約半世紀にわたり、行政と住民の対立が続く長崎・川棚町の石木ダム建設計画。2022年3月に新たに就任した大石知事は、反対住民との「対話路線」を強調する一方、工事中断の求めには応じていない。石木ダムの「現在地」を取材した。

今もなお対立続く「石木ダム」

2022年7月、大石知事が3カ月ぶりに石木ダム建設予定地を訪れた。

大石賢吾知事:
時間があいてしまったことに、本当に申し訳なく思っています

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3回目の訪問で、ダム建設に反対する住民と「対話」を重ねたいところだが、県の現場責任者の対応をめぐり、きつい「注文」を受けた。

石木ダム建設絶対反対同盟・岩下和雄さん:
知事は会いたいといっているのに、そういうことをしようとする現場がいることがおかしい

大石賢吾知事:
至らなかったところもあり、しっかり連携をとりたい

石木ダムは、川棚町の山間部「川原地区」とその周辺が建設予定地だ。川棚川の洪水対策や佐世保市の水源確保などを目的に、1975年に事業として採択された。

しかし地元住民の中には強い反発もある。住民側が拠点とした「団結小屋」やその周辺では、事業を進めたい県側と住民側が衝突を繰り返してきた。

県は土地収用法に基づき、住民の土地などの所有権を県側に強制的に移し、2021年ダム本体の工事を始めた。13世帯の住民は、今もダムの必要性に疑問を持ち、話し合いを求めている。

両親と抗議活動続ける女性イラストレーター

「団結小屋」で制作活動を続ける人がいる。川原地区で生まれ育った、イラストレーターの石丸穂澄さんだ。両親とともに、ダム建設反対の抗議活動を続けている。

石丸穂澄さん:
誰もいる人がいなくなったら、ボロボロになって(行政)代執行が迫ってくる。現場に止めに入れる人はそっちに行くし…。私みたいな人は絵を描くし、何をやったら一番楽しく過ごして、なおかつダムのことをうまく発信できるかっていうのを最近よく考えてて

生まれ育った「川原(こおばる)」の風景や日常を独特の色使いで表現。小屋を小さなアトリエとして活用しているほか、飲食店などで作品展を開いて「ふるさとのいま」を伝えている。

見学者:
遊びに行ったことありますけど、暮らしてる人がどんな暮らしをしているのかなど、すごくわかる。楽しいし、笑えますよね、ほっこりします。とってもほっこりして、暮らす人に会いたくなる

初めての作品集の評判は上々だが、心配なこともある。2人3脚でダムの勉強をしたり、抗議活動を続けてきた母・キム子さん(72歳)が体調を崩した。
早起きや食事の準備など、これまでと違う生活リズムに苦労しながらも、今はカレンダー作りに取り組んでいる。

石丸穂澄さん:
(県の動きには)あまり関心がないんですよ。彼らは決められた通りにしかやらないだろうし、私1人がどうこうしたところで大して影響力はないと思ってて、あまり持ち場を離れず活動を続けていく方が、まだ事業を前に進めさせないで済むし、私たちも長くやれる

調査開始から半世紀。新しい県のリーダーが、今後どのように石木ダム事業と向き合うかで、多くの人の生活が変わってくる。

(テレビ長崎)

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