（「ずるずるとここまで…」罪と向き合う“成人”受刑者 未成年者はわずか0.3%…少年刑務所の今【前編】 から続く）
少年刑務所は、九州では1カ所のみで佐賀市にしかない。「刑罰」と「更生」のはざまでもがきつづける「少年刑務所の今」を取材した。
「欲求不満の回避は無理」…薬物依存や性犯罪 再犯を防ぐための個別指導
佐賀少年刑務所に設けられている総合訓練施設では、受刑者たちの「更生の意欲」や「能力」をもとに11の職業訓練を受けることができる。資格を取得することで出所後、すぐに働ける環境を目指すのだ。
また、佐賀少年刑務所は、再犯の可能性が高い薬物依存や性犯罪の受刑者に対する個別指導を行っている。
特別に撮影許可がおりた。
教育専門官：
外に行くと、例えば「あの場所（※犯罪を犯した場所）もあるよね。あの人（※犯罪を犯したときの知人）に会っちゃったよね。刺激にさらされちゃう。その時に心がぐらつく？
受刑者の1人：
俺、思うんですけど、たぶん2～3日たったら、絶対欲求不満になるんですよ。何にしても、多分セックスしようが、うまい飯食おうが、欲求不満を回避することは無理ですね
教育専門官：
常に、もっともっとって感じ？
受刑者の1人：
絶対、求めちゃうけん…
互いにあだ名を決め、フランクに話し合う受刑者と刑務官。どんな気持ちの時に薬物を使いたくなるのか？当時の状況をさらけ出すことで、使いたくなる場面や状況を理解し、出所後の再犯を防ぐのが狙いだ。
教育専門官：
どういう時に使ってたよねというのは、知っとかんと（いけない）。ここに行っちゃうとまずいよねという場所は、絶対あるから。そこは避けんと
“最後の砦” 出所後の知識や心構えを学ぶ「復帰寮」
さらに、刑務所内の一角には、再犯者を生まないための「最後の砦」とも言うべき部屋がある。
復帰寮。仮釈放を迎える受刑者たちを集め、2週間共同生活させる部屋だ。刑務作業はない。
部屋の中では比較的、自由な行動が許され、出所後に必要な知識や心構えを学ぶ。
全員：
気をつけ！ 礼！ なおれ！ よろしくお願いします
細井信二 上席統括矯正処遇官：
社会生活において、不安だなと考えている者、手を挙げて
全員が手を挙げた。
細井信二 上席統括矯正処遇官：
何が不安？
受刑者の1人：
今まで刑務所で生活してきたことが、本当に通用するのかという不安が
受刑者（25歳・懲役3年3カ月）：
当時、仕事もしてなくてホームレス状態で、先輩の家に居候してたんですけど、お金をどうにか工面しないといけないということで、強盗が手っ取り早いんじゃないかと思って
仕事が続かず強盗やひったくりに手を染めた、かつての自分の姿が頭をよぎるという。
細井信二 上席統括矯正処遇官：
社会復帰後の不安だとか、将来の不安を持ってる人は、まだまだ改善更生の意欲があると感じます。私たちは、自分たちの心の違いで良くも悪くもなるということ。せっかく生まれもった、たった一度きりの人生を大切にして過ごしてください
ーー出所後の目標は？
受刑者（25歳・懲役3年3カ月）：
自立準備ホームに帰るんですけど、そういう施設を自分も持ちたいなと思っていて。それを建てるためにも今回、引受先でそういう施設のこと、NPOのことなど学んで行けたらなと思っています
眠れず迎えた仮釈放 刑務所長の訓示に受刑者は…
そして迎えた、仮釈放当日。ネームプレートを外す。
刑務官：
忘れ物ないか？ 眠れたか？
受刑者の1人：
眠れなかったです
いよいよ仮釈放の日。最後の身体検査が行われる。
検査を終え、受刑者たちは、久しぶりに私服に袖を通す。
刑務官：
番号！ 氏名！
受刑者の1人：
144番！ ○○！
刑務官：
君の作業報奨金の合計が全て入っているから、落とさないように。間違いないか？
労働の対価を、大切に受け取る。
そして出所前の最後の式、仮釈放式に臨んだ。
長屋栄治 佐賀少年刑務所長：
刑務所っていう所は、刑罰を執行するところだから、楽しいことなんてあるわけないから。みんな出るときは、二度と戻ってこないと思っているはずなのに、数年以内に半分近い人が戻ってきている。
これから出たら厳しい現実が待っているけれども、まず、よく損得を考えてほしい。で、得な道を選ぶ。犯罪は損な道だから。得な方を選び続けたら、きっと大事なものができてくる。大事なものを築いて、その上で今回起こした事件を非常に反省してほしい。そういう風に思っています
この日、仮釈放されたのは5人。
再びこの門をくぐることがないようにー。それぞれが社会と向き合うことになる。
（テレビ西日本）
