ立ちを果たしたのが、大阪発祥の「らぽっぽ」。1987年に1号店が開店した後、駅構内を中心に店舗を拡大。ポテトパイやスイートポテトの甘い香りで知られる人気のお芋スイーツ店になった。

「日本一」の看板

そんな先駆者に追い付けと言わんばかりに次のキャラ立ちを目論む、お芋スイーツ店。

まずは神戸発祥、日本一の栄光を勝ち取った「神戸芋屋 志のもと」へ。この秋、カフェスペースを併設した店をオープンしました。

2年前に見事「全国やきいもグランプリ」で優勝し、その後のイベントでは毎回長蛇の列。“日本一”という揺るぎないブランドを活かして全国にフランチャイズを展開。

今では東京も含めて全国6店舗、来年は20店舗に拡大予定だ。そんな「志のもと」だからこそできるキャラ立ちの新メニューが…。

神戸芋屋 志のもと 野元篤志代表:
焼き芋3種食べ比べと焼き芋専用茶のセットです。こちらから、焼き芋専用芋の「極(きわみ)」。芋好きが最初に行きつく芋って言われてます。そして日本一をとったシルクスイート、あと変わったお色のものが安納黄金です

多い日には1つの店で500本も焼き芋をつくるため、全国の農家から「ぜひ自慢のサツマイモを使ってほしい」という依頼が殺到。その強みを生かしてできたのが、選りすぐりの品種を少しずつ味わえる食べ比べセットだ。

薄田ジュリアキャスター:
(食べて)甘っ。ザラッとしたプリンみたいな感じです。食べ比べることでそれぞれの良さも発見できるし、食べていて楽しいですね

野元さんは日本一には満足せず、水面下で準備が進んでいるという「世界焼き芋グランプリ」にも照準を合わせ、さらにその先を思い描いているそうだ。

神戸芋屋 志のもと 野元篤志代表:
焼き芋のテーマパークをやろうと思っています 芋掘り農園があって、カフェがあって、バーベキューでお芋が焼けて1日家族で遊べるお芋のテーマパークです。もう土地探しに入ってます

 世界中から「志のもと」の焼き芋を求めて、観光客が押し寄せる日が来るかもしれない。

“高級感”で勝負

続いて大阪。高級食パンでブームを巻き起こした「乃が美」の創業者・阪上雄司さんが、今年6月から「高級芋菓子しみず」の経営トップに就任。

新しい店を次々とオープンさせつつ、1店舗あたりの売上も半年で3割アップと、その手腕を発揮している。

11月にオープンしたばかりの店内。客の視線の先には、彩り鮮やかなスイートポテト4種食べ比べや、プリン、テリーヌなど。次々と売れていくスイーツは紙袋に入れられて客の手に。高級食パン「乃が美」でもよく見た光景だ。

薄田ジュリアキャスター:
店舗展開するにあたって、芋の大量仕入れが大事になりますよね

高級芋菓子しみず 阪上雄司会長:
そうなんですよ。特に今本当にお芋が少なくて、なかなか確保ができないので生命線だったんですね。そこでお芋の種類だけでも5種類全てペーストにしています。農家さんが大切に育てたお芋をペースト状にすることによって、このビジネスの可能性があるんです

大量のサツマイモをたくさん取れる時期にペースト状にして保存し、様々なスイーツに活かすことで手土産需要に対応。さらにこだわっているのは値段の付け方だそうで…。

高級芋菓子しみず 阪上雄司会長:
例えばスイートポテトとかそういうものは、やはり持って行っていただいた時に喜んでいただけるというような、イメージと価格設定とパッケージ。「いいものをいただいた」と思っていただけるように、そういう商売の戦略で攻めていきたいなと

カギは「地産地消」

 神戸の「日本一」戦略、大阪の「手土産」戦略ときて、最後は京都、一味違う「地産地消」がキャラ立ちのキーワードだ。

創業わずか2年目にして焼き芋グランプリ準優勝を果たし、京都河原町の一等地に店を構える「京都芋屋 芋と野菜」。ショーケースには、断面を大きく見せた焼き芋が蜜たっぷりのねっとり感を主張している。

この焼き芋を開発したのが、地元・京都出身の中村さん。

京都芋屋 芋と野菜 中村佑社長:
今、大変貴重な「あかねこまち」という京都産のお芋を使っています

じっくり焼いた京都産のお芋は…。

薄田ジュリアキャスター:
めちゃくちゃ甘い!

京都芋屋 芋と野菜 中村佑社長:
京都でサツマイモ農家をするのって無茶苦茶大変なんですよ。土作りから始めないといけないし

実家が農家で、農業の苦労を知る中村さん。知人の紹介で京都府南丹市の若手農家と出会いました。地域おこし協力隊で3年前に移住してきた吉田宙斗さんです。

たまたま地元住民から使っていない畑を任され、サツマイモの栽培を試してみたところ、意外にもうまくできました。

吉田宙斗さん:
やってるうちに色んな人から畑を借りてくれとか、もっとやってくれっていう話をいただきまして

京都の土に合ったお芋を作りたいと品種改良を重ねたところ、大きな形が揃い、発色もいいお芋に成長。「芋と野菜」の中村さんの目にとまり、今年から京都発の地産地消ブランドとしてキャラ立ちを目指している。

吉田宙斗さん:
一般の人は紅はるかのほうが知ってるし、紅はるかを食べようと普通やったらなるところを、芋と野菜さんみたいに焼き芋を作るプロに売っていただくことで、お互いに相乗効果があるんじゃないかと思っています

今年は約1トンの収穫でしたが、来年は5倍以上を目標に、今後も地産地消のパートナーとして力を合わせていくとのこと。

京都芋屋 芋と野菜 中村社長:
京都の硬い土、その中でも豊かに育ってくれる新しいサツマイモを使って、もっと京都を盛り上げていけたらなと思っています

京都、大阪、神戸、三者三様のお芋スイーツ。独自の戦略でサツマイモという身近な食材を一段上のステージへと押し上げている

 (関西テレビ12月6日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)

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