新型コロナの第7波で感染者の高止まりが続く中、金沢市消防局は2022年7月の1カ月に発生した救急搬送困難事案の件数を53件と発表した。その中には、病院への受け入れを11回断られた90代の男性もいた。

現場医師が吐露「第7波が一番危機感高い」

第7波で県内の救急医療は限界を迎えつつある中、命を救う最後の砦、岡島正樹(おかじま・まさき)医師率いる金沢大学附属病院・救命救急チームを取材した。

この記事の画像(11枚)

金沢大学附属病院 岡島正樹教授:
出動している救急隊は?

救急隊員:
いま、もう8隊です

金沢大学附属病院 岡島正樹教授:
マジか?

救急隊員:
予備救急車も出してです

救急隊員:
患者に発熱があると、結構、搬送断られて…

金沢大学附属病院 岡島正樹教授:
医療崩壊だな。もう、これは…

救命救急チームを率いる岡島医師
救命救急チームを率いる岡島医師

これは8月中旬、金沢大学附属病院の救急科で交わされた救急隊員と岡島医師との会話だ。
このころ、石川県内では新規感染者が連日2000人越え。金沢市消防局管内では10隊ある救急隊のうち、8隊が出動。予備救急車まで活用する事態に陥っていた。

救急医療の最前線に立つ岡島正樹医師は、これまで感じたことがないような強い危機感を感じていた。

金沢大学附属病院 岡島正樹教授:
救急医療が破綻する…。今まさに、これまで感じたことがないような強い危機感を感じる、危険なフェーズに直面しています。相当厳しいです

いまが一番危機感が強いと語る岡島医師
いまが一番危機感が強いと語る岡島医師

岡島医師がそう訴える理由は、新型コロナの患者を受け入れる病院で職員や患者のクラスターが相次ぎ、県内の複数の病院で受け入れがストップしたことにある。しかも、そうした患者の搬送に必要な基本的な情報が、県から現場に伝えられていなかったのだ。

感染の急拡大で受け入れ可能な病院も減少
感染の急拡大で受け入れ可能な病院も減少

金沢大学附属病院 岡島正樹教授:
分かっているだけで、3つの病院が受け入れ不可です。我々の知らないうちに、そうなっている。これは異常事態。きのう県庁に「とにかく受け入れできないところを公表して欲しい」と電話で伝えました

基本的な情報が現場に下りてこないほど、救急の現場はひっ迫していた。本来ならば、金沢大学附属病院は命を守る最後の砦の病院だ。他の病院では、手に負えないような高度な医療を必要とする患者が運ばれてくるはずなのだが…

金沢大学附属病院 岡島正樹教授:
「COVID-19」というのが、新型コロナです。画面を見てもらえばわかる通り、コロナの患者さんがほとんどです。ある患者さんは「喉が痛い」って言って、救急車で来て「コロナかどうか調べてほしい」と。検査して「コロナです」というと、「やっぱりコロナでしたか」と帰っていきました

中には、不安だからと救急車を呼び、検査を求める人もいるのだという。

金沢大学附属病院 岡島正樹教授:
もしも患者が陽性の場合、掃除や消毒などで30分くらいは処置室が使えなくなる。その間、もちろん救急車は受け入れられなくなる。例えば、この日は検査したいがために救急車を呼んだ患者が陽性で、結局、救急搬送を3台断りました

救える命が救えなくなる…どうにもならないジレンマ

金沢大学附属病院 岡島正樹教授:
いまの現状は、そりゃ悔しいですよ。とても悔しくて、悔しくて…。あの断った患者さんは、どうなったんだろうって考えます。すぐに対応してたら、予後が良かったんじゃないかとか…。そういう後悔の念しかないです。どうにもならないジレンマというか…。本当に悔しい。悔しいの一言です

新型コロナの感染拡大から2年半。医師や看護師たちが必死に食い止めてきた医療崩壊。それがいま目前に迫っている。

(石川テレビ)

石川テレビ
石川テレビ

石川の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。