廃業予定だった酒蔵を立て直し、女性や若者などにも人気の日本酒を手がけている阿部酒造。秋を迎え、酒造りも本格化する中、その日本酒の発信に6代目が奔走している。

仕込み作業が本格化する酒蔵 イベントで商品PR

新潟・柏崎市。午前7時半、仕込みのスケジュール確認から酒蔵「阿部酒造」の一日が始まる。
「圧倒的にうまい」をテーマに、日本酒が好きな人はもちろん、若い世代や女性からも人気を集めている阿部酒造。9月からは新酒に向けた酒造りも始まった。

酒蔵「阿部酒造」
酒蔵「阿部酒造」
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「3段仕込み」と言われる、蒸した酒米をタンクに入れる作業から、日本酒造りにおいては欠かせない米こうじづくりなど、蔵人たちが分担して1か月半~2か月ほどかけて造られる日本酒。その重要な味の機微を見ているのが、6代目の阿部裕太さんだ。

阿部酒造 6代目 阿部裕太さん:
僕がもろみ管理の担当になっている。こうじづくりとか酒母づくりとか合わさってくるのが、この最後の30日くらい。ブレーキやアクセルを踏み間違えると、全て味に直結してしまう。なので、僕がここの管理をしている

阿部酒造 6代目 阿部裕太さん
阿部酒造 6代目 阿部裕太さん

仕込み作業も本格化しているなか、阿部さんは新潟市で開かれた「にいがた酒の陣NEXT」に出展。阿部酒造の日本酒を求めて、ブースには長蛇の列ができていた。

新潟市中央区で開催されたイベント「にいがた酒の陣NEXT」
新潟市中央区で開催されたイベント「にいがた酒の陣NEXT」

阿部酒造 6代目 阿部裕太さん:
ここ2~3年ずっと、僕らはものづくりをして、ただただ商品を出荷して、またものづくりをしてというのが続いていたが、やっぱり喜んでもらえるとテンションが上がる。「また頑張ろう」とは思うようになったので、そういう機会が増えているのはうれしい

お客さんの喜ぶ姿が力に
お客さんの喜ぶ姿が力に

イベントに出展することで、直接日本酒の魅力を伝える阿部さん。日本酒の消費量が落ち込む中、「日本酒に触れ合う機会」を増やすことを大切にしている。

販路拡大へ奔走 酒造りの合間に酒店巡り

この日、阿部さんが訪れたのは、東京・銀座の高級デパート内にある酒店。

東京の酒店
東京の酒店

いまでや 操田薫さん:
北から南まで並んでいて、北海道から東北と来て、新潟の阿部さんのところが3種類。この前、出していただいたばかりの純米吟醸と圃場別シリーズ

全国の酒蔵から集められた日本酒と共に並べられている阿部酒造の日本酒。その理由を尋ねると…

いまでや 操田薫さん:
誰が飲んでもおいしいお酒。飲食店に紹介しても受けるし、「日本酒は初めて」という人におすすめしても受ける。すごく万能

より多くの人に日本酒を届けるため、販路拡大に奔走する阿部さん。

阿部酒造 6代目 阿部裕太さん:
製造のスタッフが揃ってきたら、年中外を回れるようになると思うけど、うちはまだ、そんな状態ではない。営業というか、セールスは僕だけになるので

販路拡大のため酒店を回る阿部さん
販路拡大のため酒店を回る阿部さん

もともとは5代目の父親の代で蔵をたたむ予定だった阿部酒造。設備投資などもままならない状態だった8年前に阿部さんが蔵を継ぎ、今では酒店に愛される酒蔵へと成長してきた。

たつみ清酒堂 稲野辺憲 社長:
これで販売できる酒は終わり。レジから一番近いところに置いて、大事に大事に

阿部酒造 6代目 阿部裕太さん:
大事に大事に、ありがとうございます

レジの一番近くに置かれている阿部酒造の商品
レジの一番近くに置かれている阿部酒造の商品

たつみ清酒堂 稲野辺憲 社長:
大事にプロモーションして、「阿部を大きなブランドにしないと」というのが、うちの使命

アパレルメーカーとのコラボも…「もっと日本酒広めたい」6代目の挑戦

阿部さんの日本酒を広げる活動は酒店に留まらない。

阿部酒造 6代目 阿部裕太さん:
お邪魔致します。ちょっと緊張します。こういうオフィスビルに入るのは久しぶり

訪れたのは、大手アパレルメーカー。

アパレルメーカーを訪れた阿部さん
アパレルメーカーを訪れた阿部さん

阿部酒造 6代目 阿部裕太さん:
「こういうこともあります」というような形で、全く別なことをやるというのは、ありっちゃあり

ユナイテッドアローズ 開発推進課 鈴木貴至さん:
僕の中では貴醸酒×貴醸酒がやりたい

行われていたのは、日本酒造りの打ち合わせ。日本酒業界とアパレル業界とのコラボ商品。一見、異色なタッグにも見えるが…

阿部酒造 6代目 阿部裕太さん:
そもそも日本酒に対して、ネガティブなイメージしか持っていないとした場合、「イベントをやったところで行かないよね」という話になってしまうので、もっと違う場所で日本酒を知ってもらう活動は非常に大事だと思う

アパレルメーカーの鈴木さんも、阿部さんのこうした姿勢が阿部酒造とのコラボを会社に提案した理由だと話す。

ユナイテッドアローズ 開発推進課 鈴木貴至さん:
若い方が次の挑戦に取り組んでいる。阿部さん自身も色んな人を育てて、卒業生が外で活躍している姿とか、そういったところがすごくおもしろいなと思った。ぜひ、一緒に仕事がしたいと思い、お声がけした

酒蔵を継いで9年目。阿部酒造の挑戦は続く。

阿部酒造 6代目 阿部裕太さん:
結局、僕らはベテランの作り手さんがいる会社ではない。ベテランの多い酒蔵さんは右にも左にもたくさんいる。我々が止まったら、たぶん負けるだけ。常に挑戦をして、その結果、うまいものが生まれてくるので、そこは絶対に忘れないようにしている

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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