広島市にある老人介護施設で、高齢の女性入所者の顔などを殴り、けがをさせたとして、介護職員の男(43)が逮捕された。
繰り返される介護施設での暴行事件。被害者の親族が、”驚くべき実態”をカメラの前で明らかにした。

顔や胸など13カ所に打撲やアザ 施設側からの説明は不十分

警察によると、逮捕された容疑者は9月7日深夜、勤務先である広島市東区の特別養護老人ホームで、入所している女性(78)の顔や胸などをこぶしで殴り、打撲など女性に10日間のけがを負わせた疑いがもたれている。

【家族提供】暴行を受けた女性入所者の顔にできたアザ
【家族提供】暴行を受けた女性入所者の顔にできたアザ
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調べに対して容疑者は「間違いありません」と容疑を認めている。
9月8日、女性の家族から警察に相談が寄せられ、事件が発覚。女性はその後、別の施設に移ったということだ。

テレビ新広島は被害者の親族を独自取材。すると、驚くべき実態が明らかになった。

被害者の娘:
母は首を絞められていたようです。「怖い怖い。死にたい。どうしてこんなことされなきゃいけないの」と言っていました。母の状態を見たときは、とてもショックでした

こう語るのは、被害を受けた女性の娘。女性は病院で、顔や胸など13カ所に打撲やアザがあると診断された。

【家族提供】被害を受けた女性の診断書
【家族提供】被害を受けた女性の診断書

被害者の娘:
おでこの真ん中が、500円玉大ぐらいのたんこぶみたいに腫れあがっていて、腕も肩から下が紫色になっていました

暴行を加えた職員に対する気持ちを尋ねると…

被害者の娘:
容疑者は、おそらく17、18年前から勤めていて、ずっと前から入所者に暴行を加えていたと聞いていました。母の他にも、被害を受けた人がたくさんいるような気がするんですよ。罪を償ってほしいと思います

家族から相談を受けた警察も、容疑者の行動に不信感をあらわにしたという。

被害者の娘:
警察の方は「これはとても悪質で、容疑者がカーっとなって深夜の密室で暴力を振るうというのは、ものすごく怖いよね」って

一方で、家族が施設側から受けた説明は耳を疑うものばかりだった。

被害者の娘:
施設側からは「うちには荒い介護をする職員がいる。ポータブルトイレが部屋にあるので、もしかしたら転んで顔を打ったのかもしれない」と言われました

納得がいかない家族は、改めて説明を求め、再び施設へ。すると施設側は一転して、職員による暴行を認め、謝罪したという。
事件があった介護施設の施設長は「再発防止と職員の教育を徹底する」とコメントしている。

「見られている」という意識が虐待抑止に

広島県内で認知された「高齢者施設内の虐待の相談件数」は、2020年度は減ったものの増加傾向にある。

広島県内で認知された「高齢者施設内の虐待件数と相談件数」
広島県内で認知された「高齢者施設内の虐待件数と相談件数」

実際に身近な人が被害にあった場合、どう行動すればいいのか。
高齢者や障がい者の虐待問題に詳しい鈴木智之弁護士に話を聞いた。

鈴木智之 弁護士:
早めに行政(市や町)に通報することが一番重要だと思います。ためらっているうちに虐待がエスカレートして、命や体に重大な影響が及ぼされる可能性が、時間が経てば経つほど大きくなっていくので、早め早めの通報が重要です

高齢者の虐待問題の解決に、県内の各自治体と取り組んでいる鈴木弁護士は「まず、各市町に設置されている虐待の相談窓口に相談し、調査を進めることが解決の糸口になる」と話す。

鈴木智之 弁護士:
高齢者や障がい者の虐待防止法に、”市町の職員は通報した人を特定できるような情報を漏らしてはならない”という規定があります。虐待する側にしても、「見られているんだよ」「何かあれば通報されるんだんよ」ということが社会全般に認知されていけば、それは虐待を抑える方向に作用するでしょう

繰り返される介護施設での暴行事件を防ぐために、通報の機運を高め、虐待の可能性を少しでも抑えたいとしている。

(テレビ新広島)

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