舗装されていない起伏の激しいオフロードをバイクで疾走するモトクロス。そのモトクロスの日本最高峰のクラスで今シーズン、年間王者に輝いた石川県金沢市出身のプロモトクロスライダー、富田俊樹選手のすごさに迫る。
この記事の画像(32枚)オフロードを約100キロで疾走!迫力満点のモトクロス
起伏のある舗装されていないコースを約100キロのスピードで勢いよく走るバイク。そんなバイクを自在に操り全日本モトクロス選手権の日本最高峰クラスで年間チャンピオンに輝いた選手がいる。
金沢市出身、富田俊樹(とみたとしき)選手。ヤマハファクトリーレーシングチームに所属し、現在は、愛知県を拠点に活動している。
モトクロスは起伏の激しい舗装されていないコースを走るモータースポーツの一つ。30分間でコースを周回し、どれだけ速く走れるかを競う。
富田 俊樹選手:
30台一斉スタートなんですよ。ジャンプも30メートルくらい跳ぶし、数メートルの距離で観戦もできるので、迫力があると思います。
1991年1月生まれの富田選手。父親の影響で5歳の頃、モトクロスを始めた。
小学校低学年の頃からレースに出場。週末には父と共に関西や関東で開かれる大会に出るため遠征を繰り返していたそうだ。
富田選手の父 富田誠幸さん:
バイクばっかりやね、バイクばっかりやった。
富田選手の父、誠幸さん。実は誠幸さんも、元モトクロスライダー。富田選手につきっきりでモトクロスを教えたそうだ。
富田選手の父 富田誠幸さん:
小学校の2、3年ぐらいからずっと遠征ばかりだったから。週末連れて行って、土曜日練習して日曜日大会して帰ってきて、夜中にうちについて、朝、月曜日仕事行く者と学校行く者と分かれてって…
中学生で近畿選手権ジュニアクラスチャンピオンとなった富田選手。22歳でIA2という若いライダーが多い250ccのクラスで年間王者となった。
IA2チャンピオンとなり本場・アメリカに進出
タイトルをひっさげ、2016年、25歳で世界最高峰とされるアメリカのAMAモトクロス選手権に参戦。そこで大きな挫折を経験する。
富田 俊樹選手:
アメリカでやっぱり夢の舞台にチャレンジしたいって気持ちが、IA2でチャンピオン取った後にそういう気持ちが芽生えてきて。自分がその世界でどのぐらい通用するのかなっていうのを確認したかった。
富田 俊樹選手:
ただ行ってすぐ、けがしちゃったんですよ、ちゃんと勝負できないままけがして…
アメリカで3つのレースを終え、次のレースに向けて練習をしていたさなか、ジャンプの際に、転倒。腰の圧迫骨折と膝の靱帯を切る大けがをして1シーズンを棒に振った。
富田 俊樹選手:
このまま終わってもなっていうのがあって、もう一回チャレンジしたいなていう気持ちでやりました。
一時は引退も頭をよぎったというが、一念発起。モトクロスの本場で4シーズン戦い、最高13位となった富田選手は、おととし帰国。
日本最高峰のIA1クラスにエントリーすると2シーズン連続で2位と、チャンピオンにあと一歩まで迫っていた。
そんな富田選手、今シーズンにかける思いはこれまでで最も強いものがあったと言う。
今シーズンにかける思い…妻と子供のためにも
富田 俊樹選手:
新婚なんで、新婚生活中なんでまだ…。きょうはですね、コロッケと卵焼きとほうれん草とウインナーです。
実は富田選手、今年1月に結婚したばかり。7月には第一子も生まれた。
富田 俊樹選手:
やっぱり、いままで一人だったりしたときは、別に稼げなくてもっていう考えになっていたかもしれないなって。でもやっぱり今は2人、飯を食わせないといけないっていう、使命感も出てきたし。やっぱりけがはできないなっていうのもあるし。ぼくが崩れたら2人も苦しむっていうのも感じるし…。いろいろな面で力になっていると思います。
そんな思いで臨んだ今シーズン。4月の開幕戦で総合1位と幸先の良いスタートを切ると…
その後もコンスタントにポイントを稼ぎ、第5戦で再び総合1位を獲得。
次の第6戦では、あと1戦を残して見事、シリーズチャンピオンに輝いたのだ。
11月13日に行われた最終戦も総合1位となり有終の美を飾った富田選手。シーズンを終えてようやく実感が湧き始めたという。
富田 俊樹選手:
最終戦勝てずに終わったらダサいなって気持ちがあって。そこが終わるまでは気が抜けないなっていうのがあって、それまでは実感は特になかったですね。最終戦も終わって、いろいろな人から「おめでとう」ってメッセージもらったりとか…。やっと(年間チャンピオンを)取ったんだなという感じが出てきています。
ここは富田選手が所有するガレージ。モトクロス以外にもいろいろなものが飾ってある。
今年31歳になった富田選手。最前線で活躍する一方、競技の知名度向上に力を注ぎたいと話す。
富田 俊樹選手:
(モトクロスを)見たことない人がほとんど。モトクロスをしているって言ったときに「岩のぼるやつ?」って言われるくらいマイナーなスポーツ。もし世界で活躍するような強い選手がいたら、メディアでも取り上げてもらえるじゃないですか。来年、再来年以降もチャンピオンとって強い、つよいライダーになりたいですね。速くて強い。
圧倒的な強さを誇るライダーを目指し富田選手の挑戦は来シーズンに続く。
(石川テレビ)