記録的大雨の爪痕が残る熊本県内各地を防災システム研究所の山村武彦所長と回った。中心部の下通アーケードなども冠水した、熊本市を取材し『内水氾濫』などへの備えについて考える。
内水氾濫が起きた熊本市の下通アーケード
8月17日、熊本市中央区の下通アーケードを訪れた、防災システム研究所の山村武彦所長は「今回のこの繁華街の浸水は『内水氾濫』ということになる」と判断した。

8月10日の深夜から11日の未明にかけて猛烈な雨が降った熊本市。3時間の降水量は観測史上最も多い223.0ミリで、平年8月1カ月の雨量をわずか3時間で上回った。

下通アーケードでは『内水氾濫』が発生し、山村所長は「都市型水害ですね、排水機能が追いつかない。排水機能が機能していれば、降った雨も排水溝や側溝などから河川の方に流れ込んでいくけど、大雨が降っている時は河川の水位も上がっているので、排水機能があまり機能しない。結果として、そこにたまってしまい『内水氾濫』になってしまう」と述べた。

さらに、山村所長は下通アーケード周辺の地形にも着目し、「例えば、向こうの白川よりもこの辺りが低くなっている。周辺に降った雨がわずかな傾斜だが、全部、この低地に流れ込んでくる」と話す。
「浸水対策が不十分」防げた被害か
今回の大雨で浸水被害に遭った下通アーケード近くの飲食店を訪ねた。ビルの地下1階にある球磨焼酎専門バー『ロックスピリッツ』の星原克也さんは「壁のここから水が出てきた。最初はここからポコポコと水が出てきて…」と、8月10日の午後11時ごろ、突然、壁の隙間から店内に水が入ってきたという。

その後、浸水は拡大し、天井の壁際からも大量の水が店内に…。店は床上浸水し、現在、休業している。店主の星原さんが当日、下通アーケードで撮影した映像にはマンホールから水が噴き出していた。

山村所長は「これが『内水氾濫』の典型例。排水溝に入った雨水が低地の排水溝から噴き出すという状態が起こる」と話す。

この『内水氾濫』によって多くの店舗が浸水被害に見舞われた下通アーケード。山村所長は「浸水対策が不十分だった」と指摘する。「本来であれば、こういった浸水のリスクがある所は、止水板の設置や土のう袋を積むとかしていれば、10センチか20センチの浸水であれば、店内に入るのを防ぐことは可能。そういう対策ができていなかったのではないか」と話した。
『ひとごと』ではなく寄り添う心
一方、一連の大雨では熊本市内でも多くの道路が冠水し、車の浸水被害も相次いだ。生活の手段として、移動の手段として、車がかかせないという人も多いが、そうした中で、あるべき避難の形とは、どういうものなのか。

山村所長は「車で避難する場合は、早めに避難すれば安全。ところが避難のタイミングを失ってしまう、見過ごしてしまうと、道路が冠水している状態になっているので、かえって家族ごと危険の中に入っていくことになってしまうので、やはり『早めの避難』を心がけること(が大事)」と話す。

また、「アンダーパスなど冠水が想定される道路を事前に調べ、避難場所までの経路の安全を確認してほしい」と呼び掛ける。

山村所長は今回、熊本県内の被害状況を見て回った総括として、「床下、床上浸水は非常に多岐にわたっている。土砂災害も各地で起きていて、かなり地盤も緩んでいる所がそのままになっているようなので、今後の対策が非常に重要」と話した。

また、「あまり表面に出ていない被災者を、支援することがなかなか難しくなってきているので、ぜひ被災者に寄り添う気持ちを形に表してもらうといいかなと。『あすはわが身、ひとごとではない』と思うので、そういう寄り添う心が大事だなと思う」と述べた。
ボランティアの力や義援金での応援
山村所長は、『内水氾濫』の場合、濁った水ではなく透明に近い水が一面を覆うけれども、この水には汚水などが含まれているので消毒が不可欠だと指摘している。

そして山村所長が最後に語っていた『あすは我が身』の話は、『お互いさま』の気持ちで寄り添う心が必要という意味。今求められているのはボランティアの力、または義援金での応援もある。今自分にできることを考え、行動していきたい。
(テレビ熊本)