台風15号は静岡県内のいくつもの地点で観測史上最も多い雨量となり、土砂崩れや浸水など大きな被害が出たが、「特別警報」は発表されなった。
「特別警報」は重大な災害のおそれが高まっている場合に出されるが、今回は発表されなかった。なぜ気象台は出さなかったのだろうか。

線状降水帯発生で記録的な雨量に

斉藤力公記者
目の前の南幹線の一部が冠水している様子がわかります

冠水した静岡市内の道路(9月23日)
冠水した静岡市内の道路(9月23日)
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台風15号の雨は、当初 静岡県内の多い所で24時間に200mmと予想されていた。
しかし、線状降水帯が発生して同じ場所で非常に激しい雨が降り続き、記録的な雨量となった。

静岡市山間部の土砂崩れ
静岡市山間部の土砂崩れ

23日午後4時から24日午前10時までの連続雨量は、島田市の伊久美で541mm、掛川市の黒俣で391mmに達した。

35のうち33市町で警報
35のうち33市町で警報

大雨警報、洪水警報、土砂災害警戒情報のいずれか、あるいは全てが出された地域は、静岡県内35の市町のうち33にのぼった。

「特別警報」は発表されず

しかし、重大な災害のおそれが高まっている場合に出される「特別警報」は発表されなかった。特別警報は、警報の発表基準をはるかに超える大雨が予想され、重大な災害の可能性が高まっている場合に発表される。2013年に運用が始まった。

防災気象情報の区分
防災気象情報の区分

静岡県内では、2019年10月の台風19号の時に初めて発表された。県東部を中心に大きな被害が出たこの時、静岡市の24時間雨量は411mmだった。

9月23~24日の静岡市の雨量
9月23~24日の静岡市の雨量

今回の台風では、その半分の12時間で404mmの雨が降った。

豪雨の夜に気象台は…

静岡大学防災総合センター・牛山素行教授
おそらく23日深夜から24日未明にかけて、気象台ではすごく悩んだだろう。今後どうなりそうなのか。結果的には悪い方に転んでしまった。未明まで降り続いてしまった。
結果だけ見ると、特別警報を出してもおかしくない降り方だったが、事態が進行している最中に、出すかどうか、雨が続くかという読みをするのは相当難しかったのでは

静岡大・牛山教授
静岡大・牛山教授

警報の発表基準をはるかに超えるような大雨が、この先も続くかどうか。風や雨雲の動きの予想が困難な状況だったという。

23~24日に出された防災気象情報
23~24日に出された防災気象情報

静岡大学防災総合センター・牛山素行教授
出せない、出す判断を、ためらうとかではなく、先がどうなるか。予測がある意味はずれた。そこが現在の予測技術の限界。限界があるからこそ、特別警報だけに依存しすぎてはいけない。
今回は記録的短時間大雨情報がどんどん出ているので、まるっきり防災気象情報が機能していなかった訳ではない。特別警報ではなかったが、記録的短時間大雨情報など大変な状況であるということが次々に出ていた。
特定の情報だけではなく、いくつかの気象情報をトータルで活用していくことが重要だということを示す例と思う

気象庁キキクルなどで情報収集を

今回大きな被害をもたらした台風。
ただ9月初めには浜松市浜北区や磐田市でも、道路や住宅などで浸水被害が起きるなど災害が多発している。

9月初めには浜松市でも浸水被害
9月初めには浜松市でも浸水被害

大切なことは大きく2つある。
一つは「情報収集」だ。警報や自治体の出す避難情報に加え、いまどんな事態か把握することだ。

気象庁キキクル・洪水害の危険度
気象庁キキクル・洪水害の危険度

静岡大学防災総合センター・牛山素行教授
一番まずい状況がどこで起きているのか見るためには、気象庁のキキクルが一番良い。洪水キキクルや土砂キキクル。線状降水帯だろうとなかろうと、土砂災害が起きそうになっているのがどの辺なのか、河川も中小河川含めて洪水が起きそうなのはどの辺なのか示してくれる。大多数の人がまず見るべき情報はキキクル

静岡県サイポスレーダーの河川情報
静岡県サイポスレーダーの河川情報

さらに県のサイポスレーダー・防災情報システムの画面では、雨や川の情報に加え、水位や動画を確認することもできる。

危険な場所を把握して

もう一つ重要なのは「危険性の認識」だ。今回の台風でも土砂崩れや浸水被害のあった場所の多くが、もともと災害の危険が指摘されていたところだ。風雨の中での移動中に危険な事態にあうケースも出ている。

道路陥没で車が落下(川根本町)
道路陥没で車が落下(川根本町)

静岡大学防災総合センター・牛山素行教授
研究結果だと、洪水土砂災害の犠牲者の9割前後は地形的に起こりうる場所。ハザードマップで色が塗られている場所や、色が塗られていなくても川のすぐそば、地形的危険性の高いところで遭難されている。ハザードマップで色が塗られていなくても、山間部の道路や川沿いの道は当然危険。そういった所は洪水土砂災害の危険性がある。そういった所には極力近づかないことが大変重要

牛山教授:ハザードマップで危険な場所を知って
牛山教授:ハザードマップで危険な場所を知って

気象庁や自治体の情報を確認しながらも、自分でリスクを確認し、自分や周りの人の安全を確保していく。そうした姿勢、対応が必要だ。

台風シーズン続くため備えを

静岡地方気象台は、特別警報について「雨量の指数などを見ながら検討を行った。雨の降り方の見通しなどを考え、発表は見送る結果となった」と説明している。

静岡地方気象台 特別警報を出さなかった理由
静岡地方気象台 特別警報を出さなかった理由

これに対し、牛山教授は「先読みがすごく難しい降り方だった。予測技術には限界があり、いくつかの情報をトータルで活用することが重要」と話す。

静岡大・牛山教授
静岡大・牛山教授

台風シーズンはもうしばらく続く。自分や周囲の人の安全のため、今後への備えも必要だ。

(テレビ静岡)