香川と岡山の島々を舞台にした現代アートの祭典、瀬戸内国際芸術祭の夏会期が始まりました。夏会期は島だけでなく、新たに加わった港町や門前町が注目されています。

(佐藤理子アナウンサー)
「夏会期初登場のエリアでは、地域の伝統や文化から着想を得た作品に見て触れて五感で楽しむことができます。それでは行ってみましょう」

2010年から3年に1度開かれている瀬戸内国際芸術祭、瀬戸芸。今回も春、夏、秋の3会期制で、夏会期は8月1日から8月末までです。香川と岡山の7つの島など11の会場があり、香川の東部、東かがわ市の引田エリアとさぬき市の志度・津田エリアが初参加となります。

まずは四国の海上交通の拠点として栄えた引田エリア。ハマチ養殖の発祥の地として知られ、漁業も盛んな港町です。

まちを象徴するのが、漁師の大漁旗をモチーフにした作品。旗に描かれた絵は、コンピューター画像のようなタッチです。大漁を知らせるアナログな旗にデジタルな要素を入れることで、歴史の変化、さらには、まちの変化を表現しています。

(アーティスト 沼田侑香さん)
「近くで見ると分かるが、1つずつペットボトルのキャップを粉砕してできていて、着色しているわけではなく、そのものの色をそのまま使っている」

プラスチックごみの海洋汚染問題にも目を向けてほしいとしています。

(佐藤理子アナウンサー)
「東かがわ市は日本一の生産量を誇る手袋の産地なんです。こちらには私の身長をはるかに超える全長約3mの手袋の作品があります。近くでよく見てみますと1つ1つ柄が違う。実はこの作品、古着で作られていまして地元の人たちも古着を割いて一緒に編んだということです。360度どこから見ても迫力があります」

明治時代から130年以上の歴史を持つ市内の手袋産業。産業の育ての親とされる棚次辰吉のエピソードをもとにロシア人の女性童話作家が、「てぶくろくん」が相棒の手袋を探す旅に出る冒険物語をつくりました。そして、その世界観を夫の美術家が立体作品として表現しました。

(童話作家 マリーナ・モスクヴィナさん)
「大きな手袋を作るにあたって、地元のたくさんの人に協力してもらった。この手袋は人々の結びつきの象徴。空間で感じてほしいことは この世界の平和と幸せと喜び」

このエリアでは合わせて6つの作品が展示されています。

そして高松方面に車で30分。さぬき市の志度・津田エリアです。ゆらゆら動く徳利、レンズを通して見ると・・・。

(訪れた人は…)
「ちょっとびっくりした。どうなっているのかなと思って」

四国霊場の札所の門前町として古くから栄えた志度。長く使われた道具に魂が宿って生まれる妖怪、付喪神をモチーフにした作品がお目見えしました。この付喪神のデザイン、人工知能AIを使って生成されています。

(アーティスト ニール・メンドーザさん)
「ポイントの一つは、私たちの文化がいかに使い捨てになってしまったかを考えること。ある意味「付喪神(つくもがみ)」の物語ともつながっている 。あの子たちは捨てられたことに怒っている。今の私たちは何でも簡単に捨ててしまう。そういうことを考える時間でもあり、一方で、ただ美しい空間でくつろいでアートを味わう時間でもある」

志度は静電気を発生させる装置「エレキテル」で知られる江戸時代の発明家、平賀源内の出身地でもあります。平賀源内記念館全体を発電所に見立て、目に見えず、実体がつかめない電気の存在を浮かび上がらせました。

(佐藤理子アナウンサー)
「力強く立派な松の木に1万個以上のメガネレンズが垂れ下がっています。太陽の光に反射してキラキラと輝いていてまるで松の木がアクセサリーをまとったような神秘的な光景が広がっています」

白砂青松で知られる津田の松原がある津田。眼鏡のレンズを使って「森の精霊」を表現したということです。

(訪れた人は…)
「夏の暑さを和らげてくれるような感じに見えた。感動した」
「普段から海もきれいでいい所だが、芸術もあって、改めて地元がきれいだと感じた」

島のイメージが強い瀬戸芸ですが、6回目の今回は瀬戸内の港町や門前町へと広がりを見せています。島だけでなく長い時間、育まれた瀬戸内の歴史や文化にどっぷりつかってみてはいかがでしょうか。

岡山放送
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