新米のおいしい季節に、米作りが盛んな東広島市であるコンテストが開かれた。その裏には、日本人の主食「米」を支える生産者らの思いや努力と、それをサポートする世界的な精米企業の技術力があった。
エントリー数140の頂点に立つ米は?
東広島市で、地元産の米の食味向上などを目的に開催された「第2回 ぶちうまいお米コンテストin東広島」。”ぶち”とは広島弁で”とても”の意味で、農家などが新米のおいしさを競うコンテストだ。
この記事の画像(21枚)エントリー数は約140点。「コシヒカリ」「ヒノヒカリ」、そして近年注目を集める「恋の予感」などの品種が並んだ。
1次、2次の審査を経て最終審査に残ったのは10点。11月17日に最終審査が行われ、今回が初出品という荒谷尚輝さんの「恋の予感」が最優秀賞に選ばれた。
(Q.どういう点が評価されたと?)
最優秀賞受賞・荒谷尚輝さん:
自分では全く想定外のことだったので、何でかなというのが一番の気持ちで驚いています
肥料を工夫するなど地域で切磋琢磨
最優秀賞の荒谷さんは東広島市西条町田口で米作りをしている。米作りのキャリアは30年以上になるが、サラリーマンでもある兼業農家だ。コンテストに出品した「恋の予感」を、この土地で2022年に初めて栽培した。荒谷さんの田んぼには、どんなおいしさの秘密があるのだろうか。
荒谷尚輝さん:
この土地に合った肥料を追加してみたらというアドバイスを受けましたので、そこが1つのポイントだったのかなと思います
荒谷さんの友人で近くに住む近藤諭史さん。実は、近藤さんの「恋の予感」も今回のコンテストで上位10位までに入賞している。同じく兼業農家で、米作りを始めて2年目で手にした栄冠だ。この2人、中学校の同級生なんだとか。
近藤諭史さん:
田んぼも家もすぐ近くなので、今日何をやっているのかということがお互いに分かるし、トラクターとかコンバインの機械が走っているスピードや止まっている時間も分かるから
(Q.荒谷さんをウオッチングしていた?)
近藤諭史さん:
ウオッチングしています
荒谷尚輝さん:
ストーカーされていたなんて、今初めて聞きました
そう言って笑い合う2人。地域で切磋琢磨しながら、おいしい米は作られている。「良い米を作りたい」…その上で意外な問題があった。
近藤諭史さん:
みんながおいしいと言ってくれるが、他と比べて本当においしい米かどうか分からない…
米を買って他と食べ比べることがほとんどない生産者には、客観的な“おいしい”が分かりづらいのだという。
米の成分や形、ご飯の”食感”も測定
そんな生産者を支える技術がある。世界的な精米企業「サタケ」は”おいしさを見える化”することを可能にした。
「米粒食味計」は、タンパク質や水分など米粒の成分を測定し、おいしさを数値で表す機械。
サタケ穀物研究チームリーダーで工学博士の藤田明子さんに計測の様子を見せてもらった。米粒を機械へ入れると、画面に結果が表示される。
サタケ 穀物研究チーム リーダー・藤田明子さん:
100点満点中の78点なので高得点の方だと思います。70点以上の米はおいしいと言えます
そして、こちらは米粒の外観品質を分析する「穀粒判別機」。米粒の表、裏、側面の3面をチェックできる機能はサタケならではの技術だ。
サタケ 穀物研究チーム リーダー・藤田明子さん:
こちらが測定結果です。完全粒が97%、約3%以外はきれいな形の米粒だということで、この点数も高い方になると思います
さらに、ご飯のおいしさで大切な”食感”。
炊いたご飯の硬さや粘り、弾力性などを”見える化”する測定器もある。
サタケ 穀物研究チーム リーダー・藤田明子さん:
食感は硬さと粘りで言えると思います。硬すぎても粘りすぎてもいけないということで…
「数値で見える」ことで”やりがい”に
サタケの機械は今回のコンテストの審査でも活躍した。
サタケ 穀物研究チーム リーダー・藤田明子さん:
2次審査では炊いたご飯を食べる食味パネラーの結果もありますが、この測定器で測った値を順位付けして結果を算出しました
”おいしさ”が目に見えるということは、生産者にとって励みでもある。
近藤諭史さん:
「今年はうまくいった」「悪くなった」というのが数値で分かるので面白い。それもやりがいになってくるのではないかと思いますね
サタケ 穀物研究チーム リーダー・藤田明子さん:
点数がいい悪いではなくて、今年作った米が何点だったので来年はどのようにしたら点数が上がるかなど、そういったところで生産者の励みになればいいと思っています
日本が世界をリードする米作りの技術は味や食感を数値で測れるまでに進歩した。しかし、生産者の努力は計り知れない。おいしいご飯は、多くの人たちの”見えない頑張り”に支えられている。
(テレビ新広島)