「子供たちへの性教育」は大事なことだが、親子でもなかなか話し合いづらい話題だ。
松山市のなかしまちはるさん愛媛県警の元警察官で、刑事として性犯罪などを担当してきた。
傷ついた被害者と、じかに向き合ってきた彼女が今伝えたいこと。それが、子供たちを守るための「性教育」の大切さだ。

「性教育のインストラクター」は元警察官

なかしまちはるさん:
「性犯罪」って聞くと、全く知らない人からなのかなって思われがちなんですけど、約8割は顔見知りだったり、知人からの被害っていうふうに性犯罪は言われてます

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松山市のなかしまちはるさん。4人の子供の母親だ。
なかしまさんは「性教育のインストラクター」として、親たちに家庭での性教育の大切さを伝える活動を行っている。

なかしまさんが活動を始めたきっかけは…

なかしまちはるさん:
DVやストーカーの問題に興味がありまして、警察官になって被害者を守っていきたいと思ったのがきっかけです

警察官時代のなかしまちはるさん
警察官時代のなかしまちはるさん

実は、なかしまさんは愛媛県警の元警察官だ。育児に専念するため、2022年3月に退職したが、在任中は主に強行犯係の刑事として、性犯罪などを担当してきた。
そんな警察官時代に“ある出来事”が起きた。

なかしまちはるさん:
私が性犯罪担当の刑事として勤務している時に、ある女の子が性犯罪の被害に遭いました。その子は、自分の体を触られることがいけないこと、犯罪になるってことを知らなかったんですね。何気なく親にそのことを話して、親がびっくりして届け出をしてきた

その時、なかしまさんは、女の子が再び被害に遭わないようにと直接言葉をかけた。

なかしまちはるさん:
「あなたの体の大切なところは、こことこことここだから、触られたりしたら駄目なんだよ。もし、そういうことがあったら大人に言うんだよ」って。その時は女の子も「うんうん」って聞いてくれてたので、伝わったっていうふうに思ってたんですけど

しかし数年後、その女の子は、また同じような性被害に遭ってしまった。

なかしまちはるさん:
あの頃、私が伝えた性教育は、その子にとっては何も響いてなかったし、私のような赤の他人が一度だけ伝えた性教育じゃ、何にもなってなかったんだなっていう

警察官として起きた性犯罪は解決できても、被害を未然に防ぐことはできない。

そんなジレンマを抱えたなかしまさんが見つけた答えが、「性教育インストラクター」だった。

性被害を防ぐため…「3歳からの性教育」訴え

オンラインでの性教育講座。受講したのは、4歳と7歳の女の子の母親だ。

なかしまちはるさん:
体の変化については、お母さんに聞けばいいっていう安心感があったらね、そこら辺の話がしてもらえたりっていうことも出てくると思います

講座では膣、精通、性行為といった性に関する言葉が何度も出てくる。

橋本利恵アナウンサー:
いろんな言葉が出てくる中で、戸惑いや抵抗感はなかったですか?

受講した母親:
正直、始めはやっぱり抵抗感があって、事前にいただいた資料をチラチラと見てたんですが、ドキドキはしたんですね。子供たちの成長を「こんなふうに変わっていくのかな」っていうのを楽しみに待てるようになりました。それは多分、いろんな知識を自分の中に持つことで臆病にならないで、ちょっとドンと構えられるような感じになってきたなと思っています

なかしまさんが必要と考えるのは、幼児期の「3歳」からの性教育だ。

なかしまちはるさん:
何で幼児期から必要かっていうと、幼稚園児とか保育園児の年代でも性犯罪、性被害っていうのがあるんですね

なかしまちはるさん:
性被害っていうのが分からなくて、年齢が上がって、ある程度知識がついた時に「あっ、あれは性被害だったんだ」っていって、またそこで傷つく。それを見ていると、幼児期からの性教育はやっぱり大切だなっていうふうにも思いますし

おうちで性教育を…「親の愛情がそこにある」

しかし、今の日本の学校教育では性交について教えるような積極的な性教育は行われない。
国が定めた学習指導要領で、「受精に至る過程や妊娠の経過については扱わない」という「はどめ規定」を設けているためだ。

そこでなかしまさんは、自ら「おうち性教育」を実践する道を選んだ。

なかしまちはるさん:
わが家では、子供たちも性教育の本を読めるように、たくさん性教育、性に関する絵本を普通の他の絵本と一緒に置いています

なかしまちはるさん:
避妊について、学校で教えるのが最も遅い国は?

長男・駿斗くん:
日本

なかしまちはるさん:
おぉ(正解)。この中で、どこが早いと思う?

長男・駿斗くん:
オランダ

なかしまちはるさん:
そうそうそう。オランダでは小学校だって。韓国は中学校

長男で小学校4年生の駿斗くんには、小学3年生の時から絵本を使って精子や卵子について教え、生まれてきてくれたことへの感謝も伝えてきた。

長男・駿斗くん:
学校ではあんまり詳しく教えてくれないけど、ママだったら詳しく具体的に説明してくれる

なかしまちはるさん:
うれしいな、何か

長男・駿斗くん:
早く学校で習わせてほしい

なかしまちはるさん:
なんで?

長男・駿斗くん:
自分の性器の大切さを、みんな分かっていないから

なかしまちはるさん:
やっぱり子供たちのことが大切だから。大切だからこそ、性っていう、避けたいけど、これは大事だ、子供たちが自分の身を自分で守るためには、大事な性教育を伝えていこうっていう親の愛情がそこにあるわけで

なかしまちはるさん:
今の子供たちって、もう小さいころから、それこそ、ひとり1タブレットの時代なので、親も一緒に正しい知識を得て、子供と一緒にアップデートしていくっていうことが大切になってくるのかなって思ってます

危うい情報を「遮断」するのではなく、正しい知識を一緒に学ぶ。
子供を守る「性教育」、皆さんはどう考えるだろうか?

(テレビ愛媛)

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