日本はへこんでいる
「何のランキングを見ても日本はへこんでいますね。内弁慶で、ひきこもっている。国として」この1年で5回目の海外出張となるロンドンでこれまで以上に語気を強めて話した小池知事。2月1日から2泊4日の今回の出張のテーマは「金融」と「観光」だ。

金融については去年9月、イギリスのシンクタンクZ/YEN Groupが、最新の国際金融センター指数のランキングを公表。東京は大きく順位を落とし16位、アジア内でも中国の各都市やソウル等に抜かれて7位まで後退。東京の順位低下に特定の要因は見当たらないということで、理由として「パンデミック後の消費活動の戻りが相対的に緩慢なこと」「水際対策の継続により、ビジネスの通常状態への回帰が遅れたこと」が挙げられている。
観光については、森記念財団の「世界の都市総合力ランキング」によると1位ロンドン、2位ニューヨークに続き、東京は3位となっているが、2021年から2022年にかけて全6分野中4分野で順位を落とし4位のパリに僅差に詰められた。航空便の運航の回復が比較的遅く『航空キャパシティ』、『外国人受入実績』のスコアが下落したとのことで、金融、観光とも、コロナの影響が他の都市より大きく長く続いていることがよみとれる。
日本で成功すればどこでも成功できる
「日本は世界第3位の経済力、約 13 兆ポン ド(2,000 兆円)を超える個人金融資産を有しています。成熟した都市インフラ、確固たる法の支配、 安定した社会秩序を備え、金融が発展していく最高の舞台と言えましょう」と小池知事はロンドン金融関係者へのスピーチで強くアピール。

さらに前駐日イギリス大使が「2000兆円のうち半分は預貯金なので投資ができる」と続けた。実際に日本でビジネス経験がある外国人金融関係者からは「日本は非常に精密な作業が出来る国」「安定した国で自然もある」「コストは安い」「家族が喜ぶ環境」など肯定的な意見が出された一方で、「日本の意思決定の遅さ」「日本人は非常にうるさい消費者」などの否定的な見方も出たが、最後は「日本で勝つということは次の成長につながり、日本で成功すればどこでも成功できる」との声があがった。
見えない壁は・・・医療、学校、LGBTQ
小池知事が力を入れているのが、地球温暖化対策や再生可能エネルギー等、環境問題の解決に向けた取り組みに特化した金融「グリーンファイナンス」だ。
都はグリーンファイナンスに取り組む企業に対し4年間継続して人件費、オフィス賃料、器具設備購入費、コンサル費用など最大1億2500万円を補助する制度を去年創設。外国企業には難しい口座開設や会社の登記などきめ細やかな対応もあり、これまでに48社から申込があり、6社の支援が決まった。

小池知事はロンドンで、蓄電池を主な投資対象とするファンドの創設を表明。
「向こうには見えて、こちらには見えていない」
受入体制を整える一方で、海外からは日本へのビジネス進出には“見えない壁”があると言われ続けている。小池知事は、外国人から見える壁が日本人には見えていない、と指摘。その“壁”の原因を医療、学校、LGBTQとして、こういった面での環境整備も行う考えだ。
小池流トップセールスの結果は
「(観光客が)東京を思いつかないと実際の行動につながらない」
東京が忘れられることへの危機感だろうか。こう話した小池知事は、現地のメディアむけセミナーで東京観光の魅力をPRしたほか、閉園した「としまえん」の跡地に今年夏からイギリスが舞台の「ハリー・ポッター」の体験施設が運営するワーナー ブラザースの幹部と「新たな東京の観光名所」にするべく協力していくことを確認。さらにイギリスの公共放送局BBCの会長とも面会した。

小池知事はロンドン滞在中に3回のスピーチと9回の面会をしたが、その多くは天気の話から入った。
「Thank you for arranging such a nice weather(とても良い天気にしてくれてありがとう)」天気の話しをすると笑いが起きる。
また、スシテックトーキョー( SusHi Tech Tokyo= “Sustainable High City Tech Tokyo)と銘打った都市課題解決のアイデアについて話していた際には、静かな会場に向かって笑いを求めるかのように「sounds delicious isn't it?(おいしそうに聞こえるでしょ)」と話しかけた。

「あったりまえの話しですよ」スピーチの際に「笑いをとる」ことを心がけているのか聞くと、驚いた顔でこう答えた。
今回の出張で「トップセールスをする」と言っていた小池知事。“最も売れたもの”を問うと「やっぱり東京ですね」と。
小池知事のトップセールスは成功したのか?答えは今後の経済データに如実に現れることになるだろう。
(フジテレビ社会部・都庁担当 小川美那)