瀬戸内の島々を舞台に開かれるアートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」。8月5日に夏会期が始まった。中でも注目は香川県の小豆島。新作ぞろいの島を取材した。

竹を4000本以上使った球体 自然との一体感

山の中に現れた巨大なアート作品。島の自然と芸術が織りなす暑い夏が始まった。「瀬戸内国際芸術祭」は、瀬戸内の12の島々と2つの港を舞台に、2010年から3年に1度開かれている。

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5回目を迎えた今回は、33の国と地域から参加したアーティストによる214の作品と19のイベントが公開されている。そして、夏会期の会場となる7つの島のうち、小豆島には多くの新作がそろっている。

小豆島は岡山市の新岡山港、高松市の高松港からいずれもフェリーで約1時間。まず向かったのは、農林水産省の棚田遺産に選ばれている「中山千枚田」。

島の山間にある棚田のふもとに現れた球体が、夏会期から公開の新作「ゼロ」だ。

中塚美緒アナウンサー:
竹でできた小道を歩き、球体の中へ入ることができます。球体の入口は少し低くなっていて、茶室をイメージしているそうです。くぐって入ると…広い!不思議な空間。木漏れのような光が心地良いです

入口は少し低くなっていて、茶室をイメージ
入口は少し低くなっていて、茶室をイメージ

直径約15メートルで、地元の竹を4000本以上も使って作られている。

作者である台湾のアーティスト、ワン・ウェンチーさん。瀬戸芸に初回から参加し、これまで毎回、小豆島にちなんだテーマで制作してきた。

過去2年はコロナ禍で海外での創作活動は困難を極めたといい、今回の作品には「人類の全てがゼロから出発することになった」という思いを込めた。

ワン・ウェンチーさん:
空間に入ってリラックスして、自然と一体となることを体感して

中塚美緒アナウンサー:
とっても気持ちが良い!幸せなひと時を過ごせそう

開放的な空間でリラックス
開放的な空間でリラックス

あの名産がアート作品に「島の魅力を再確認してほしい」

続いては島の南東部、特産のしょうゆの蔵が並ぶエリアに2022年オープンした「醤の郷現代美術館」へ。かつて、しょうゆメーカーの組合の事務所として使われていた洋館をリノベーションし、若手作家が部屋いっぱいに描いた絵など、現代アートを中心に110点を展示している。

しょうゆメーカーの組合の事務所として使われていた洋館をリノベーション
しょうゆメーカーの組合の事務所として使われていた洋館をリノベーション

中でもひと際目立つのが、ロープでつるされたオリーブの苗木だ。作品名は「見えない軸ー距離と角度/オリーブ」。

醤の郷現代美術館・石井純館長:
植松奎二さんのコンセプトは、見えないものを形にする。おそらく、このようにぶら下がって 引力や重力を表現しているのでは

中塚美緒アナウンサー:
こういった形で小豆島の名産品、オリーブがアートとして組み込まれる。小豆島らしい、ここでこそのアートですね

大きな円とぶら下がった石の作品も植松奎二さんのもので、その隣には妻でアーティストの渡辺信子さんの作品も展示されている。

醤の郷現代美術館・石井純館長:
木の枠に布をはかせている。すごく美しいカーブが出る作品

中塚美緒アナウンサー:
ご夫婦でこのスペースを作られたと聞いて、支え合っているような、2つで1つという感じがして。夫婦の合作らしいアートと感じた

美術館には現代アートだけでなく、小豆島の風景画も約40点展示されている。そこには、美術館を設立した石井さんの未来への願いが込められていた。

醤の郷現代美術館・石井純館長:
アートに触れた子供たちが島の素晴らしさを再確認して、将来、島の抱える課題を解決しようと 思ってくれるような大人に育ってくれたらうれしい

醤の郷現代美術館・石井純館長
醤の郷現代美術館・石井純館長

”命の象徴”を卵で表現 すき間から芽が出て

中塚美緒アナウンサー:
瀬戸内海、美しいですね…。この海と共に鑑賞できるアートがこちら。卵でしょうか?

島の北西部、海と夕日の絶景スポットとして知られる屋形崎には、三宅之功さんの新作「はじまりの刻」が展示されている。高さ3.7メートル、幅2.4メートルの卵は命の象徴を表現していて、表面は粘土で作った焼き物で覆われている。

三宅之功さん作「はじまりの刻」
三宅之功さん作「はじまりの刻」

中塚美緒アナウンサー:
よく見ると、ひびの部分に小さい草がにょきっと

アーティスト・三宅之功さん:
風にのって飛んで来た種が芽吹いて、日照りが続いて枯れてと”命のサイクル”が繰り返される。我々の人生と同じで、いつか枯れて次の世代へと受け継がれていく

中塚美緒アナウンサー:
この場所を選ばれた理由は?

アーティスト・三宅之功さん:
この丘に上がった途端、ああここだ!と一目ぼれみたいな。今の時期だと6時半から7時くらいの夕暮れに来ると、美しい景色と共に楽しめる

コロナ禍での開催となった今回の瀬戸内国際芸術祭。人や命をテーマとした作品の数々は、自分自身を見つめ直すきっかけになるかもしれない。

夏会期は9月4日までで、9月29日からは秋会期を迎える。

(岡山放送)

岡山放送
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