この秋はさまざまな物やサービスの価格が高騰していて、11月も833品目の食料品が値上げされる。10月ほどではないものの値上げが続く中、ニュースなどで「今年2度目です」と同じ商品の再値上げを目にすることはないだろうか。

帝国データバンクは2022年8月、企業の値上げ動向についてアンケート調査を実施。この中で2022年1月~8月の間に値上げした回数を聞いたところ、0回(33.5%)、1回(40.7%)、2回(14.9%)、3回(5.2%)、4回(1.9%)、5回以上(3.8%)となり、約8カ月の間に実に25.8%が「2回以上値上げ」していた。※母数は有効回答企業の824社

2022年1月~8月の値上げ回数(帝国データバンク「企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート(2022年8月)より」)
2022年1月~8月の値上げ回数(帝国データバンク「企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート(2022年8月)より」)
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実際はこの調査後の10月に、企業の値上げラッシュがあったことから、今は複数回の値上げをした企業の割合はもっと増えているかもしれない。消費者には、「また値上げか」というネガティブな印象を与えてしまう気がするが、こうした“再値上げ”はなぜ起きてしまうのか。

再値上げが行われてしまう「3つの影響」

編集部が再値上げした複数の企業に聞いたところ、企業秘密などに関わるため詳細は答えられないとのことだった。ただ、その一方で「原材料の価格高騰、急激な為替変動、ロシア・ウクライナ情勢の緊迫化」が関係しているという声は多かった。

そこで、「みずほリサーチ&テクノロジーズ」調査部・南陸斗さんに、複数回の値上げの背景を聞いた。


――日本では複数回の値上げが目立つ。どうしてこうなった?

コロナ禍での世界的な財政支出の増加、サプライチェーンの混乱などを受けて、2021年ごろには、世界的にエネルギーや原材料の価格が上昇しました。さらに、2022年に入るとロシアのウクライナ侵攻で燃料費などが高止まりしました。そして現在は、円安が進んで輸入価格が高騰しています。そのため、日本では(1)コロナ禍での価格高騰、(2)ロシアのウクライナ侵攻による価格高騰、(3)円安による価格高騰、以上3つの影響が出ています。ここが値上げに反映されていると考えられます。

値上げで顧客が離れるリスクも(画像はイメージ)
値上げで顧客が離れるリスクも(画像はイメージ)

――消費者に与える印象はよくないように思うが、企業はどんな思いで値上げしている?

資源価格の高騰分(について)の値上げを実施していた企業も、足元の円安の進行で我慢しきれなくなり、再度値上げに踏み切ったところが出てきている印象です。それに加えて、世界的な燃料費の高騰を受けて、電気料金も高くなりました。事業用電力価格の伸び率も拡大しており、ここまでの負担の増加は想定していなかったと思います。

企業もコスト増を価格に転嫁できなければ、その分、収益が減るので、原料費やエネルギーコストが増加し、苦しい状況の中で本音は値上げをしたいと思います。ただ、自分の企業だけ大きく値上げすれば、お客が離れてしまうリスクがあります。そのため、他社の状況を見ながらの複数回の段階的な値上げとなっている可能性も考えられます。

物価上昇のペースは長期化するのか?

――複数回の値上げは、消費者にどんな影響を与えそう?

足元の物価上昇で顕著なのが、食料、ガソリンといった生活に身近な日用品です。そのため、消費者の中では節約意識が働きやすくなっています。新型コロナの感染が落ち着いてくれば、対人サービスを中心に消費の回復が見込まれますが、物価高で家計の購買力が低下しており、消費の回復に遅れが出る可能性があります。

実際に、スーパーやコンビニ経営者や家電量販店の従業員など、消費者と身近に接する立場の人の声を確認出来る内閣府の「景気ウォッチャー調査」の結果を見ても、物価高を受けて消費者の財布のひもが固くなっているなど、節約意識が高まっているコメントが確認出来ます。

消費者の購買力が落ちている可能性も(画像はイメージ)
消費者の購買力が落ちている可能性も(画像はイメージ)

――今の値上げのペースはこれからも続くの?

現在の物価上昇ペースが長期化する可能性は低いと思われます。民間の調査では、主要食料品メーカーの年内値上げ品目数は、2022年10月がピークで、以降は徐々に値上げ品目数が減少していく見込みも出ています。政府の総合経済対策でも家計負担軽減のため、電気代やガス代の補助が策定されますので、値上げの動き自体はしばらく続きますが、「今の値上げペースがこの先もずっと続くのでは?」という心配はしなくてもいいと思います。


――値上げに関連した今後の予測を聞かせて。

電気・ガス料金は、燃料費の価格変動から3~5カ月ほど後に、料金に反映される傾向にあります。そのため、上限規制のない自由料金プランについてはしばらく上昇が続く見込みです。また、為替水準や資源価格の動向によっては、再値上げや、再々値上げを検討する企業が増えてきてもおかしくありません。ただし、いまの物価の伸びが長期化する可能性は低いと見ています。

日本の足元の物価上昇は、輸入価格の上昇による影響が大きいです。世界では欧米中心に日本以上にインフレが深刻化しており、インフレ抑制のために金融引き締めが行われています。インフレと金利上昇を受けて、欧米は2023年にかけて景気後退に陥る見込みで、資源の需要が減衰することや、金融政策の転換で円安に一服感が出ることで、輸入価格の高騰も収まり、消費者が対面するモノの価格も次第に落ち着いてくると見ています。

円安の影響も大きいという(画像はイメージ)
円安の影響も大きいという(画像はイメージ)

――状況が落ち着いたら、値上げ分が元に戻ったりはしない?

電気・ガス料金は燃料費に連動するので、下がることは考えられます。企業が値上げした商品は難しいところがあるかもしれません。企業の収益が伸びて、賃金の上昇にもつながればいいのですが。

値上げだからこそ…契約や生活を見直す機会に

――消費者が家庭でできることはある?

3つあります。1つが保険の見直しです。人生で1番高い買い物が「家」で、2番目が「保険」と言われますが、2022年10月には火災保険が値上げされました。自身の家庭の状況に合わない保険に入っていないか、家族構成や生活に見合ったものであるか、見直しや切り替えをしてもいいでしょう。

2つ目が電気料金です。高騰が続いていますが、電気料金の価格は原油や天然ガスなどの燃料費が価格に反映され、一定の上限を上回る値上げにはならないことになっています。ただ、新電力会社や大手電力会社の一部プランではこの上限が適用されないこともあります。そのため、新電力を選んだはずなのに、従来の契約の方が安くなってしまうという家庭も出てくる可能性があります。どのプランがお得かは、家庭の状況よっても変わるため、この機会に、電気契約を見直してもいいでしょう。

電気の契約などを見直す機会に(画像はイメージ)
電気の契約などを見直す機会に(画像はイメージ)

3つ目が食料品です。食材を賞味期限切れで捨てたり、野菜のヘタなどの可食部を捨てるといった食品ロスを減らすことの実践になります。ロスが出ているという意識を持つことで、節約に繋げられる可能性があります。


――政府の対策に関連して、思うことはある?

今は電気やガス、食料品といった生活に身近なものが値上がりしています。低所得世帯ほど、食料や光熱費の収入に占める支出割合が高く、相対的に負担が重くなっているのが現状なので、手厚い支援が行われるのが望ましいと思います。
 


一度に大きく値上げすれば、消費者が離れてしまうリスクがある。こうした中で想定以上の負担の増加が続き、他社の状況を見ながら複数回の値上げに踏み切っている可能性を専門家は指摘していた。物価上昇のペースは一段落しそうとのことだが、まだまだ今後の状況次第で再値上げや再々値上げを検討する企業が増えてきても不思議ではないようだ。