整備計画が決まってから約半世紀。長崎県と佐賀県を結ぶ西九州新幹線が、9月23日に開業した。長崎県の始発駅となる長崎市、そして諫早や大村など沿線でもさまざまなイベントが開かれ、お祝いムードに包まれた。
しかし今回は、長崎―武雄温泉(佐賀県武雄市)間、66kmの「部分開業」。武雄温泉から新鳥栖までの整備方式はまだ決まっていない。光と影が交錯する「曲折のレール」のいまを取材した。
長崎-武雄温泉が最速23分 観光客誘致の起爆剤になるか

23日からの三連休、長崎市は新幹線の話題一色となった。西九州新幹線は、長崎と武雄温泉を最速23分で結ぶ。

武雄温泉駅から博多までは、在来線の特急列車に乗換えが必要だが、長崎―博多間がこれまでより約30分間短縮される。

新大村駅から乗車した家族(長崎在住):
速かった。家族でゆったりと乗ることができた。とてもうれしかった。長崎にたくさん遊びに来てほしい

佐賀からの乗客:
(観光客の)誘致の起爆剤になる。長崎の発展につながると思う
開業日は航空自衛隊のブルーインパルスも展示飛行を行い、開業に華を添えた。

JR九州が発表した開業日の利用状況では、武雄温泉と長崎を始発駅とする始発列車は、ともに自由席の乗車率が100%を超えた。さらに開業から3日間の利用状況は約3万2000人と、2021年より4.4倍になった。

観光客:
移動時間が短くなるし、快適な乗り心地で来られるので長崎にも来やすくなる。

観光客:
速いですね。24分で武雄から着いた。すごい。通勤や通学が可能。すごく近く、身近に感じる
長崎の観光名所やホテル 早くも開業の効果を実感

23日の開業日、長崎市を代表する観光名所「グラバー園」には、普段の休日の1.5倍となる2700人が来園した。

グラバー園・北川啓太郎 副園長:
(西九州新幹線の)「かもめ」が開業したことで、多くの人が長崎に来ていると実感している。県外の方々に来てもらって、長崎の魅力を肌で感じてもらえる施設作りをしたい
長崎市を一望する高台のホテルでは、開業日前日からの3日間で、普段の休日の2倍ほどの宿泊客が訪れ、早くも開業効果が出ている。

矢太樓・幸田政秀 総支配人:
短い距離だが、新幹線に乗りたい客に来てもらえると思っている。そういった方に長崎をもっとアピールしていきたい
修学旅行シーズンが始まり、この日は東京からの修学旅行生、約350人が宿泊していた。現在は修学旅行の多くが、東京などから福岡に飛行機でやってきて、バスで長崎に来ている。宿泊施設の関係者は今後、新幹線を使う修学旅行のスタイルも確立していきたいとの考えだ。
矢太樓・幸田政秀 総支配人:
今まで来てもらえなかった大阪、東京など大都市圏の客を積極的に呼び込む事ができるので、期待が大きい
長崎市が変革期迎える一方で…新鳥栖までは未着工 全線開業メドたたず
喜びや期待の声が多く聞こえる一方で、課題もある。

開業日はブルーインパルスの展示飛行の人出も重なり、午後にかけて、長崎市内の幹線道路は大渋滞に見舞われ、今後のイベント時の交通対策にも課題を残した。

新幹線開業によって、長崎市はいま“100年に1度”といわれる大きな変革期に入っている。交通環境の整備とあわせ、周辺では建設ラッシュが続いている。

2023年秋には、新しい駅ビルがオープン予定。商業施設やオフィス、外資系の高級ホテルが入り、観光需要の受け皿づくりが進む。

さらに、2024年秋の完成を目指して、通販大手のジャパネットホールディングスが建設中なのが「長崎スタジアムシティ」だ。2万人収容のサッカースタジアム、アリーナ、商業施設、そして地元大学の大学院も入るオフィス棟などの建設が行われている。
長崎市以外でも、新幹線沿線の諫早市、大村市でも駅前周辺の再開発が行われていて、今後は新幹線の恩恵を受けにくいと言われる県北地域などにも、新幹線効果をもたらす取り組みが肝要だ。
ただ一方で、その効果を最大限発揮できるはずの全線開業がいつになるか、メドが立っていない。
未着工の新鳥栖ー武雄温泉間については当初、在来線と新幹線の両方を走ることができる新型車両の導入が計画されていたが、技術上の問題から断念。その後、国はフル規格での整備方針に転換したが、新たな費用負担などを懸念する佐賀県側と協議が難航している。
効果が限定的で「日本一短い新幹線」ともやゆされる西九州新幹線。その終着点までのレールの行方は、いまだ不透明なままだ。
(テレビ長崎)