コロナ禍の中で、女性の生理用品をめぐって「生理の貧困」という言葉が注目されている。愛媛県内でも自治体などが支援に乗り出す一方で、新しい動きも始まっている。

コロナ禍で注目を集めた「生理の貧困」
コロナ禍で注目を集めた「生理の貧困」
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高校の保健室で生徒に配布 悩み相談も

生理の貧困。コロナ禍で生活に不安を抱える女性に対して、自治体などが生理用品を支援する動きが、全国各地で広がっている。

松山北高校の保健室。

松山北高校・内田恵美 養護教諭:
こちらに10箱あります。約7000枚くらいになると思います

保健室にあったのは…
保健室にあったのは…

段ボール箱に入っていたのは生理用のナプキン。企業からの寄付を受けて、6月から県内の小中学校や高校でも無償で配布されている。

松山北高校では全ての女子生徒に配布し、残ったものは保健室に保管して、必要に応じて個別に渡している。

松山北高校・内田恵美 養護教諭:
生徒さんが取りにきた際には、ついたての向こうでプライバシーを守って渡したいと思います

松山北高校の取り組み
松山北高校の取り組み

松山北高・友澤義弘 校長:
まずは全員に配布させていただいて。残りを本当に困っている子どもたちが、メッセージカードなどを参考にしながら、心の悩みであるとか、女子生徒の体のいろんな相談について、気軽に訪ねて来てもらえるような雰囲気も出して、今回の取り組みを効果があるものにしたい

生理は体の状態を教えてくれる大事なシグナル

松山市でベビーマッサージや保育など、子育て世代の女性のサポート事業を行っている川﨑暁子さんさん。

この日は、生理や産後の体のケアなどについて、子育て中の母親の相談に乗っていた。

子育てママの生理や産後をサポート
子育てママの生理や産後をサポート

子育て中の女性:
おりものが出るとすごく痛い、卵巣が痛い

川﨑暁子さん:
そのおりものの形状とかってありますか?

子育て中の女性:
透明だと痛いことが多いです。病院にも行こうかなと思うんですけど、時間に追われて…自分のことやけん、ええかなと思っちゃう部分はある。子どもや仕事を優先して…

川﨑暁子さん:
出産されてるから経験あると思うけど、ホルモンバランスが変わると(体も)すごく変わるやないですか。それで更年期とか、いろんな不調が出てくるよっていうのが50歳くらい。結局、自分の体が思い通りにならなかったら、多分すごいしんどいと思うんですよ

月経・妊娠・出産・育児・閉経と、年齢や状況によって体と心が大きく変化する女性にとって、生理は自分の体の状態を教えてくれる大事なシグナルだという。

月経・妊娠・出産・育児・閉経により女性の体と心には変化がある
月経・妊娠・出産・育児・閉経により女性の体と心には変化がある

川﨑暁子さん:
「経血を見る」ということが、すごく大切だなと思っています。血液の状態が黒いのか、赤いのか、粘り気があるのかないのか。(生理は)そういう体の状態がやっぱり見えるので、自分の体を知るっていう点では、すごくいいのかなと思っていますね

説明はなく…小学校でのナプキン配布にも違和感

15年以上、生理と向き合ってきた川崎さん。「生理の貧困」という言葉に大きな違和感を抱いている。

川﨑暁子さん:
布ナプキンとかフェミニンケアを通して、「自分の体を大切にしよう」とか「生理ってすごく大切なものだよね」っていうことを伝えてきたので。「生理」っていう言葉と「貧困」っていう言葉が横に並んでいるのが、なんとなく違和感があったんですよね、最初に

座談会に参加していた小学1年生の娘がいる鉾岩さんは、また別の違和感を抱いていた。

小学1年生の娘がいる鉾岩ちはるさん:
小学校1年生の娘が持って帰ってきたんですよ。まさしく「生理用ナプキンを配布します」という手紙を。まだ対象年齢ではないじゃないですか。ただ配られただけだったらしいんですね。それってどうなんだろうと思ったのと、配るんだったら、もうちょっと生理について先生たちも触れられるのであれば、触れて配布してもらいたかったかな

コロナ禍で取りざたされる「生理の貧困」という言葉や、その支援のあり方に違和感を感じるという女性たち。

川﨑暁子さん:
例えば「ナプキンを買いたくても買えない」ということを言えるかどうか、「助けて」って言える社会なのかどうかも大事だし。でも、生理というものを「隠さないといけない」というか、恥ずかしいものだから、あまり人に大っぴらに言うものではないですよっていう社会であったりとか、そういうふうなところも課題の1つだと思います。

川﨑暁子さん:
もっと社会全体で、女の子の生理だけじゃないですよね、男の子の性の成長もですけど、みんなで温かくサポートできる運動ができればなと思います

企業の男性社長にも働きかけ 従業員の健康を考える

「生理」や「性」の大切さをもっと語り合える社会に。川崎さんは愛媛県内の企業にアプローチを始めた。

川﨑暁子さん:
いろんな女性の問題を解決していくようなプロジェクトを立ち上げようと思っていて、男性の社長さんにお話をするのは実は初めてなので、どんなふうに感じられるかというのも含めて、ご意見を伺いたいなと思っています

川崎さんは企業や自治体も巻き込んで、女性の健康を考えるプロジェクトを立ち上げようとしている。

この日、川崎さんが訪れたのは松山市にある水産加工会社。従業員の7割は女性だ。

川﨑暁子さん:
私も経営者で経験があるんですけど、やっぱり生理とかでしんどいとか、生理に限らず女性特有の疾患でしんどいなという時があります

モンド・中道昇 社長:
あるはずなんです。ただ、うちの会社においてはあんまり生理休暇って…言われたら当然、すぐ休んでっていう心構えは持ってますけど、その形の申告をされたことは、あまり記憶にないです

川﨑暁子さん:
もっと男性の方が多い職場だったりすると、もっともっと言えないなと思うので。女性たちの体のことであったりとか、生理痛をなるべく軽減できるようなサポートをするとか、そういったことに会社が取り組むことで、会社としても生産性を上げることができたら

男性の社長にもアプローチ
男性の社長にもアプローチ

モンド・中道昇 社長:
これを会社の中に落とし込むっていうと大きな課題で。若いパートさんなんかは、ちょっとやっぱり「まだ恥ずかしい」とか「そんなこと取り組まれても…」とか。男性社員なんかは「そんなことされると逆にちょっと…」みたいなことがある

社長が口にしたのは、理想と現実のギャップ。

ただその一方で、経営者として女性の「生理」をはじめ、従業員の「健康」が会社の存続に関わってくると実感している。

モンド・中道昇 社長:
人手不足っていう状況もそうだし、今いる人たちに頑張ってもらいたい、一緒に頑張りたい。当然、そこには健康という面がクローズアップされてこなきゃいけない。若い人をこれから迎えるためにも、そういうことを考えている企業だっていう安心感を持たせる準備をしておかないと

一緒に頑張りたいから、準備を
一緒に頑張りたいから、準備を

日本の全雇用者の4割が女性で、腹痛や腰痛、吐き気、眠気、めまいなど、月経随伴症状による労働損失は年間で4911億円と試算されている(経産省 2019年3月)。

「生理の貧困」から見えてきた性や生理への「理解」の貧困。その課題解決を目指す一歩が、愛媛で始まっている。

(テレビ愛媛)

テレビ愛媛
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