少年刑務所。少年院は保護処分を行い、社会復帰に向けた「教育」を主に行う施設であるのに対して、少年刑務所は「刑罰を第一の目的」としている施設だ。
実は、少年刑務所は九州では1カ所のみで、佐賀市にしかない。「刑罰」と「更生」のはざまでもがきつづける「少年刑務所の今」を取材した。

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九州唯一の少年刑務所 “成人”の男らが犯した罪と向き合う

午前6時35分。「起床~」の合図が長い廊下に響く。受刑者たちにとって慌ただしい朝の始まりだ。
布団は角をそろえ整理整頓し、よく見ると、うちわを置く位置まで決められている。

「8室番号!」刑務官による点呼に、「1、2、3、4」と、澱みなく番号を応える。

受刑者たちの朝が始まる
受刑者たちの朝が始まる

受刑者たちがかきこむ朝食は、一杯の麦飯とみそ汁、それに少量のおかず。朝・昼・晩の食事代は、合わせて420円と定められている。

午前7時50分。

「耳栓!」「耳栓よーし!」
「マスク!」「マスクよーし!」
「かかれ~!」「よーし!」

刑務作業(木工作業)の合図が響く。
第三工場での刑務作業では、受刑者たちが木箱を製作。約1500円で販売される。

佐賀市にある佐賀少年刑務所は、全国6つあるうち、九州唯一の少年刑務所だ。

佐賀少年刑務所(佐賀市)
佐賀少年刑務所(佐賀市)

しかし、少年刑務所のはずが、少年の姿が見当たらない。成人した男の受刑者ばかりだ。

佐賀少年刑務所の受刑者を年齢別に見ると、26歳以上の割合が70%以上を占める。未成年者は0.3%にすぎない。

“少年”刑務所のはずが…
“少年”刑務所のはずが…
入所する少年受刑者数は減少
入所する少年受刑者数は減少

近年、罪を犯した少年に対しては「更生」に重きが置かれ、刑務所に入所する人数が極めて少なくなっているのだ。

佐賀少年刑務所・細井信二 上席統括矯正処遇官:
少年受刑者に対しては、成人受刑者と同様に刑罰のための刑務作業を行わせます。そこで自分の犯した罪の重さ、責任を深く考えさせて、社会復帰の意欲を呼び起こす。
(少年受刑者のみ)日記指導であったりとか、個別指導、一般の成人受刑者よりも手厚い処遇を行っております

少年も収容できる刑務所だからといって、規律が甘い訳ではない。

厳しい規律 注意を受ける受刑者
厳しい規律 注意を受ける受刑者

刑務官:
おい! ちょっと来い。お前! 後ろ見てみろ! 触ってみろや! 何だ、その服装の確認は!

受刑者:
すみません

厳しい生活に身を置き、自らの犯した罪と向き合う。

受刑者(36歳 大麻所持・懲役1年):
大麻所持です。(大麻は)自分が19歳の時からですね。
やめようと思った時もあったんですが、ずるずると結局ここまで来てしまった感じですね。ちゃんと自分にブレーキかけられるよう、今後、頑張っていこうと思います

出所後に働ける環境を…再犯防止のため用意された11の職業訓練

しかし現実は、そう甘くはない。

近年、コロナ禍の不況も相まって、再犯率は上昇傾向にあり、2020年は49.1%と過去最高を記録。実に2人に1人が、刑務所を出所してもまた戻ってくることになるのだ。

再犯を防ぐためにどうするべきなのか?
佐賀少年刑務所には、ある「特別な施設」が設けられていた。

その施設の一室で行われていたのは、理容師免許をとる「理容科」の訓練。受刑者たちは刑務作業の代わりに、2年かけて理容師の資格取得に励む。

一方、パソコンが並べられた部屋は、ITエンジニアの登竜門といわれる国家資格「基本情報処理技術者」を取得するのが目標だ。

学習経験の長い先輩受刑者が、別の受刑者の質問に答える場面も―。

受刑者A:
要素の数を言ってるだけ?

受刑者B:
そう要素数

受刑者A:
そこにゼロが来ることはない?

受刑者B:
ゼロが来ることはない

佐賀少年刑務所に設けられている総合訓練施設では、受刑者たちの「更生の意欲」や「能力」をもとに11の職業訓練を受けることができる。資格を取得することで出所後、すぐに働ける環境を目指すのだ。

また、佐賀少年刑務所では、再犯の可能性が高い薬物依存や性犯罪の受刑者に対する個別指導を行っている。

後編では、特別に撮影許可がおりた、再犯の可能性が高い薬物依存や性犯罪の受刑者に対する個別指導の様子をお伝えする。
(眠れず迎える仮釈放 “過去の自分”に不安も…再犯防ぐ“最後の砦”に個別指導 少年刑務所の今【後編】 に続く)

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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