日常では見ることのできない非日常の景色。それを命がけで見るアスリートたちがいる。

8月14日放送の「ジャンクSPORTS」(フジテレビ系)では、数々の危険な場所へ赴き、絶景を目にしてきた『命がけアスリート』が登場。常に危険と隣り合わせの中で競技に挑む彼らの、“危険”すぎるエピソードとその魅力を紹介した。

「人類未踏の洞窟」に魅了。洞窟探検家・吉田勝次

国内外問わず1000以上の洞窟を潜ってきた洞窟探検家、吉田勝次さん。

ただでさえ危険が付きものの“洞窟探検”だが、吉田さんには「誰も足を踏み入れたことがない。つまり“人類未踏の洞窟”であること」という強いこだわりがある。

「未踏じゃないとイヤです」と断言し、人が入った洞窟は「行く意味がない。どんな世界が待っているのかわからないところに魅力がある」と語る。

地図にも載っていない「未踏の洞窟」の探し方は3つ。1つ目は現地に赴き、足でひたすら探すこと。2つ目は怪しい穴を見つけるとすぐさま突入すること。3つ目は道なき道を突き進むこと。

「ジャングルだろうが絶海の孤島だろうが、どこでも行きます。洞窟の入り口まで行ってから始まり」

初めて入る洞窟はゴールまでも未知な道のりになるが、「わからないから楽しい」と吉田さんから言われた番組MC・浜田雅功さんはあきれる。「映画を観る前にストーリーがわかったら面白くないじゃないですか。それと一緒」だと語る吉田さんに「一緒ちゃうわ!」とツッコんだ。

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吉田さんのお気に入りは「16年間調査していた洞窟」。三重県にあるというが、詳しい場所は内緒だと笑う。この洞窟のさまざまな支道にアタックしているようで、最終的には「地図を書くことが探検家の仕事」だと語った。

そんな吉田さんが「人生が終わった」と思った瞬間は、奈良県にある未踏の水中洞窟でのこと。

山登り2時間、洞窟探索を1時間かけて到着した位置から、水中を潜り未知の地を目指していた。しかし、行く手を阻むような上下に出っ張る2つの岩に装着していた金具が引っかかり、身動きが取れない状況に。焦れば焦るほど酸素も消費し続ける中、なんとか脱出し、来たルートに引き戻ったという。

吉田さんは「落ちている石でグリグリやっていたら引っかかった。水中があまり慣れていなくてシリンダーを抱えているので、付けていないときは(通れるスペースが)わかるんですけど、水中はわかりにくかった」と振り返った。

飛びまくりなクレイジー親子!久保安宏・杏夏

高層ビルや高層タワー、橋の上、崖からなどパラシュートが開くギリギリの高度から飛び降りる危険なエクストリームスポーツ、ベースジャンプ。

その魅力に取りつかれ500回以上飛んだのが、ベースジャンパー・久保安宏さん。

そして、ムササビのようなスーツを着て最高時速250キロで鳥のように飛ぶ、ウィングスーツジャンパー・久保杏夏さん。

娘の杏夏さんがこのスポーツを始めたのは2年前。番組がきっかけだった。

当時はモデルに憧れる大学生で、乗り気ではなかったスカイダイビングを父親の希望で経験。すると数カ月後には1人でジャンプするようになり、学校を休学し、スカイダイビングのトレーニングを開始。以降、年間350回ジャンプしているという。数年かかるウィングスーツの資格も1年で獲得した。

2年前までは「高いところが得意ではない」と語っていた彼女だが、今では父親を超える“クレイジージャンパー”に成長。

そんな中、父・安宏さんが経験した「人生が終わった」と思った瞬間は2020年のマレーシアでの出来事。かつて何度も成功している高層ビルでジャンプしたが、パラシュートのひもがビルに引っかかり宙づり状態に。

「死ぬかも」とこぼしていた安宏さんだが、救助のゴンドラが間に合い、無事に助かった。

この出来事の原因は「風」。安宏さんは「みんな止めていたけど、最後に行った。10回目だったので、10回飛んで帰りたかった」と振り返る。

マレーシアでの出来事を娘には軽いノリで報告した安宏さん。その後、大きな事故だったと知り、けがをした父親を杏夏さんが心配したそうだが、安宏さんは「助かっていますから」とあっけらかんとした。

浜田さんは「親としてはやらせたくない?」と問いかけるが、「そういうことを教えながらやらせたい」と話す安宏さんにあきれていた。

アドベンチャーレーサー・田中正人&田中陽希

日本屈指のアドベンチャーレーサー・田中正人さんと、弟子で今シーズンからチームキャプテンに就任した田中陽希さん。

地球で最も過酷なレース「アドベンチャーレース」は洞窟や大自然を舞台に、長いレースだと600キロ以上のコースを制限時間10日間で競い合うタイムトライアルレース。チーム4名のうち、必ず女性を入れるのがルールだ。

今年5月に3年ぶりの国際レースに参戦すると、スタートから6日間かけて見事、準優勝という結果でフィニッシュ。

チームメンバーに“アメ”な対応の陽希さん。一方、「メンバーにそんなに優しくない」と浜田さんからチクリと言われた“ムチ”な対応の正人さんは「レースなので一番弱い人にレベルを落としたらレースにならない」と返答。

そんな過酷なレースに挑む正人さんが「人生が終わった」と思った瞬間は2016年のチリ・パタゴニアでのレース。順調にレースを進め、トップを快走していた中、マウンテンバイクで事件は起きる。

正人さんがコース上にあった石にぶつかり転倒。顔面から地面にたたきつけられた。

レースどころではなく、救助を要請し、病院で検査。正人さんのけがにより、リタイアかと思われたが、レースを再開。準優勝という好成績でゴールした。

この時のことを正人さんは「鼻の骨が折れて、頸椎(けいつい)捻挫。右手がしびれてほとんど動かない。けがをしてやめるのは誰でもできる。誰でもできることをやるために世界で戦っているわけではない。不可能を可能に変えていかないとやる意味がない」と持論を語る。

正人さんにとって、リタイアのラインは、骨折は骨折でも「骨が外に出るような開放骨折は命の危険がある」とのこと。

一方、陽希さんの「人生が終わった」と思った瞬間は、アメリカで行われた世界選手権でのこと。高原の至る所で雷雲が発生し、「他のチームが早々にしゃがんで退避行動を取っている中で今がチャンスだって…」と正人さんが、雷が落ちている中を進んでいったことが恐怖だったそう。

このエピソードに正人さんは「雷(が落ちるの)は運。留まっていても落ちる可能性があるから行くしかない」と決断を振り返った。

商品は「石」エンデューロプロライダー・石戸谷蓮

自然むき出しの整地されていない断崖絶壁を駆け上がり、岩がゴロゴロの荒れたレースを舞台に制限時間内に完走するバイクレース「ハードエンデューロ」。

その競技で世界を目指す日本の第一人者が、エンデューロプロライダーの石戸谷蓮さん。

彼が挑戦しているのは世界一過酷なバイクレース「エルズベルグロデオ」。オーストラリアの巨大鉱山「エルズベルグ」で、予選を勝ち抜いた500名のレーサーが挑む。そのレースは命がけで、完走率はたったの1%と言われている。

石戸谷さんの現在の夢は、このレースで優勝ではなく、完走すること。

途中でバイクが落ちてきたり、ひかれたりするのは「しょっちゅう」とのことで、今までしたけがは「足、指、肩の骨を折ったり…8、9カ所くらい。元気に動けているので軽傷です」と笑う。

そんな過酷なレースの優勝賞品は「石」。「マジで?」と浜田さんも驚く。「鉄鉱石を採っている鉱山で、そこの石」と石戸谷さんは話す。レース出場のための費用は100万円ほどだが、賞金も出ないようで、何のために戦っているのか理解できないような顔をする一同に「完走するのが目標で、あれは副賞です」と語った。

「求めていた世界」へ。エクスプローラーダイバー・加藤大典

危険を顧みず水中を探検するエクスプローラーダイバー・加藤大典さん。

わざわざ危険な場所に行く理由を「地上ではなかなか見られない未知の世界、絶景に出会える感動が大きい」のだと話す。そんな加藤さんは、先の洞窟探検家・吉田さんの水中洞窟における師匠でもある。

水中洞窟の探検は、すぐに浮上できないため、常に死のリスクが伴う。加藤さんいわく、少しでも生存率を上げるためには、さまざまな苦労があるという。

洞窟の内部がどうなっているかわからないため、常に大量の酸素ボンベを用意したり、リスクに備えて進むため1日200メートルが限界だそう。

元々は普通に楽しみながら潜っていたと言うが、あるとき未知の世界を知ってしまった。そのきっかけを加藤さんは「マレーシアに遊びで潜りに行ったら、洞窟があって、そこで潜っているケイブダイバーたちを見て、こんな世界があるんだと感心を持ちました。求めていた世界でした」と語った。

商品は「木」スカイランニング・上田絢加

標高2000メートル以上の険しい山道をハイスピードで駆け抜けるエクストリームスポーツ、スカイランニング。

そのスカイランニングで日本のトップランナーが、上田絢加さん。元々趣味でトレイルランニングを走っていたが、2018年にスカイランニングに興味を持ち、初めて走ったアジア大会で3位に。以来、数々のレースに参加し好記録を連発。2020年には日本選手権を優勝するなど、輝かしい実績を誇っている。

そんな彼女は、コロナ禍で山などの現地でトレーニングが難しくなった際、「家の中で富士山に登ってみよう」と思い至った。お風呂にある30センチほどのイスで踏み台昇降を延々と繰り返し、“富士山を登頂”したという。

標高2000メートル、距離100キロを走破するスカイランニングだが、その優勝賞品は「木」。木のトロフィーがもらえるとのことで、上田さんは「めちゃくちゃうれしいです。かわいいので自宅でコレクションしています。賞金はないです」と明かした。

命をかけて危険な場所に挑み続けるアスリートたち。そこで見えるさまざまな絶景が彼らをその競技のとりこにしているのかもしれない。

(『ジャンクSPORTS』毎週日曜日夜7:00~8:00放送)