厳しい「ゼロコロナ政策」が続く中国で、国民の不満が爆発している。各地でデモが行われ、“白紙を掲げる”抗議も。政権を揺るがす事態となるのか。
北京で、上海で…求められる“自由”
首都・北京で、27日夜から28日未明にかけて集まった数百人の市民。“表現の自由”を象徴する白い紙を持ち、「PCR検査はいらない。自由がほしい」などと訴えた。
こうした市民の“不満”の背景にあるとみられているのが、11月24日に新疆ウイグル自治区のウルムチのマンションで10人が死亡した火事。死者が出たのは過度なコロナ対策によって消火や救助が遅れたためと、ネット上で指摘する声が広がっていた。
半年前、餓死する人が出かねないほどの危険な行動制限を経験した上海市民も、この火事に反応。上海の「ウルムチ」という名がついた通りで、新疆ウイグル自治区の犠牲者を追悼しました。
“コロナ対策によって犠牲者が出る”という本末転倒の政策に悲しみが広がり、26日の夜には、「習近平は退陣しろ!」と異例の政権批判まで飛び出す事態になった。
27日の夜にも集まった人々が歌ったのは、中国の国歌。「民族最大の危機」「最後の雄たけび」といった歌詞が含まれています。
彼らが掲げていた紙には、「あなたたちがたとえオスの鶏を殺しても、やはり夜明けはやって来る」といった内容が。朝になると鳴き声を上げる「オスの鶏」が、「政府に抗議の声を上げる人たち」を意味するとすれば、「それでもやってくる夜明け」とは、どのような未来を指すのか。
この記事の画像(9枚)「天安門事件以来見たことがない」
中国政治に詳しいジャーナリストの近藤大介氏も、「習近平やめろ!」「共産党退陣!」といった表現を中国国民が使うのは、天安門事件以来見たことがないと話すほどの事態になっている中国。
27日に、上海の抗議の様子を取材した関西テレビの特派員に、詳しく話を聞いた。
(Q:抗議を間近で取材した感想は?)
森雅章 上海支局長:
26日の夜に抗議活動が行われたので、27日も、また人が集まっているかもしれないと思い現地へ向かいました。地下鉄の駅から地上に上がるとすぐに抗議の声が聞こえたので、そのまま取材しました。私は2年以上上海にいますが、ここまでの抗議活動は初めて見たので、非常に驚いています
(Q.BBCの記者が暴行を受けて拘束されたという話も…最新情報は?)
森雅章 上海支局長:
つい先ほど、中国側の反応が入りました。中国側はBBCの見解に違いがあると指摘しています。具体的には、取材記者が外国の記者であることを示していなかった、また現場で退避を勧告したものの記者が拒否したため、退避させたまでだと主張しています
(Q.抗議の参加者はどんな人たち?)
森雅章 上海支局長:
私が見た感じでは、若い人たちが多かったです。上海市民は春先に60日以上の封鎖生活を余儀なくされたので、その不満もあって、今回気持ちが爆発したような印象です
(Q.不満は市民全体に広がっている?)
森雅章 上海支局長:
はい、普段、上海市民はこういった荒々しい行動をあまりしません。今回これが具体的な動きとなったということは、市民の間で広く“ゼロコロナ政策”に対する反発心が広がっているように感じます
(Q.“ゼロコロナ政策”だけではなく、政権や共産党への批判の声も上がっている?)
森雅章 上海支局長:
1日目の抗議の様子とされる動画には、「習近平国家主席」や「共産党」の退陣を求める声も記録されていました。私が取材した現場では、“無言の抗議”を示す白紙を掲げる人の姿が多く見られました。また、特に印象的だったのは、「自由」と書かれた紙をうつむきながら掲げていた若者の表情でした
(Q.この抗議は今後も続きそう?)
森雅章 上海支局長:
その辺りははっきり分かりません。ただ、今日28日の朝も現場を見に行きましたが、周辺にはかなり多くの警察車両が配備されていました。また警察官も立っていたので、今後は抑止力がかなり強まりそうな予感がしています
”抗議”の先にあるものは
中国政治に詳しい近藤大介氏は、すでに「習近平国家主席vs.14億の市民の構図」になりつつあると指摘する。今は“ゼロコロナ政策”に向いている怒りの矛先を当局がこのまま放置すると、「自由」や「民主主義」、政権転覆を求める動きにもつながりかねないということだ。
それを避けるため、中国政府が“ゼロコロナ政策”を転換することもあり得るのではと、近藤氏はみている。
習近平国家主席が政策を転換する可能性について、関西テレビの神崎デスクは…
関西テレビ 神崎博デスク:
中国としてはこのまま全土に抗議の声が広がって、それに耐えきれなくなるというのを恐れると思います。習政権は「間違いだった」と認めたくないと思いますが、たとえば専門家会議などの科学的データを示して、新しい形に。「間違いではなかったけど新しい形に変えますよ」と“ゼロコロナ政策”を軟着陸させる可能性はあるのかなと思います
(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月28日放送)