福岡県内に住む50代の男性。職業は公務員だが、2012年にアパート経営を始めた。土地と建物をあわせて、1億5,000万円で購入したという。

福岡県内に住む50代の男性:
退職後の生活が充実すればと始めた。不動産、アパートを経営するのは知人から紹介してもらった

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しかし…

福岡県内に住む50代の男性:
購入して1カ月後に、業者から「入居者が出て行ったんです」と言われた。査定額は1億円ない。(購入から)6年で9,000万円と言われた。年間1,000万円ずつ落ちたのかと

1億5,000万円の価値があったはずが、わずか6年で9,000万円に。一体何が起きたのか?
その背景に「地方銀行の雄」とも言われた、ある銀行の関与が疑われていた。

「銀行が融資してくれるから」

福岡県内に住む公務員の男性(50代)。
老後の備えにと、2012年に大阪にアパートを購入した。
価格は、土地とあわせて1億5,000万円。4.5%の金利を含めると、ローンの総額は2億6,000万円あまりにのぼる。

融資をしたのは、静岡県に本店を置く“スルガ銀行”だった。

福岡県内に住む男性(50代):
やはり販売は不動産業者が行うので、どこまで信用していいかというところがあった。銀行が融資してくれるから、間違った物件、変な物を掴まされる可能性はないだろうと。そこが基準になった。「銀行がちゃんと査定した物件なんです」と再三に渡って言われたから、もし管理、運用がうまくいかない場合があっても、いわゆる元本割れはないと。これほどいい話はないなと

しかし、そんなうまい話などあるはずがなかった。購入からわずか1カ月で異変が起きる。

購入した翌月、10室が空室に…

濱田洋平記者:
あ、ありました。あれですね

男性がアパートを購入した当時、アパートの入居者は生活保護受給者が中心で、空室は1室しかなく、収入は安定していると聞かされていた。
しかし、購入した翌月に突然、10室が空室になったと聞かされた。

福岡県内に住む男性(50代):
タイミングがあまりにも良すぎるのではないかとクレームを申し入れた。不動産会社が、「不動産にサブリース(家賃保証)というものがある。サブリースをしましょう」と

入居者がいなくても一定の家賃を得られるサブリース契約を不動産会社と結び、なんとか収入は安定した。
しかし、購入から6年たった2018年、再び異変が起きた。

福岡県内に住む男性(50代):
ちょうどスルガ銀行の「かぼちゃの馬車」が社会問題になったときくらいに、いきなり一方的にサブリースを打ち切りますと(言われた)

スルガ銀行が主導…「かぼちゃの馬車」事件

「かぼちゃの馬車」とは、東京の不動産会社が運営していた女性用シェアハウス。
不動産会社はサブリース、いわゆる家賃保証をうたい、サラリーマンなどを中心にオーナーとして勧誘し、約1,250人がスルガ銀行からあわせて2,000億円余りの融資を受けた。

しかし、運営はうまくいかず、ローンの返済ができなくなる人が相次いだうえ、仲介業者が自己資金のない債務者の預金通帳の残高を改ざんするなど不正を行っていたことが発覚。

さらに、その不正の主導をスルガ銀行側が組織的に行っていたことが第3者委員会で認定され、一連の不正は「スルガスキーム」と呼ばれた。
金融庁から一部業務停止命令を受けたスルガ銀行は、債務者に対して土地や建物と引き換えにローンを相殺した。

スルガ銀行の不正融資が明るみになった直後に、サブリース契約を打ち切られた男性。
立ちゆかなくなったローンの返済に途方にくれる中、アパートを査定してもらうと…

福岡県内に住む男性(50代):
出た査定額は1億円ない。当時(購入から)6年で「9,000万円」と言われた

福岡県内に住む男性(50代):
年間1,000万円ずつ落ちたのかと…。悩みましたね、家族を巻き込むということを考えれば。夜、寝られない時期もあった

男性への融資でもスルガスキームが行われたか

男性がワラにもすがる思いで相談した弁護士は、「そもそも、スルガ銀行による男性への融資は不正だったのではないか」と指摘する。

すみれ綜合法律事務所 小田恵美子弁護士:
スルガスキームは、この物件について、何が何でも1億5,000万円の融資をするというのが先に決まっている。だから、実際に物件価格が1億5,000万円あろうがなかろうがあまり関係なく、融資をするために後付けで資料を整えていくのが大問題

融資を受けるために、資料の改ざんなどを行うスルガスキーム。男性への融資でも、そのスルガスキームが行われた疑いがある。

すみれ綜合法律事務所 小田恵美子弁護士:
実際に彼の普通預金口座。1ページ目の通帳は残高が64万4,893円ですが、不動産会社から入手したスルガ銀行が持っている自己資本確認資料では、同じところを見ると564万4,893円になっていて、“5”が付け加えられている。不動産会社から聞いたところ、フォトショップを使って偽装をしたと

小田弁護士に対し、不動産会社の責任者は、スルガ銀行の担当者から指示を受けて預金口座の改ざんを行ったことを告白したという。

すみれ綜合法律事務所 小田恵美子弁護士:
不動産会社から話を聞くと、これは間違いなく、スルガ銀行のAさん(現在は退職)から指示があったと

スルガ銀行側は関与を否定

スルガ銀行による、マンションやアパートの1棟買いにともなう不正融資が疑われる事例は全国で相次ぎ確認されている。被害者団体によると、被害総額は5,000億円以上にも及ぶとみられている。

福岡県内に住む男性は、スルガ銀行側と調停を行ったが、銀行側は不正な行為があったことは認めたうえで「スルガ銀行が不正行為を主導したり、関与したという事実は確認できておらず、要求には応じられない」などとし、調停は不成立となった。

男性は、約3億円の損害賠償を求めてスルガ銀行を提訴する予定だ。

福岡県内に住む男性(50代):
わたしの金儲けについての後悔と反省はあるが、それを差し引いてもスルガの言い分を受け入れて従う気にはなれない。だからどちらが正しいのか、はっきりさせていただく

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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