小池知事が特別顧問を務める知事与党「都民ファーストの会」。 2017年、結党直後の都議会議員選挙では、「小池旋風」を追い風に、127議席中55議席獲得し圧勝。しかし、その後は、党運営への不満から離党者が相次いだほか、所属議員のひき逃げ事件、去年の都議選を経て、現在は27議席まで減少し、最大与党から第二党に転落した。
また、夏の参院選では、代表だった荒木千陽氏が出馬するも、落選して代表を辞任。これを受けて行われた代表選だったが、結局、立候補したのは森村隆行都議だけ。その森村都議が、きょう、無投票で新代表に選出された。

複数の立候補者が名乗りを上げて、議論を戦わせれば、都ファをアピールする絶好の機会だったはず。実際、そんな”流れ”となる見通しだった。しかし、”無風”の代表選となったのには、それなりのワケがあったという。今回、森村新代表と、出馬を見送った”ライバル”成清梨紗子都議に、話を聞くことができた。
森村隆行・新代表
1973年生まれ49歳 東京大学経済学部卒業後、伊藤忠商事、プルデンシャル生命保険に勤務 2006年から保険見直し本舗にて取締役。2017年に都議会議員初当選。2期目。妻、1男1女の4人家族
成清梨紗子・都議
1989年生まれ33歳 東京大学経済学部卒業後(在学中に公認会計士試験合格)あずさ監査法人に勤務 2017年に都議会議員初当選。2期目。夫、1男1女の4人家族。
“ライバル”は16歳下の女性都議
森村新代表:自分じゃなきゃどうしても駄目かどうかはわからないのですが、企業経営ですとかNGOの経営などに関わってきた実績がありますので、地域政党の中でも、同じようにその手腕を発揮することができるんじゃないかと。

森村新代表は、出馬のワケをこう話す一方で、断念した成清都議は・・・
成清都議:都議団で最年少で、家庭もあり、全く考えていなかったところで「天命だと思ってやってくれ」みたいな話をいただいて。もしかしたら、これ私の仕事の中でめぐりあわせなのかもしれない、と思って立候補に向けて準備をしていました。

当初、水面下で、出馬の準備を進めていた二人。しかし、お互いが出馬準備をしていることが分かってからは電話、メール、対面で議論を重ねてきたという。
この点については、森村新代表は、「『何で成清さんと戦っているんだろう?』っていうですね、ちょっと悲しさの方が強かったので」と話し、代表選出馬について“ライバル”女性都議と議論を戦わせる日々に悲しさを感じていたという。
これに対して成清都議は 、「知事与党の中で、選挙というところに皆さんのリソースを裂くより、私の思いを森村さんに預けて、党一丸となって行った方がいいんじゃないかという決断に至りました」 と、“合理的”に出馬を断念しことを打ち明けた。代表選に向かう2人のスタンスには、若干、「違い」があったようだ。
小池知事の携帯番号は「知らず」
「携帯の番号も特段知らずにきましたので・・・。直接お電話する用事もなかったですし」 。森村新代表は、代表選出馬について特別顧問である小池知事に全く相談しなかっただけでなく、小池知事の携帯電話の番号すら知らなかったという。

森村新代表:小池百合子という政治家に憧れて、前職を辞めて飛び込んできたっていうところがあるんですね。そういう意味では、師匠と弟子みたいな感じのイメージなんです。私とすれば。(小池知事に対しては)少しやっぱり緊張感がある、緊張しますよね。それは個人の立場ではそうなんですけど、やっぱりその代表という職責を与えて頂いたらですね、そういうこと言ってる場合ではありませんので。一生懸命、追いつこうとしますけど、頑張りますっていう感じでしょうか。
小池知事との”関係”について、このように語った森村新代表。今後は、代表として、小池知事と“密に”連絡を取るため、携帯番号を教えてもらったという。
必要性なければ会いたくないかも・・・
成清都議:日頃からコミュニケーションを取ってるかと言われると、確かに、私も別にコミュニケーション取っていなくて、ただ、地元の会合に来ていただいた時に、メッセージを入れたり、そのぐらいにとどめめています。
片や、成清都議も、5年前の初当選当時から、小池知事の携帯電話にメッセージを送るなどしていたものの、それほど”密接な”間柄ではなかったそうだ。

成清都議:小池さんの印象というと、やっぱり、レベルが上の政治家の人なので、会うと緊張しますし、必要性がなければそんなに会いたくないかも・・・。必要性があれば会いますけど、何でもない時に、一緒にランチしたいですかって言われたら、「あ、大丈夫です」みたいな感じです。
前代表の荒木千陽氏は、小池知事が国会議員時代の秘書で、小池知事の自宅で同居をしていた時期もあった。小池知事との「近さ」が、荒木氏にとっての「求心力」となっていた面もある。そんな荒木氏と比べると、小池知事との「距離感」は、森村新代表、成清都議ともに対照的だ。
「握った手は離さない」
これまで都民ファーストの会を離党した議員たちからは、「党運営が悪い」「風通しが悪い」といった声が、少なからず上がっていた。この点について、森村新代表は、経営者としての経験をもとに、次のように語った。

森村新代表:関係が悪いと、まず思考がおかしくなり、思考がおかしくなると行動に反映されるという悪循環が起こる。まずは、お互いに目配り、気配りして、サポートし合える環境作りをしていきたい。所属してるメンバーの、ポテンシャル、能力を、どれだけ引き出すことができるか。それを形にして、都民のために届けることができるのかっていうのが、非常に大きな仕事の一つだと思います。少なくとも私自身はですね、「一度握った手は離さない」というつもりでおります。
一方で、今後、どのような政策を進めたいかについて問うと、「まずはマネージメントに徹する」と、いかにも”経営者的”な答えが返ってきた。
裏切られたら「暴れます」
成清都議:(期待を裏切られたら)その時はね、暴れますね。ちょっと詰め寄らないといけないですね。森村さんに。
代表選への出馬を見送った成清都議は、新体制で、何らかの役職に就く見通しだが、森村氏の党改革に期待するとともに、厳しく監査していく姿勢を見せている。

一方、小池知事は、森村新代表について、「経営者でもあることから、ガバナンスや、人への対応など、非常に有能」と評価するとともに、「国に先駆けた政策をまとめながら発信」していくことへの期待感を示した。
”無投票”の新代表が、小池知事とどのような都政を作りあげていくのか。コロナ感染者が大きく増加傾向となる中、手腕はすぐに問われることになる。
(フジテレビ社会部・都庁担当 小川美那)